ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第14回は、千葉「ルイス クラシック」のハンバーガーの魅力をじっくり教えてもらいます!
【じっくり食べたいハンバーガー】第14回「ルイス クラシック(LOUIS CLASSIC)」
今月は千葉県で奮闘するハンバーガーショップをご紹介します。場所は千葉県千葉市。「懸垂型モノレールとして営業距離世界最長を誇る」千葉モノレールが走る、小倉台という住宅街のお店です。
小倉台は、駅前にスーパーや商店街など特にない、一戸建て住宅が立ち並ぶ静かな住宅街です。そこへ突如現れるのが「ルイス クラシック」。街並みに見事に調和したハンバーガーショップです。
見てください、このさわやかな外観! 外壁を鎧張りにした一軒家の1階部分が同店です。店の周囲に駐車スペースが5台分。緑の鮮やかな植え込みは、2階に住む大家さん自ら手入れされています。この店構えもあってか、客層の実に8割は女性。店内・持ち帰りともに平日から客足が絶えない人気店ですが、店主・澤田さんにとってこれは予想外の展開で、本当はもっとのんびりやるつもりでいたそうです。
そんな澤田さんの経歴は少し変わっています。大のバイク好きの澤田さん。将来自分でバイク屋をやろうと、大手バイク販売チェーンに就職しますが、最初の配属先だった東大阪で「ユーケー ワイルドキャッツカフェ」(通称UKカフェ)という老舗アメリカンダイナーと出合ったのが運命。バイク屋を辞めてUKカフェで2年働き、地元・千葉に戻って、最初の店「ROYAL FLUSH DINER」を始めます。
場所は総武線・西千葉駅。千葉大学正門前の店で、客の8割は大学生でした。UKカフェ譲りのド派手な店内で、学生相手にドカ飯をバンバン提供してなかなかの評判でしたが、「一人で回せる店がしたい」と店舗丸ごと完全に手放し、2019年5月に新たに始めたのがこのルイス クラシックです。
「生産性よりも質を重視」した「安全で高品質なハンバーガー」というのがルイス クラシックのコンセプトです。パティは穀物飼育のUSビーフをブロック肉で仕入れ、店で切り出して作る自家製。ベーコンも地元千葉県産の銘柄豚を使い、店内で作っています。当初思っていたより忙しくて、「ちょっと仕込みが大変」という澤田さんが、肩や手首を痛めながら精魂込めて作るハンバーガーは全8品。まずは基本の「ルイスバーガー」からいってみましょう。
パティは130g。挽肉とチョップ肉が6:4の割で「プツプツ」とした噛みごたえあり。その上にフレッシュ野菜と特製オーロラソースがたっぷり。このソース、卵の風味が強めで生野菜との相性が抜群によく、結果として肉より野菜が目立つバーガーに仕上がっています。バンズは小倉台の名店「パン・フランキー」作。表面がザラッとしたソフトフランス地であっさりしているので、こちらも野菜との相性が好いパンと言えるでしょう。
この基本の「ルイスバーガー」にベーコンとチーズを挟みます。ベーコンは千葉県産の「林SPF」ポークを使った自家製。完成までに9日を要します。1回に仕込む量は5kg。まずは塩漬け6日。塩を抜いて乾燥させ、オーブンで2時間ほど火入れした後、最後はスモーカーで燻煙2時間。チップはサクラを使用。そのスモークの香りが店の外まで漂って、入る前からおいしい予感がMAX!
その4mm厚に切った自家製ベーコンをのせたバーガーがこちら。最大のポイントは「ちゅるっ」ととろけたチーズです。いい塩気が加わって、バーガーらしさが一気にアップします。一方、ベーコンはあまり焼かずに硬めの噛みごたえ。おとなしめな活躍ですが、今回食べた中では最も華のある、バーガーらしいにぎわいのバーガーでした。
もっと肉にフォーカスしたものを……と見つけたのが「サワークリームマッシュルームチーズバーガー」です。生野菜はレタスのみ。パティの上にはバター醤油でソテーしたホワイトマッシュルームとエリンギ。クラウン(上バンズ)の裏にレモン汁・生クリームと和えたサワークリームが塗られていますが、それよりエメンタールチーズがいいコクと香りを利かせて大活躍。後味は強めのキノコ味。エキスがよく出てます。
と、ここで思うワケです……「もっとやわらかい肉で食べたい」と。焼き加減が強いので肉が硬くなり、チョップ肉のよさがイマイチ出ていません。そこで、一緒にパティを試作することにしました。目指すは「食べやすいパティ」です。
「挽肉の粗さ」「ブロック肉から切り出す際に残す脂の割合」「ハンドチョップの加減や肉粒の大きさ」などを見直し、4種類のパティを作りました。成形後ひと晩冷蔵保存。さらに「鉄板の温度」「グリルの時間や手順」も再検討してパティを焼き、試食した結果……。
最もよかったのは10mm挽きの挽肉だけで作ったパティでした。10mmのワンサイズで肉の粒が揃っているので、ゴロゴロしつつも噛み切りやすく、バンズやレタスまで歯切れがよくなったように感じます。脂もほどよく含んで、見た目にも艶やかになりました。この10mmパティをベースに、あとはチョップ肉をどう活かすかが今後の課題です。
いいパティができて、ますますおいしくなったルイス クラシック。千葉の住宅街のハンバーガーショップです。モノレールにも乗れる!
※価格はすべて税抜