〈遠くても食べたい味〉

年間の外食は1,500軒以上! 令和のグルメ王、浜崎龍がわざわざ旅をしてでも行く価値があるお店を紹介します。今回は、大阪・北新地のそば屋「蕎斬(きょうざん)」の塩ラーメンです。

蕎斬

「そば屋のラーメン」と聞くと、少し変化球のように感じるかもしれません。でも、この一杯はそういう枠で語るものではありませんでした。

澄んだスープに、力強い豚のうまみ。そこに平打ち麺が合わさる。

これだけでラーメン専門店として勝負できるんじゃないかと思うほど、完成度の高い一杯でした。

深夜の北新地、そば屋で頼んだ一杯

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外観   出典:pop_oさん

蕎斬があるのは、堂島のビル1階。平日は深夜まで営業しているそば屋で、僕が訪れたのも深夜でした。そば屋のラーメンなら、出汁を生かした軽めの一杯だろう。注文したときは、そう思っていました。

ところが、食べ始めてすぐにその予想は外れます。「そば屋なのにラーメンもおいしい」というレベルではない。一杯のラーメンとして、しっかり完成していました。

澄んだスープから、豚のうまみが押し寄せる

「そば屋の豚塩ラーメン」1,400円(税込)

見た目は透き通っていて、とてもきれいなスープです。ところが一口飲むと、見た目からは想像できないほど豚のうまみが押し寄せてきます。うまみはかなり強い。それなのに、飲んだ後はすっと引いていく。

この「強いのに重くない」バランスが、この一杯のいちばんの魅力です。豚のうまみがしっかりありながら、深夜に食べても重たさを感じにくい。気づけば麺を啜ってはスープを飲み、また麺に戻っている。最後まで飲みたくなるスープでした。

平打ち麺が、スープを連れてくる

この一杯を成立させているのが、平打ち麺です。つるっと滑らかで、啜るとスープをしっかり持ち上げてくれる。麺だけが前に出るわけでも、スープだけが主張するわけでもありません。麺を啜るたびに、豚のうまみも一緒に口の中へ入ってくる。

このスープには、この平打ち麺がよく合っています。量もちょうどよく、深夜でも食べやすい。個人的には、この麺とスープの組み合わせがかなり印象に残りました。

アグー豚と焦がしネギ、途中から山椒

トッピング

具材は、沖縄アグー豚の焼豚と焦がしネギ。まずは何も加えず、そのまま食べるのがおすすめです。豚のうまみを中心にしたスープを味わったあと、途中から山椒の香味オイルを加えます。僕もこの順番で食べました。山椒が入ると爽やかな香りが立ち、一杯の印象ががらりと変わります。

前半は豚のうまみ。後半は山椒の香り。一杯で2つの表情を楽しめるので、うまみの強いスープでも最後まで飽きずに食べられます。最初から山椒を全部入れるのではなく、途中から味を変えるのがいいと思います。

〆にも、目的にもなる一杯

北新地で食事をしたあとの〆として使うのは、もちろんいいと思います。平日は深夜まで営業しているので、遅い時間に食べられるのもうれしいところです。

ただ、僕ならこの塩ラーメンを食べること自体を目的に、蕎斬へ行きます。大阪にはラーメン店が本当にたくさんありますが、その中でもこの一杯は覚えておいてほしい。

「そば屋なのにラーメンがうまい」ではなく、「蕎斬の塩ラーメンがうまい」。

食べ終えたときの感想は、それに尽きました。

教えてくれた人

浜崎龍

グルメメディア「TERIYAKI」や国内最大規模のグルメオンラインサロン「TERIYAKI美食倶楽部」の運営を行う、テリヤキ株式会社の代表を務める。大学生時代から幅広く食べ歩きを行い、ラーメンから高級フレンチまで年間1,500軒以上も飲食店を巡り歩く。ジャンル問わず、日頃全国の「おいしい」を求めており、北海道の端から沖縄、はたまた世界中まで飛び回る。レストランとのイベント企画も手がけ、飲食に対する新たな可能性を日夜見いだす。メディア掲載、マガジンハウス「Hanako」など。

文:浜崎龍、食べログマガジン編集部