目次
ついに実現!カレー界のミューズと達人による2018年カレーサミット(後編)
昨年に続き、今年も新たに発表された「食べログ カレー 百名店 2018」。数あるラインアップの中から、食べログマガジン執筆陣きってのカレーマニアである、カレーおじさん\(^o^)/と村田倫子さんそれぞれに、注目のお店を教えてもらう短期連載の最終回は、2人による夢のカレー対談。
お互いのカレー観を確かめ合った前編に続く後編では、まだ行ったことのないカレー店の話題に、来年のカレー予測も。最後までカレー愛たっぷりにお届けします!
(続)カレーマニアな2人が選ぶ「今年感動したカレー」とは?
カレーおじさん\(^o^)/が感動したのは福岡の2店「Spice&Dining KALA」&「月と亀」
カレーおじさん\(^o^)/(以下、カ):(村田倫子セレクトの)「PQ’s」美味しいですよね。僕は、いっぱいあるんですけど……2つに絞りますね。ひとつは福岡にある「Spice&Dining KALA(スパイス ダイニング カーラ)」ですね。ここは、1回目は春に行ったんですけど、その時は「なんかすごいぞ」って思ったものの、何がどうすごいのかまで理解できてなかったんですよ。
「Spice&Dining KALA」のミールス/写真:カレーおじさん \(^o^)/
とにかく「これはすごいぞ」と思うものの、理解するのに時間がかかるタイプのカレーで。これはもう一回行かないとだめだと思って、2回目に行ったら、やっと理解できたんですよ。
村田倫子(以下、村):すごい! ちゃんと咀嚼するために2回も行くっていうのが素晴らしいですね!
カ:2回目に行ってやっと分かったんですよね。1回目に受けた衝撃の答え合わせができたというか。そしてそこでさらに思ったのが、「ここにはもっと行かなきゃダメだな」っていう(笑)。
多くのお店は1回食べればこんな感じかっておおよその判断はつくんです。もちろん1回で全てが分かるわけではないんですが、ブレてたとしてもこのくらいの範囲だろうって予想できる。でも、ここは奥が深すぎて1回食べただけではおおよその判断すらできなかった。底なし沼みたいなカレーなんですよ。天才の仕事なんですよね。
村:えーすごい気になってきた!
カ:だからお店にも、「不慣れな人にまずい店」って書いてあるんですよ。それくらい、1回目で味の全容を理解しきれなかったっていう点では、本当にすごいなって思いましたね。また年末に、3回目に行く予定なんですけど(笑)。
もうひとつは、同じく福岡にある「月と亀」です。
村:そこ行きたいんですよ〜!
カ:結構移転を繰り返していて、東京→福岡→東京→福岡に戻るっていう紆余曲折あるお店なんですけど。今回福岡で食べたカレーが、今までの移転遍歴の中でも一番美味しかったです。今までは東京に戻ってきてほしいなって思っていたんですけど、福岡だからこのカレーが作れるっていうんだったら「どうぞ福岡で作ってください。食べに行きますから!」っていうくらい(笑)。
村:たしかにカレーって、場所によって、野菜とか使う食材で全然変わるっていいますよね。
「月と亀」の「筑前インドスペシャル定食/写真:カレーおじさん \(^o^)/
カ:あとはやっぱり水の違いが大きいみたいですよ。東京の水は雑味があるから、それを消すためにスパイスの量を増やさないといけない。だけどその店がある福岡の秋月という場所は水がいいから、シンプルに味が決まる。シンプルだからこそ素材の味も感じやすい。まさに、ここだからこの味なんだなって。
遠いけど、福岡まで食べに行きたいと思うくらい美味しかった。この2店は両方とも福岡の中心部から1時間半くらいかかるから遠いんだけど、それでもカレーを食べるだけに福岡に行く価値があるお店なので、ぜひ行ってみてください!
カレー百戦錬磨の2人が選ぶ百名店の中でまだ行ったことのない気になる店とは?
「スパイスれすとらん cardamom」のカシミールカレー/出典:photomaniaさん
カ:徳島にある「スパイスれすとらん cardamom(カルダモン)」ですね。四国は一度行ったことがあるんですけど、その時はまだ毎日カレーを食べるようになる前だったので、普通にうどんとか食べちゃって(笑)。なので徳島の店を軸に、四国の別の店も回りたいなって。
「コジコジ」のスペシャルスリランカプレート/出典:*あんこ*さん
村:徳島のカレーって確かに気になりますね。私は、遠征とかちょっと苦手なんですけど、茨城にある「コジコジ」ってお店はずっと気になっています。
来年のカレー予測のキーワードは「広がり」
村:来年以降はどんなカレーが流行ると思いますか?
カ:今年は、大阪では前からあったスパイスカレーが全国的に広まったり、間借りの店が増えて、大阪に起きていた流れの何年か後に全国が追いかけている状態ですよね。じゃあ大阪は今どうなんだっていうと、一回飽和状態になって減っていくだろうと思われていたのが、全然減ってないんですよ。全国的にもこのブームが続いて、もっと店も増えていくんじゃないかなって思います。
村:どんどん増えて、ライバル店同士で競い合ったりしながら、味がレベルアップしていったらいいですよね。
カ:そうですよね。なので、次に新しい何かが来る感じではなくて、今の状態がさらに広がるのかなって思いますね。
村:どんどん追えなくなっちゃいますね。生きているうちに食べきれるかなぁ(笑)。
カ:1日3回食べていても追いきれないです(笑)。
ここでカレーおじさん\(^o^)/による南インド料理講座がスタート
カ:今日お邪魔している「アーンドラ・ダイニング 銀座」のシェフ・ラマナイアさんは、日本に南インド料理を広めた、生ける伝説的な方なんですよ。
村:前から来たいと思っていたんですど、今日初めて来られました! ここは何がオススメなんですか?
カ:「アーンドラ・マトン・ヴェプドゥ」が超オススメなんですけど、味が強いので、最初は優しい味の「マサラ・ドーサ」から食べた方がいいと思います。
「マサラ・ドーサ」とは米粉のクレープでジャガイモを包んだ、南インドの定番料理。
「マサラ・ドーサ」1,350円。添え付けの小さい容器の左は「ココナッツチャトニ」、右はスパイスを使ったスープ「サンバル」
村:どうやって食べたらいいんですか?
カ:端のドーサだけの部分をまず味見してみて、その後はチャトニやサンバルを付けて食べると美味しいですよ。
村:わぁ! ドーサの部分だけでも美味しい!
カ:ドーサって結構味が分かれるんですけど、ここのドーサは本当に美味しいです。
中にはたっぷりのジャガイモが包まれている
カレーは出会いの味が肝心。チョイスするなら他で見たことのないメニューを
村:初めてのドーサがここで良かった! やっぱり初めの出会いって肝心ですよね。それが合わなかったら、次にチャレンジしにくくなっちゃう。
カ:そうなんですよね。僕が南インド料理の美味しさを初めて知ったのは、池袋の「エー・ラージ」で、南インド料理の凄さを再確認させてくれたのが、このお店の1号店で御徒町にある「アーンドラ・キッチン」だったんですよ。
村:私の初めての南インド料理は「ケララの風Ⅱ」でした。そこで、「ミールスめっちゃ美味しい!」ってハマりました。ご夫婦で経営されていて、お店自体もすごい素敵で。だから最初の入口が良かったんですよね。
カ:初めて行くお店の特色が知りたい場合は、他で見たことのないメニューを頼むといいと思います。そういうメニューに、その店のポリシーが出ていることが多いので。南インド料理であれば、「サンバル」と「ラッサム」に大体その店の味が出ていると思いますね。
と、この辺で「アーンドラ・マトン・ヴェプドゥ」を食べるといいですよ。
羊肉をスパイシーココナッツで炒めた「アーンドラ・マトン・ヴェプドゥ」1,390円
村:うわー、美味しい! これはお酒が飲みたくなる味ですね。
カ:そうなんですよ。これはスパイス感が強いから、お酒に合う味です。で、「チキン・チェティナドゥ」と「ミールス ノンベジタブル」は一緒に食べるとおいしいですよ。
「チキン・チェティナドゥ」1,490円
「ミールス ノンベジタブル」2,050円
村:ミールスって食べ方が分からない人も多いですよね。
カ:ミールスはご飯に色々混ぜた方が美味しいから、プレートにのっている小皿は絶対外に出した方がいいんですよ。
村:へえー! 確かにプレートの上で混ぜやすくなりますもんね。それはポイントですね。
ミールスは混ぜることでどんどん美味しくなる
カ:そうなんですよ。ご飯の上に小皿の中身をちょっとずつかけて食べていくのが美味しいんですよ。そうすることで、ご飯の下に敷いてあるバナナリーフの香りも楽しめます。ちなみに、ここのラッサムめちゃくちゃ美味しいんですよ。
村:わぁー、美味しい! これだけをずっと飲んでいたい(笑)。
カ:そうそう。ラッサムの中に入りたいくらい美味しい(笑)。
村田倫子はカレー女子増加の鍵を握る存在?
村:私を知ってくれている世代の人にとって、カレーっていうと“バターチキンとナン”みたいなイメージが強いみたいで。もったいないなぁと思うんですよね。
カ:その辺を倫子ちゃんが啓蒙してくれているんで嬉しいんですよ。
村:「ナンの美味しいお店を教えてください」ってよく聞かれるんですけど、「もっと他の美味しいインド料理もあるよ!」って(笑)。色んなカレーがあることを、若い人にもっと知って欲しいです。
カ:本当にカレー界にとって有り難い存在なんですよ。倫子ちゃんがきっかけでカレーを好きになるカレー女子は確実に増えていますよね。10年前くらいは、カレー屋さんで女性を見かける頻度も全然低かったですから。
村:確かに私がカレーに目覚めたのは、こういう本格的なインド料理屋さんとかが増えてからなので、あまり外れに当たることもなくて。だから、その前から探し続けてこられたのは本当にすごいと思います。
カ:僕の場合、ここは外れかなって思う店も敢えて行くようにしています。美味しいものばっかり食べていると、舌が贅沢になっちゃうじゃないですか。それに慣れて本当の美味しさに喜べなくなっちゃうのが嫌なので、あえての店にも行きます。
そういう店の中にも「あれ、ここ美味しいぞ」って発見する時もあるので、カレーマニアが行かないような店も積極的に発掘するようにしています。
カレーは人生を豊かにする魔法の料理
村:カレーの美味しさを判断するのって、私はまだ初心者なので自分の感覚だけなんですけど、お店の雰囲気とか、お店を出すまでの背景とか、店主の方の対応とか、全体を含めて美味しいって感じます。
カ:やっぱり人柄が味に出ますよね。
村:そうなんですよね。カレー屋さんって結構、他の仕事と掛け持ちしながら始めたっていう方も多くて、その人のルートを辿ると面白いんですよね。そういう話を聞いた上でカレーを食べると、より一層深みが増すというか。そういうことを含めてカレーって面白い食べものだなと思います。
カ:カレーを追いかけていたつもりなのに、他の面白いことに気づいたりっていうのがよくありますよね。なんかもう、文化なんですよね。精神的な部分もすごいあるし。色んなことが勉強になります。
村:私もそれこそ、スリランカへの興味はカレーから入ったんです。スリランカカレー美味しい→どんな国なんだろう?→旅行に行ってみよう!って。
カ:カレーは世界を広げてくれますね。人生が豊かになると思います。