お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第20回は、新宿にあるスイーツのおいしいカフェ特集!

 

前編では、りんご飴、おだんご、いちごのショートケーキが話題のカフェ&喫茶店を紹介します。

【猫井登のスイーツ探訪20・前編】〜東京・新宿でスイーツのおいしいカフェ巡り〜

 

猫井先生

今回は、新宿にある「スイーツのおいしいカフェ」を紹介していきますが、せっかくなので、ちょっと個性的なお店を紹介できればと思っています。

 

食べログマガジン編集部

新宿のちょっと個性的なカフェ……気になります。

 

猫井先生

まずは新宿三丁目駅近くにある「ポムダムールトーキョー」です。

【1軒め】「ポムダムールトーキョー」

 

食べログマガジン編集部

ん? タトゥー屋さんですか??

 

猫井先生

お店は2階にあるんですよ。階段脇にある「ポ」という看板が目印です(笑)。

 

食べログマガジン編集部

お店の中に入ると一転、おしゃれなカフェの雰囲気が漂っていますね。

 

猫井先生

外観の印象とはだいぶ違いますよね。ドアを開けるとほぼ正面にショーケースがあり、左右はカフェスペースになっています。こちらは2014年にオープンした、りんご飴専門店です。「ポムダムール」は直訳すると「愛のりんご」ですが、フランスでは「りんご飴」という意味ですね。

 

食べログマガジン編集部

りんご飴専門店って最近耳にするようになってきましたが、まだ行ったことがありませんでした。フレーバーって何種類かあるんですか?

 

猫井先生

フレーバーとしては、「プレーン」のほか「シナモン」「ショコラ」が定番ですが、期間限定で「黒豆きなこ味」「白雪みるく」「アールグレイ味」などもありますね。ちなみに2020年3月末時点では「うめしそ味」が楽しめるそうです。

 

食べログマガジン編集部

うめしそ味、気になりますね! 気になると言えば、入り口に「りんご飴とシーシャの店」と書いてあったのですが、シーシャって水たばこのことですよね? りんご飴と関係があるのでしょうか?

 

猫井先生

オーナーの池田さんは元々シーシャ店で働かれていて、シーシャを通して人と人が繋がっていくシーシャ文化に魅了され、当初はシーシャ店を開こうとお考えになっていたようです。しかし次々にシーシャ店がオープンし、どうしようかと悩まれているときに「りんご飴」に出会ったそうです。そして、「りんご飴っておいしいのに専門店というものがない。どうせやるならまだ誰もやっていないお店を開きたい」ということで、日本初のりんご飴専門店が誕生したわけです。ただ、根底にあるのは人と人の繋がりを作りたいという思いのようで、それでカフェを併設されているのだと思いますよ。ちなみ現在、シーシャはお休み中とのことです。

 

食べログマガジン編集部

なるほど。そんなオーナーの深い思いを噛みしめつつ、りんご飴をいただきたいと思います。

eri_chosu09
「プレーン」のりんご飴   出典:eri_chosu09さん
 

猫井先生

りんご飴=お祭りで食べるものというイメージが強いと思いますが、食べてみるとビックリされると思いますよ。

 

食べログマガジン編集部

本当だ! 飴の部分がすごく薄くて、程よい甘さですね。そしてりんごのジューシーさがすごいです! こんなに果汁が溢れ出てくるりんご飴、初めて食べました。

 

猫井先生

こちらでは、甘み、酸味、歯応えの三拍子が揃った「ふじ」系のりんごをメインに使用され、高純度の砂糖から作る飴を表面にさっとコーティングされていますね。簡単そうに聞こえますが、飴はすぐに固まるので、素早くしかも均一にコーティングするには職人技が要求されるんですよ。

 

 

食べログマガジン編集部

りんご飴の進化に感動しました。さて、次はどちらへ?

 

猫井先生

次は、新宿三丁目の交差点方面に向かうと見えてくるおだんご屋さんです。

【2軒め】「追分だんご本舗 新宿本店」

 

猫井先生

追分だんご本舗の創業は、1945年(昭和20年)ですが、「追分だんご」の由来は、1455年まで遡るといわれていますね。太田道灌が江戸城を構築中、武蔵品川の館から武蔵野に鷹狩に出かけた帰途、現在の杉並区の高井戸付近で日が暮れます。ちょうど仲秋の名月の時期だったので家臣とともに、にわか歌宴を開きました。その際、土着の名族が「だんご」を献上、道灌はその滋味豊かな味に感動し、その後も折に触れ、この「だんご」を所望したと伝えられています。

 

食べログマガジン編集部

すごく歴史あるお店なんですね。

 

猫井先生

そうなんです。そして、その「だんご」が高井戸で「道灌団子」と呼ばれるようになり、高井戸宿に柳茶屋という店が開かれ人気を博します。1697年(元禄10年)、柳茶屋は新宿が開けてきたため、甲州街道と青梅街道が分岐する新宿追分に移転。だんごも「追分だんご」と呼ばれるようになります。当地で印刷業を営んでいた現在の追分だんご本舗の先々代も「追分だんご」の提供を始め、現在に至っています。

 

食べログマガジン編集部

店頭には色々な種類のおだんごが並んでいますね。

 

猫井先生

売り場の奥にある喫茶では、おだんごのほかに「ぜんざい」、夏場は「かき氷」も楽しむことができますよ!

 

食べログマガジン編集部

新宿での買い物途中に和菓子で休憩できるとうれしいですね。先生のおすすめメニューはありますか?

写真左から「いちごあんだんご」「桜あんだんご」「抹茶あん」
 

猫井先生

やはり、まずはおだんごでしょう。この季節ならではの「いちごあんだんご」「桜あんだんご」や、常時メニューの「抹茶あん」をおすすめしたいですね。

 

食べログマガジン編集部

抹茶の緑が濃くて綺麗ですねー!

 

猫井先生

抹茶の味わいが濃厚で、甘みと苦みのバランスがいいですね。いちごあん、桜あんはどちらもあっさりとした味わいで、香りも存分に味わえるのがポイントです。

 

【3軒め】「自家焙煎珈琲 凡」

 

猫井先生

次は打って変わって、コーヒーのおいしい喫茶店です。実は、“幻のケーキ”が食べられるんですよ。

 

食べログマガジン編集部

新宿アルタの近くにこんなレトロな雰囲気の喫茶店があるなんて! しかも地下だから、知らないと気づかないですね。女性一人だとちょっと躊躇しちゃうかも……。

 

 

猫井先生

それがですね……お店に入ると分かりますが、お客さんの比率は圧倒的に女性の方が多いんですよ!

 

食べログマガジン編集部

むむ! それは、先ほど仰っていたケーキが関係しているんですか?

 

猫井先生

その通りです! その名も「大人のショートケーキ」です。こちらで、作られるショートケーキは2ホールのみ。それを八等分するので、全部で16ピースのみの販売ですね。しかも、出来の良いいちごが手に入らない場合、1ホールだけの日や作らない日もあると聞きますから、食べられたらラッキーというわけです!

「大人のショートケーキ」 出典:マッシュグルメさん
 

食べログマガジン編集部

これは……大きい! 立派ですね!

 

猫井先生

一般的なショートケーキの3倍くらいはありますかね。こちらの生クリームは、動物性100%の本物の生クリーム。今日のいちごは、九州の「さがほのか」ですね。これがゴロゴロ、1ピースにほぼ丸ごと5〜6個は入っていますね。上下をスポンジではさむ形で上から苺ジャムが掛けられています。

 

食べログマガジン編集部

生クリームもいちごジャムも甘さ控えめで、大きさのわりにあっさりとしていますね! そして喫茶店のコーヒーはやはりおいしいですね。

 

猫井先生

初めての方は、お店のこだわりが詰まった「ぶれんど」を試されてはいかがでしょうか。「あいすこーひー」も24時間かけて抽出された水出しコーヒーです。お値段は1,000円以上と少しお高めですが、ポットで2杯分ほどたっぷりとサーブされるので、しっかりと堪能できますね。

 

食べログマガジン編集部

棚に飾られているカップの数もすごいですね。

 

猫井先生

ざっと200種類以上あるのではないでしょうか。有田焼あり、マイセンありと、和も洋も揃っていますね。カップの由来を書いたカードも添えていただけるので、陶器の勉強にもなりますよ! また、ショートケーキ以外にも、「すいーと」と「びたー」の2種類ある「がとーしょこら」や、「黒糖シフォンケーキ」もフワッフワでしっとりしていると人気があるので要チェックです。

 

続きは後編にて!

次回お送りする後編では、JR新宿駅東口〜西口方面のお店を紹介します。お楽しみに!

 

写真・文:猫井登