〈サク呑み酒場〉

今夜どう? 軽~く、一杯。もう一杯。
イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!

店名がヒント。煮込み料理の店

このお店の特徴を説明する前に店名を見てもらいたい。「Niru」はそのまま「ニル」と読み、漢字を当てはめると「煮る」。つまり煮込み料理を得意とする店なのだ。ロゴにもそれは表れていて、「u」の字をよ~く見ると、鍋に見立ててある。字の下にあたる鍋底には、とろ火の炎が描かれているなど、なんとも遊び心がある店だ。

煮込み料理と自然派ワインの店「Niru」
よく見ると「u」が鍋になっているロゴ。

この遊び心は料理にも共通している。メニューは毎日更新。旬の食材やオリエンタル系のスパイスなどを使ったオリジナリティある料理が楽しめるのだ。

例えば、定番のフライドポテトも、アジア的な調味料である魚醤とバターで味をつけている。タイの魚醤であるナンプラーではなく、ベトナムのヌクナムを使っているのは、若干こちらのほうがまろやかだからだそうだ。ホクホクのポテトにしみ込んだ魚醤の旨味と塩気が新鮮な味わいとなっていて、ワインがおすすめの店とはいえビールが進む。店主の佐保さんも、「これは、自分もビールですね」と笑うので、好きなアルコールを頼もう。

揚げたてのポテトにバターを溶かしたヌクナムをからめた「フライドポテト ヌクナムバター」750円。

定番とは違う組み合わせが楽しい料理たち

同店の看板メニューにもなっているのが「ウフマヨ トリュフ風味」だ。ゆで卵にマヨネーズのソースを添えたフランス料理であるウフマヨ。「卵料理とトリュフはよくある組み合わせですが、ウフマヨにトリュフはあまり見かけないと思って」とのことだが、口に運んだ瞬間にふわりと香るトリュフの風味とやさしい酸味の自家製マヨネーズの組み合わせは見事。確かに、なぜ今までなかったのかと不思議に思ってしまう。このウフマヨをさらに特徴づけているのが、目のようにちょこんとのった胡椒の粒。これは生胡椒といって乾燥前の胡椒で、柔らかく胡椒とは思えない食感ながらスパイシーな刺激がアクセントとなっている。

ウフマヨ トリュフ風味
トリュフの香りと生胡椒の刺激が絶妙な「ウフマヨ トリュフ風味」350円。

ウフマヨに合わせるのは、最近人気のオレンジワイン。白ブドウの皮や種と一緒に仕込んでいるため、皮由来の淡い苦みがあり、どの料理にも合わせやすいワインだ。その飲みやすさに、ついつい杯が進んでしまう。

ウフマヨ トリュフ風味
合わせるのはブドウの皮の渋みが料理との相性を高めている「オレンジワイン」800円~。

東西のスパイスが楽しめる煮込み料理

「Niru」は酒とつまみを自由に楽しんでもらいたいと、酒の肴となる一品もののメニューが多いが、同店のコンセプトである煮込み料理はがっつりと食べられるものが多い。ブラジルの「フェジョアータ」や、「蝦夷鹿の赤ワイン煮込み」など、冬の間はこってりしたものを多めに揃えている。
今回は、「豚スネ肉の麻婆煮込み」をチョイス。豚スネ肉がほろほろになるまで3~4時間煮込んだそれは、麻婆豆腐のひき肉が塊肉になって豆腐の代わりに野菜が入ったイメージのオリジナル煮込み料理なのだ。
なお、麻婆とはいえ、山椒は新たに加えずに豆板醤と麻辣醤由来の辛みだけに抑えている。辛いものが苦手な筆者でも、辛さの中にある旨味を楽しみながら食べることができた。

豚スネ肉の麻婆煮込み
「豚スネ肉の麻婆煮込み」は、サクっと飲むならミネラル豊かな白ワインで。食事にするならビールにご飯で。

こちらに合わせるワインを佐保さんに相談したところ、赤ワインでもビールでもなく、「白ワインを試してみては」と言われた。辛口でミネラル感ある甲州の、すっきりとした飲み心地が豚スネ肉の脂や辛さにマッチしている。こちらも、2杯目が欲しくなる組み合わせだった。

各種スパイス
モロッコ料理を得意とする佐保さんは、様々なスパイスを操る。

使い勝手は多彩。食前食後の一杯やディナーにも

「Niru」はカウンター13席と立食スペースのみの店のため、食事前や食後にサクっと飲んでいくのに最適な店だ。ただ駅から離れていることもあり、この店だけで食事と酒を楽しんでいく人も多い。そのためか、ビーフと魚介の2種類のカレーのほか、ルーローハンなどご飯系のメニューも揃っており、隠れた人気メニューとなっている。ちなみに、前述の「豚スネ肉の麻婆煮込み」だが、佐保さん曰く「ご飯との相性が最高」とのことで、単品でご飯を頼むことも可能だという。

Niru店内
店内はカウンター席13席と立食スペースがある。

ちょっぴり多めのグラスワインが楽しめる

同店で揃えるアルコールは、食べ歩き、飲み歩きが好きな佐保さんが気に入って仕入れたもの。自然のままの製法で作られる自然派ワインは、好きなものを揃えたところ半分ほどは日本産になったという。いろいろな種類を楽しんでもらいたいことから基本はグラスで提供。常時、赤白3種類ずつと泡、ロゼまたはオレンジ1種類を用意している。グラスの場合、ボトル1本に付き7杯分で分ける7杯どりにすることが多いが、「Niru」では6杯どりにしている。そのため、ボトルがすぐに空いてしまう。空けば次の新しいワインをおろすので、1~2時間ほど店にいる間にも、グラスワインの種類がどんどん変わっていくのが楽しい。その分、飲み過ぎ、食べ過ぎには注意が必要だろう。

Niruはグラスが中心で自然派ワインを提供
「Niru」はグラスワインが中心。800円から自然派ワインが楽しめる。

ワインのほかにも、ビールはクラフトビールである「コエド伽羅」を用意。薫り高いアイラウイスキーや、日本産のジン「KOZUE」が飲めるのもうれしい。
ウフマヨやフライドポテト、揚げ春巻きなど定番のメニューもあるが、基本は日替わりでメニューが替わる「Niru」。新しいメニューを考えるのが好きだという佐保さんのアイデアが光る料理が次々と登場するだけに、こまめに通っても飽きることがなさそうだ。サク呑みにも、がっつり飲みにも、食事にも使える店といえる。

Niruの店主、佐保さん
佐保さんが一人で切り盛りするため、来店前に問い合わせをするのが無難。
【今日のお会計】
■料理
・ウフマヨ トリュフ風味 350円
・フライドポテト ヌクナムバター 750円
・豚スネ肉の麻婆煮込み 950円

■ドリンク
・オレンジワイン 800円
・白ワイン 900円

合計3,750円

※価格はすべて税抜

 

取材・文:岡崎たかこ(grooo)
撮影:玉川博之