目次
〈自然派ワインに恋して〉
シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。
ナビゲーター

岡本のぞみ
ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。
渋谷・松濤にできた朝から夜まで利用できるイタリアン

朝から夜まで利用できる“オールデイダイニング”といえばホテル内のレストランが主流だったが、街なかにも利便性が高く開放的なレストランが登場している。2026年5月にオープンした「Drawn」は、渋谷駅から歩いて10分ほどの松濤の入口にできたオールデイイタリアン。店内はアンティーク調の落ち着いた色合いのインテリアに囲まれ、どの時間帯でも上質な食体験ができるようになっている。「昔から松濤の街にずっとあったようなお店をめざしています」とサービススタッフの荒川公平さん。松濤の新たなシンボルとしての可能性を秘めている。

メニューはイタリアンらしく素材の良さが皿の上でビビッドに表現された品々が並ぶ。大胆に素材を打ち出しているかと思えば、千葉の吉野ハーブファームから届く野菜やソースが繊細に彩られていたり、ソースとして使われているのがDrawnらしさ。8月から登場して以来注目されているのがモーニング。アボカドなどがのった自家製フラットブレッドが人気を集めている。ランチはパスタやフォカッチャサンドがあり、ランチシェアコースもスタート。そして夜はアラカルトが中心だが、人気メニューが少しずついただける9品のコースもおすすめだ。

ワインは自然派ワインとクラシックなワインが用意されているが、白ワインは自然派ワイン中心。店の奥に小さなワインセラーがあり、ボトルワインはこちらで選べるようになっている。「実際に選んでいただいて スタッフと一緒に選ぶという体験ができます」と荒川さん。ワインを選ぶワクワク感とともに完成するディナーが楽しめるようになっていた。
マグロのタルタル×スパイシー赤ワイン

前菜で頼みたいのは「マグロのタルタル カラマンシーのヴィネグレット」。メニュー名から想像していたより繊細で美しい一皿に心が躍る。こちらは、カラマンシーという柑橘のドレッシングを合わせたアボカドとキュウリの土台に、しょっつるや焼き昆布のオイルなどで下味を付けたマグロのタルタルをのせた一皿。マグロのおいしさをしっかり感じられる味付けながら、さっぱりといただける前菜となっていた。

マグロのタルタルにペアリングしたいのは、グルナッシュを主体にしたフランス・ローヌ地方の赤ワイン。「マグロはミディアムくらいのボリュームの赤ワインがおすすめです。こちらはグルナッシュが主体で、マグロとのバランスが良く、スパイシーさもあって、マグロの下味のコショウとも相性がいいですね。ちょっと印象に残る組み合わせになると思います」とソムリエ資格を持つ岡橋シェフ。下味とのバランスも考えられた絶品のマリアージュだった。
タコのリゾット×塩ミネラル白ワイン

魚料理の人気メニューは、インパクトのある「真蛸のソテー 季節野菜のトマトリゾット」。「タコのおいしさをダイレクトに感じてほしくて、茹でてソテーにしました。他の調理法も色々試しましたが、シンプルな調理法がベストでした。しっかり咀嚼するからこそ味わえるタコの食感と味を満喫してください」と岡橋シェフ。季節の野菜やトマトリゾットもシンプルな味わいで、タコのおいしさを引き立てていた。

マダコのソテーにおすすめなのはポルトガルの白ワイン。「ポルトガルはタコの消費量が多い国で、今回の一皿に近いタコの伝統料理もあります。そのため、ポルトガルの白ワインを合わせました。こちらの白ワインは、酸が強く塩味のミネラル感があるので、タコとの相性は抜群です」と荒川さん。うまみもしっかりある白ワインなのでトマトリゾットとも合わないわけがない。タコから野菜、リゾットに至るまで海のミネラルある白ワインが織りなす物語が次々に味わえるような組み合わせだった。
豚とポルチーニ茸のラグーパスタ✕オレンジワイン

パスタはDrawnにとって自慢の料理。「1テーブルで2、3種類食べてほしい」というほどの自信作だ。「タリオリーニ/もち豚とポルチーニ茸のラグー燻製プロヴォローネ」は、越後のもち豚のバラ肉をとポルチーニ茸を1時間しっかりと煮込み、仕上げに軽くスモークされたチーズがかけられている。秋が深まるにつれ、ポルチーニ茸の風味も強くなってくるため、これからの時期にぜひとも食べたいメニューだ。

こちらのワインも岡橋シェフがセレクト。イタリアのガルガーネガを使ったオレンジワインをペアリングしてもらった。「豚肉は白身の肉になるので、赤よりも白ワインのほうが合うと思っています。自然派ワインなら、煮込んだ豚や燻製香に合わせてオレンジワインがベスト。食事に合うだけでなく、ワインの余韻でパスタが進む組み合わせです」とユニークな味わい方を教えてくれた。
荒川さんの「私が恋した自然派ワイン」

荒川さんが恋したワインは、ワイン選びの価値観が変わったというフランス・ロワールのシュナン・ブラン。
「このワインを知ったきっかけは岡橋シェフが好きだと紹介されたからです。この店で働くまでは、ワインが主役になるような一本が好みでした。でもこのワインは料理のポテンシャルを高めてくれるワイン。シェフのワインの選び方を通して新しい発見がありました。
味わいとしては果実味がはっきりしていて、ミネラル感やレモンのような酸味があります。とはいえ料理に寄り添うところがいいですね。実際どのお客様に出してもおいしいと言っていただけます。ぜひ試してみてください」
おもしろいワインをピックアップしたい

Drawnでは、イタリアやフランスのワインを中心にラインアップ。グラスワインは、その時期のメニューに合わせて岡橋シェフの意見も聞きながらふさわしいものが選ばれている。しかし、ボトルワインについては自由に選んでいきたいと話す。「当店のグループは“まるで旅をしている時間”をコンセプトにしています。そのため、今後はニュージーランドなどニューワールドのワインも入れていきたいですね」と荒川さん。ワインセラーでのボトル選びはますます発掘しがいがありそうだ。グラスワイン7種類(1,100〜1,500円)、ボトルワイン100種類(7,000〜12,000円)。
どんな時間帯も居心地がいい空間


Drawnは渋谷の喧騒と松濤の落ち着きのちょうど中間にある。渋谷でにぎやかに遊ぶ前にするか、あるいはその後にするか、時間にしばられず立ち寄れるのがいい。どの時間帯にもふさわしいメニューがあり、スタッフもフレンドリーで、インテリアもおしゃれで居心地が良いとくれば、松濤の新たな顔になる日も近い。どんなときでも導かれるように訪ねてみてはいかがだろう。
※価格は税込



