ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第8回は、東京・下北沢にある「gastropub GOZO」のハンバーガーの魅力をたっぷり教えてもらいます!

【じっくり食べたいハンバーガー】第8回「gastropub GOZO」

再開発が進む小田急線・京王井の頭線下北沢駅。その駅前にバン!とそびえる「シモキタフロント」の2階に、便利でオシャレな“ハンバーガーどころ”がオープンしました。「gastropub GOZO(ガストロパブ・ゴゾ)」といいます。

昨年2019年の暮れに、駅から4、5分離れた奥まった場所から移転して来ました。前の店は築40年超えの古いマンションを改装した、いかにもシモキタらしいアンティークな店でしたが、新店は一転、最新設備が整う最先端のお店です。

外階段を2階に上がってすぐ左手のお店です。カウンターに7席。テーブル25席。よーく見ると、フロアの椅子のデザインはすべて違います。壁と天井の古風な照明は、銀座の老舗レストランからもらい受けたもの。流れるBGMはライトでオシャレなスムースジャズ、アーバンジャズ。大きな窓からは外の様子がよく見えて、下北沢の街のにぎわいが伝わって来ます。そんなナイスなロケーションの店が駅から徒歩約1分という奇跡!

ゴゾの売りは大きく2つ。「ガストロパブ=おいしい食事“も”提供する酒場」という意味なので、まずひとつ目はお酒です。ゴゾはビールがおいしい! 茨城県の木内酒造が造る「常陸野ネストビール」が全部で12種類、すべて樽生で飲むことができます。これは木内酒造の直営店とほぼ変わらない品数で、都内でも有数のネストビールの品揃えです。

そして2つ目は料理。店主小西さんは東京・青山の「BLUE NOTE TOKYO」に約9年勤めた後、グループ店「Brooklyn Parlor」の立ち上げに携わり、新宿三丁目にある第1号店の初代料理長を3年半務めた人です。流れるBGMがハイセンスなのは、ブルーノート東京のキッチンで、世界の一流アーティストのプレイを夜ごと聴きながら調理していたがため。そんな腕も耳も鍛え抜いた小西さんの料理、見て参りましょう。

「自家製ソーセージとベーコンのコンボ マッシュポテト添え」1,000円

ネストビールの最高の友は「自家製ソーセージとベーコンのコンボ」で決まりでしょう。ソーセージの作り方はブルーノートで学んだもので、作業はのべ3日、豚ウデ肉の塊を挽くところから始まります。10種類のスパイスを使ったソーセージで、その濃い目の味付けに思わずビールが進みます。

 

シルキーなマッシュポテト、目の覚めるような酸味のコーニッション(小ピクルス)、同じく自家製のベーコンと、味も食感も変化に富んだ一皿で、おひとりさまならこの一品で十分満足できる量と内容です。合わせるビールは「アンバーエール」などいかがでしょう。

「自家製スモークサーモン ピクルス添え」900円

もう少しライトに行くなら、「自家製スモークサーモン ピクルス添え」がおすすめ。このサーモンも店で燻製しています。オレンジ、青パパイヤなど、10種類の野菜と果物が入ったピクルスも自家製。こちらのプレートは「ヴァイツェン」辺りが合うでしょう。

 

ハンバーガーは全部で5品です。どれもシンプルなものばかりですが、究極の一品は、やはり「チェダーチーズバーガー」でしょう。

「チェダーチーズバーガー」(小さなサラダorポテト付き)1,200円。バーガー単品なら100円引き

パティも自家製です。オージー+和牛脂の150g。成形後ひと晩寝かせており、ソーセージのような“ぷりん”とした弾力があります。そのパティを覆いつくす大量のチーズはスライス3枚分相当のシュレッドのチェダーチーズ。その強い塩気と肉の芳ばしさ“だけ”で丸々1個イケてしまう、シンプルで力強いバーガーに仕上がっています。

スモークケチャップは「チェダーチーズバーガー」にかけると効果絶大!

食事の後半、「スモークケチャップ」をかけて、ぜひハンバーガーを「味変」させて下さい。こちらも店で燻製したものです。そのスモーキーな風味と酸味でハンバーガーがキリッと締まって、味の輪郭が際立ちます。最初からかけずに、スーパーサブ的に後半投入するのが吉でしょう。

 

このチェダーチーズバーガーだけでも、もう圧倒的なおいしさで、店の持てる力を存分に発揮しているのですが、さらに自家製ベーコンを足すと、これがまた雌雄決し難いおいしさに!

「ベーコンチーズバーガー」1,400円

このベーコンはハンバーガーに挟んだ方がおいしいです。完成までに6日を要する自家製で、60gと厚みがありますが、案外とやわらかくて歯切れよし。その脂の旨味がチーズバーガーの塩味とコク味の上にのって、ますます充実したおいしさを生み出します。

 

新宿「峰屋」の酒種バンズはオーブンでトーストしてシャリッと軽快な焼き上がり。その下でレタスがパリッと歯ごたえ。チーズの塩気を中和するマヨネーズも小西さんの自家製です。

常陸野ネストビール「スウィートスタウト」1パイント1,000円

ということで、チーズもイイですが、ベーコンチーズもイイ! ゴゾのバーガーはこのツートップでまず決まりです。手ごたえも食べごたえもある充実の一品に出合えること間違いなし! 黒ビール「スウィートスタウト」でちょっと重めに合わせてもよいと思います。

 

最後に店名の「ゴゾ」ですが、ブルーノートを退職した小西さんが3ヶ月間を過ごした地中海の島、「ゴゾ島」がその由来です。だからと言って、マルタ共和国の郷土料理や地中海産のマグロが食べられるワケではありません。あるのはおいしいビールとハンバーガー、そして駅から徒歩約1分の好立地! そんな便利でオシャレなお店です!

 

※価格はすべて税抜

 

 

取材・文・写真:松原好秀