充実の食事メニューとコーヒー・煎茶の飲み放題。本屋とは思えない「本気の喫茶室」

2018年12月11日にオープンした「文喫 六本木」は、“入場料を支払って入店する”というシステムが話題になった画期的な本屋さん。入場料1,500円(平日19時以降は1,000円)で、約3万冊ある書籍を自由に閲覧できます。

 

この「文喫」にある喫茶室の居心地が、とにかく抜群! ハヤシライスやカレー、ナポリタンやプリンといったおなじみの喫茶店メニューだけでも嬉しいのに、コーヒーと煎茶は飲み放題。さらに、アルコールも用意されています。

 

席も、半個室やソファー、全身を受け止めてくれる巨大クッションが備えられ、その時の気分にあった席でくつろぎながら、丸一日過ごせる快適さです。

“運命の一冊”と出会うために、一日じゅう過ごせる空間を

なぜ、本屋さんがここまで“本気”の喫茶室をつくりあげたのでしょう。「文喫」店長の伊藤晃さんにその理由を聞くと……。

「お客さんが“一冊の本”と出会える書店を目指しているからです。一冊を選ぶための優雅な時間を提供したい。でも、その“一冊”と出会う前にお腹が減ってしまったら、本屋の外に行かなくてはならず、気が散ってしまう。そういったことがないように、喫茶室で食べ物や飲み物を注文してもらって、朝から晩までゆっくり本を選んでもらいたいと思っています」(伊藤さん)

 

本との出会いを大切にする空間だからこそ、3万冊の蔵書がありながら、フェア以外は一点一冊しか置いていないそう。お店を出るまでに、そのときに欲している一冊が必ず見つかるように、本を選ぶための途切れない居心地のよい時間と空間を大切にしているのです。

一番売れているメロンソーダの本のために、嬉しい新メニューも……?

「文喫」では、体に安心な、添加物がほとんど入っていない食事メニューを揃えています。おいしいメニューを提供するために、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」を展開するスマイルズがメニュー開発を担当しているそう。

卵を崩して麺とからめながら食べるのがおいしい「ナポリタン 半熟卵のせ」(880円)。飲み放題のコーヒーも、一杯一杯心をこめて淹れています。

 

雰囲気たっぷりの器に盛られた「とろけるカスタードプリン」(580円)。ひと口食べると夢見心地に。

 

爽やかなむらさきとお日さまのようなオレンジの対比が美しい「柚子蜜ジャスミンティーソーダ」(680円)。かき混ぜると色が変わって、淡いピンクのような色に。

 

「やはり“喫茶室”と謳っているので、喫茶店っぽさは大切にしています。メニューにもナポリタンやカレーを揃えました。あと、夏に向けて開発を進めているのがメロンソーダ。実はこの店で一番売れているのがメロンソーダの本なので、体にいいメロンソーダをぜひ実現したいです」(伊藤さん)

長年愛され続けた本屋への思いを、残せる限り残していきたい

じつは「文喫」があるのは、2018年夏に惜しまれながら閉店した「青山ブックセンター 六本木店」の跡地。多くの人に愛された同店の遺志をつぐため、内装もできるかぎり残せるものは残したそうです。

 

「出店するときに、今あるものを残そうと決めていました。階段や茶色の本棚も、青山ブックセンターにあったもの。そういうものは必ず残しておきたかったんです」(伊藤さん)

カウンターのデザインは「原稿用紙」をイメージ。

 

「文喫」では、本の置き方もテーマごとにパッと見てわかるように陳列。本と出会いたい人の心を、さまざまな角度から支えています。現在は、ビジネス書のフェアを5/31まで実施中。スタッフだけでなく、訪れるお客さんが薦める本も紹介していく予定です。

本もおいしい食べ物も、新鮮な驚きと喜びを人生に与えてくれるもの。その両方といっぺんに出会える「文喫」は、多くの人々にとって足しげく通いたい場所になっています。

 

※価格は税別です。

 

取材・文/六原ちず

撮影/柿崎真子