〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは、口コミ数が少なかったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり、点数が上がると予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、カレー細胞(松 宏彰)さんが「ちゃんと時間を空けて行くべき」とおすすめする、川越の「タベカレー」を紹介する。

教えてくれる人

カレー細胞(松 宏彰)

兵庫・神戸生まれ。国内だけでなくインドから東南アジア、アフリカ南端、南米の砂漠まで4,000軒以上を食べ歩き、Web、雑誌、TVなど各メディアでカレー文化を発信し続ける。年2回、カレーにまつわるカルチャーを西武池袋本店に集結させる「東京カレーカルチャー」など、イベントプロデュースも多数。TBS「マツコの知らない世界」ではドライカレーを担当。Japanese Curry Awards選考委員。食べログアカウント:ropefish

駅近の閑静な一角に立つワインバーで間借り営業

営業中に登場する手描きの黒板も味がある

川越の観光コースから外れた駅近の静かな一角、二番町通りにあるワインバーを間借りして、2020年9月から営業するのが「タベカレー」である。店名は、店主の名字である「田部」とカレーをドッキングさせて付けたものだ。

 

カレー細胞さん

SNSでただならぬ他とは違う空気を感じ、行ってみたいと思っていたものの、何せ川越でのランチ間借り営業。なかなか行けなかったのですが、実際に行ってみたら想像以上に面白い店だった。店名を「ゆうべかれー」と読み間違えられるのもチャームポイントかも(笑)。

口コミ数は7件、口コミの点数は3.07と決して高いとは言えないが、それだけこれからの伸びしろに大きな期待ができる一軒と言える。

※点数は2023年2月時点のものです。

料理経験ゼロからのスタートでカレー店店主に

約3畳の空間にカウンターが7席。店主との距離も近い

店主は、カレー好きが高じて「自分で作れば大量に食べられるじゃないか」と、本格的な料理経験ゼロの大学時代から自作カレーを作るようになった田部哲達(あきと)さん。居酒屋で働くかたわらイベントなどでカレーを披露する腕前になった頃、客として通っていた「デイリー スタンド コポリ」の店主から声をかけられ、ランチメインで間借り営業をするようになった。

寸胴に入ったこのキーマカレーが別次元のおいしさの定番カレーに変貌する

ここで提供するのは、季節の野菜をふんだんに使ったインド料理的なカレーと、ミールスと呼ばれる南インドの定食だ。

インドカレーと聞くとバターチキンにナンが思い浮かぶが、それは北インドでの食べ方。南インドでは、インド産の細長い米・バスマティライスに、野菜や豆で作った副菜を合わせた定食スタイルが好まれており「自分が野菜メインでランチを食べたくても、この辺にそういう店は意外とない」ことから、カレーとミールスを提供する店にしたという。

普段は川越産がメインだが、季節のイベントに合わせて出身地・会津の野菜を使用することも

サツマイモのイメージがある川越だが、青パパイヤや金柑、柚子、青唐辛子、ハバネロ、京芋、ビーツなど、定番野菜以外にも季節ごとにさまざまな野菜が取れるという。

「川越には、そういった野菜を使用するカレー店がほとんどないので、これはおもしろそうだと使うようになりました。市場や農園にある野菜から得るひらめきを大切に、ガチガチにメニューを決めず、日々考えながら作るのも楽しいんです」(田部さん)

 

カレー細胞さん

とにかく作り手の強い思いが伝わってくる料理です。「これがおいしい」「これを食べてほしい」と思いを込めて作っているのがよくわかります。地元川越の新鮮な食材を積極的に取り入れ、「おいしい」と「地元応援」を両立させています。