【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレー#85】「ミセス ダダ」
カレーの多様性については本連載でもことあるごとに書いてきました。インドカレーといっても北と南では全然違うものだったり、ネパールやスリランカなどにも自国のカレーがあったり、日本においてもスパイスカレーと呼ばれる新しいカレーが流行していたり……。
日本人は何かとジャンル分けしたがる民族性といいますか、これは〇〇カレーだと理解してから食べたがる方が多いといいますか、そんな風潮を感じることもしばしばあるのですが、ジャンル分けされたカレー界に風穴を開けるような個性派カレーのお店が、銀座でプレオープンしています。その名も「Mrs.Dada(ミセス ダダ)」。こちらのお店が今週ご紹介したいカレーです。
プレオープンしたのは10月11日。正式オープンは11月11日の予定だそうです。それまでの間は様々なカレーを試しながら出してみて、お客さんの反応を見てから正式メニューを決めていくための期間とのこと。「Art of Curry」をコンセプトにしたというお店は、内装にもこだわりを感じるアーティスティックで落ち着いた雰囲気。
プレオープン期間中のメニューは、レギュラーメニューとして「チキンカレー」と「シュリンプカレー」、そして「日替わりカレー」を用意しているそうです。僕が行った日の日替わりは、「豚ほほ肉のスパイシーカレー」でした。チキンと日替わりの「2種盛りカレー」1,000円でオーダー。
2種盛りといってもご飯が真ん中に左右あいがけというわけではなく、片方にご飯、そしてカレーは片方に半分ずつ。その接地面は自然と2つのカレーが混ざった状態となっていて個性的。副菜としてマサラパパド(インドの豆せんべいにスパイスで和えた野菜を添えたもの)がのるのですが、ただのマサラパパドではなく、マッシュポテトが添えられてあったり、淡い黄色に色づいたライスにはフレッシュなフェンネルがあしらわれていたりと、アーティスティックにこだわった麗しいルックスの一皿となっていました。
食べてみれば味も素晴らしい! シェフは南インドのケララ出身の方なのですが、南インドカレーでも北インドカレーでもなく、イタリアンやフレンチを思わせるような仕上がりの超個性派カレーなのです。オーナーに話をうかがってみると、オーナー(日本人)とシェフはイタリアンのお店で出会ったそうです。
オーナーがカレーのお店をやりたいということでシェフに声をかけたものの、インド料理は自国の料理だから面白くないのでやりたくないと断られたそうです。しかし、そのままインドのカレーを作って欲しいわけではなく、様々な国の料理や調理法もミックスさせたオンリーワンの個性派カレーを出したいんだと説得。それならばということで手を組み、開店にこぎつけたとのこと。
だからこそのこのカレーなわけです。チキンカレーのトマトの使い方はイタリアンっぽくもありますし、日替わりに関しては、そもそも豚肉をインドではほとんど使うことがありません。その豚のほほ肉をしっかりと煮込むことによって日本人にも受ける味のカレーとなっていたり。サービスで出してくれたミニサイズの海老カレーを食べてみると、南インド感もありながら決してそのままではなく、どのカレーを食べても優しく、上品なおいしさなのです。
確かにこのカレーならジャンル分けがしにくいですし、ジャンル分けする意味すらそもそも無くなってきます。「ミセスダダのカレーはどんなカレー?」と問われたなら「ミセスダダのカレー」としか答えることができないでしょう。ジャンルを問われたならば「ノンジャンルカレー」と答えるのが一番正解に近いかと思います。
食後にはコーヒーとコーヒーゼリーもサービスされ、これも合わせて1,000円というのは銀座という場所柄も加味して考えれば超破格。もちろん正式オープン後に値段が変わるということもあるでしょうが、オーナー曰く「できるだけ高くしない形でご提供できればと考えています。金額が上がることもあるかもしれませんが、その場合はより豪華なものにして、ただ金額が上がるだけにはしません」とのこと。アーティスティックでありながらも庶民的なところもまた素晴らしいです。
正式オープン日まであとわずか。是非プレオープン期間に食べに行き、ご自分の感想、意見をオーナーに伝えてみてください。それがオープン後のメニューに反映されることもあるかもしれません。個性派アーティスティックカレーの新店。カレー界をさらに盛り上げてくれる存在となってくれたらと期待しています。