〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、食べロググルメ著名人・門上武司さんが教えてくれた兵庫・元町の「神戸元町別館牡丹園」。シンプルながら必ず食べたくなる「白髪ネギと生姜の和えそば」を紹介する。

教えてくれる人

門上武司

1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会副理事長、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「食べる仕事 門上武司」「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)、「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、など。年間外食は1,000食に及ぶ。

創業70年以上、王道の広東料理店

JR、阪神各線元町駅から徒歩すぐ。神戸を代表する中国料理店として70年以上、王道の広東料理を供し続けている一軒。3階建ての店内には160席あり、個室もスタンバイ。コースで宴会はもちろんのこと、ランチで麺料理などをさっといただくことも可能。アラカルトのメニューが100近くあり、今では神戸でも数少なくなってきているスタイルを守り続けている貴重な店だ。

駅から近いのも魅力のひとつ
中国料理店らしい丸テーブルも健在

店を取り仕切るのは、3代目の王文良(オウブンリョウ)さん。2代目の父のもとで料理の経験を積んだ。「親の仕事を見ていて、ほかの職業を選ぶ選択肢はなかったですし、料理が好きで、しんどいと感じたことはありませんよ」と笑顔をみせる。

笑顔が素敵な王文良さん
 

門上さん

神戸南京町以外の中華料理店では初めて先輩が連れて行ってくれたところで、以来、通うようになりました。推し麺は、シンプルイズベスト、という感動!

これが白髪ネギと生姜の和えそばの作り方!

王さんに白髪ネギと生姜の和えそばを作ってもらった。甘みが少なく牡蠣の風味が濃厚な自家製のオイスターソースが味の決め手とのこと。和えるときに火は入れず、熱い麺と熱したソースを合わせ、ほどよく水分を残すことが、調理のポイントだ。店では、焼豚と小海老が入ったバージョン(1,980円)もおすすめとのこと。

材料は麺とネギと生姜
鍋に油とネギを入れ少し炒める。辛みをとばし、香りを出すため。鍋からあげておく
鍋にオイスターソース、鶏油、生姜を入れて炒め、香りを出す
麺をスープで軽く茹でる。半分くらい火入れするイメージ
さらに鍋に醤油やコショウなどの調味料、スープ少々を入れて炒める。水分をほどよく残すためにここで火を止めることがポイント!
茹でた麺を加える
箸でさっと混ぜる。混ぜすぎると粘りが出るので注意
皿に麺を盛る
鍋にネギを戻し、鍋に残った味を吸わせる
麺の上にネギ、パクチーをのせて完成!

これが門上さんおすすめ麺、白髪ネギと生姜の和えそば

白髪ネギと生姜の和えそば(1,320円)

茶色い麺の上には、たっぷりの白髪ネギ。そして、天には緑のパクチーが盛られ、シンプルな具材ながらも見た目が美しい。口中へするすると入っていく麺はオイスターソースのうまみをまとい、ネギのシャキシャキ感がアクセントとなっている。

 

門上さん

中華麺はサラッとしていますが味わいあり。オイスターソースとの相性の良さを感じます。このソースのコクがうっすら絡み、麺をワンランクアップさせていますね。白ネギの苦みとシャキシャキ感が、麺の味を持ち上げます。

地に足がついた料理を味わえる

「好きなものを好きなように飲みながら食べられるのが外食の醍醐味ですよね!」と王さん。「ランチで和えそばなど、まずは若い方も一度訪ねてみてください。トラディショナルというか、地に足がついた料理を味わってみてほしいです」とも。どの世代もおいしいと感じる安定の味わいと、アラカルトが豊富という自由度で、3世代で訪れる客が多いというのも納得の一軒だ。

「今後はいいところを残しつつ、今のニーズに合った料理もお出ししていきたいですね」と王さん

※価格は税込。

撮影:東谷幸一
取材、文:木佐貫久代