フードライターの森脇慶子さんが、オープン間もない新店から「いま訪れるべき良店」を厳選。トレンドに流されない確かな審美眼で、グルメならチェックしておくべき注目店をまとめて紹介します。

森脇慶子が注目する新店

1. 麻布苑(東京・麻布十番)

外観
外観   写真:お店から

8月のオープン以来、焼肉ラバーから早くも熱い視線が注がれているのが、ここ「麻布苑」。その名の通り、麻布十番に誕生した令和の町焼肉です。人気の秘密は、何といってもそのコストパフォーマンスの良さ。

肉に詳しい人ほど同店の価格破壊ぶりに驚かされるはず。トータルで1人1万円前後で楽しめるのが嬉しいポイント。もちろん肉質も上々で、惚れ惚れするような厚みには、焼肉ラバーならずとも心を奪われること請け合い。噛みしめるほどに広がる肉汁の濃い旨みには思わず頬が緩みます。それも、名門焼肉店の信頼が熱い芝浦「樺澤商店」や「田島健次商店」の無水ハラミと聞けば納得。ちなみに黒タンも無水タンで、共に処理の過程で水を一切使わないため、焼き上がりがひと味違ってくるのだそう。

無水タン
無水タン   写真:お店から

その他、「田島健次商店」の希少な“左の白ヤン”も同店自信の一品です。メニューも実に潔い。焼肉とナムルやキムチなどの前菜、そして白飯にスープ類、デザートのみ、といかにも町焼肉。余計なことはせず、焼肉店の本分をまっとうするその姿勢にも拍手を送りたい。

2. ABERDEEN(東京・三越前)

内観
内観   写真:お店から

香港名物“避風塘料理(スパイス揚げ)”の元祖として知られる「喜記」。銀座に進出して9年となる今年の9月、その姉妹店がコレド室町1にオープンしました。その名も「ABERDEEN(香港仔:アバディーン)」。広々としたお洒落な店内でいただけるのは、伝統に則りつつ、現代的な感性を生かした香港小皿料理の数々。料理はいずれも1〜2人向けの小皿サイズで提供されるので、少人数でも色々な種類を食べられるのがうれしい限り。

「鉄板叉焼」
「鉄板叉焼」   写真:お店から

また、お店のおすすめは“鉄板叉焼”1,800円。その名の通り、香港の代表的な焼味(シュウメイ)の一つ“叉焼”が鉄板で登場。「お客様の前で音と香りを届けたい」とは山﨑料理長。ゲストの目の前で焼味汁(叉焼ダレ)をかける演出もシズル感たっぷり。できたてのような熱々感と立ち上る香ばしさも魅力。山﨑総料理長によれば「叉焼は、硬くならないよう長時間低温で火を入れ、最後に高温で仕上げています。」とのこと。アラカルトの他、5,000円〜(ディナー)のコースもあります。

3. boost(東京・広尾)

内観
内観   写真:お店から

“居酒屋以上料亭未満”をコンセプトにこの9月、開業した西麻布「boost」。直訳すれば、“押し上げる”、“高める”の意味を持つ店名は、〈お客様の明日の活力を高めてほしい〉との思いから。「ここでは、もっと自由にカジュアルにお酒と料理を楽しんでもらいたい」と語るのは新田龍生料理長。その言葉通り、メニューはオールアラカルト。西麻布にあって、席料もお通しも取らない姿勢は良心的でしょう。

「焼き胡麻豆腐」
「焼き胡麻豆腐」   写真:お店から

新田料理長おすすめのスペシャリテは、銀座の名店「うち山」仕込みの“焼き胡麻豆腐”800円。また、タレで炭火焼きにした“すっぽん山椒焼き”3,000円も自信作です。旬の食材を取り入れたメニューは、ざっと60種余り。“タコわさ”500円の酒肴から“カニクリームコロッケ”1,200円といった洋風メニューまでバラエティも豊か。締めには“きまぐれ素麺”1,200円(筆者が訪れたときはトマト素麺)や炊き込みご飯もあり、飲みにも食事にも使える頼もしい一軒です。

4. EIKI TOKYO (東京・渋谷)

内観 写真:お店から

恵比寿の人気焼鳥店「鍈輝」の姉妹店もこの9月1日、渋谷はミヤシタパークのほど近くにオープンしました。世界へ踏み出すためのフラッグシップ店としての立ち位置というだけに、店内はインバウンドを意識したお洒落な内装。ビルの最上階から見渡す夜景も見事です。

「おまかせコース」13,200円

お任せストップ制だった恵比寿店に対し、こちらは一品料理が2品に串10本とデザートがつくおまかせコースのみ。恵比寿と変わらぬクオリティを目指しつつ、こちらでは鶏ワンタンスープや鶏白湯の茶碗蒸しなどの一品料理が串の合間に登場し、舌をリセットしてくれます。扱う鶏は伊達鶏をはじめ、錦爽どりや比内地鶏など数種類を使用。カウンター18席の他、焼き台を設けた個室もあり、忘年会などちょっとした集まりにも重宝しそうです。

5. umé(東京・乃木坂)

内観
内観   写真:お店から

10月1日にデビューしたばかりのニューフェイスは、乃木坂「umé」。フランス・ロレーヌ地方の郷土料理店です。厨房に立つのは、静岡出身の梅林佑輔シェフ。ロレーヌ地方で約4年間研鑽を積んだ後、フォーシーズンズホテル東京大手町の「エスト」ではギヨーム・ブラカヴァルシェフの、そしてパレスホテル東京の「エステール」では小島景シェフの片腕として腕を振るった実力派です。六本木の喧騒から一歩離れたビルの地下、扉を開ければ、地下へと続く階段はドラマティックながら、グレーとベージュのトーンでまとめた店内は、食べ慣れた大人が似合うシックな空間です。

「牛タンの冷製・グリビッシュソース」
「牛タンの冷製・グリビッシュソース」   写真:お店から

料理は、最初におまかせ3品が出た後はアラカルト。“ハチノスのシードル煮込みノルマンディー風”や“花悠仔豚頭のクロケット”、“秋野菜の温かなスープパスタガルビュールミレイユ風”等々、料理は郷土色豊か。それでいて、どこか洗練された仕上がりに梅林シェフのセンスがうかがえます。ちなみにワインはフランスワインのみを提供しています。

教えてくれた人

森脇 慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

※価格はすべて税込、サービス料別です。
※「食べログ」に掲載されている情報をもとに、料理名・金額等を掲載しております。 営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。 

文:森脇慶子、食べログマガジン編集部