〈遠くても食べたい味〉

年間の外食は1,500軒以上! 令和のグルメ王、浜崎龍がわざわざ旅をしてでも行く価値があるお店を紹介します。今回は、福岡県の「カリー フランキー軒」です。

カリー フランキー軒

シンプルな看板

メニューはほぼ一品。それでも、食べ進めるほどに楽しみが広がっていく。福岡・小倉の「カリー フランキー軒」で出会ったのは、玉ねぎの甘みと鶏の旨み、スパイスが重なり合う骨付きチキンカリーです。今回紹介するのは、小倉駅から歩いてすぐの「カリー フランキー軒」。骨付きチキンカリー一皿に集中した小さなお店です。僕が気に入ったのは、カレーそのもののおいしさはもちろん、途中から自分好みに味を変えていけるところ。同じ一皿を、最後まで新鮮な気持ちで楽しめるんです。

細い階段の先にあるカウンターだけの小さな店

この看板を目印に

お店があるのは、セントシティの駐車場入口の向かいに立つ品川ビルの2階。細い階段を上がると、カウンター9席ほどの空間が迎えてくれます。2024年1月にオープンしたお店で、以前は寿司店だったという内装を生かしていて、どこか落ち着く雰囲気があります。

ここで食べるのは「骨付きチキンカリー」。メニューがほぼこれ一択という潔さがいい。ご飯の量は細かく選べるので、その日の腹具合に合わせて注文できます。カウンター越しのマスターとの距離も近く、カレーや味変の楽しみ方を丁寧に説明してくれる。初めてでも、すっとなじめるお店です。

玉ねぎの甘みとコクのあとからスパイスが来る

「骨付きチキンカレー」1,100円(税込)

運ばれてきたのは、銀色の楕円の皿に、ご飯と骨付きチキンが盛られたカレー。濃い色のルーを一口食べると、まず玉ねぎの甘みとコクが広がり、そのあとからスパイスの辛さがじわじわと追いかけてきます。鶏の旨みもしっかりと感じられて、ご飯と一緒に食べると、また次の一口が欲しくなる。

ルーに小麦粉は使わず、パウダースパイス15種類とホールスパイス9種類、合わせて24種類を使用。ベースの玉ねぎは、焦がさないように気を配りながら、黒に近い色になるまでじっくりと火を入れるそうです。北インドのカレーをベースに、日本のお米に合うように仕上げている。この甘みとスパイスのバランスが、ご飯のおいしさも引き立ててくれます。

そして、主役の手羽元がとても軟らかい。先割れスプーンを入れるだけで、身がするりと骨からほぐれていきます。ほぐしたチキンをルーやご飯と一緒にすくうと、鶏の旨みをより身近に感じられる。骨付きでも食べやすく、この食べ方そのものが楽しいんです。

トマトや香草を加えると一皿の楽しみが広がる

卓上の味変アイテム

まずは何も加えずに、カレーそのものを味わってほしい。そのうえで試したいのが、卓上に用意されたトマトピューレ、パクチーと豆苗、青唐辛子です。

トマトを加えると、酸味が入って口当たりが少しマイルドに。そこへパクチーと豆苗を合わせると、爽やかな香りがふわっと立ちます。さらに青唐辛子を少し加えれば、辛さと青々しい香りが重なって、また違う味わいになる。一口ずつ確かめながら、好みの加減を探していくのがいいですね。

僕は、この味変まで含めて一皿なのだと思います。もとのカレーに玉ねぎのコクと鶏の旨みがあるから、酸味や香りを足したときの変化がおもしろい。次はどれを、どのくらい加えようか。そんなふうに食べ進めていると、メニューが一品であることを忘れてしまいます。

次もこのカレーを食べに小倉へ

ご飯の量を選べるうえに、ルーを追加できるのもうれしいところ。小倉駅に近く、ランチで立ち寄りやすい。こういうお店を一軒知っていると、小倉で何を食べようかと考える時間も楽しみになります。

店名から、北九州出身のリリー・フランキーさんを思い浮かべた人もいるかもしれません。オープン時には、ご本人から花が届いたそう。店頭の看板にも遊び心があって、カレーを待つ間や帰り際に、そんなお店の表情に触れられるのもいいですね。

次に来ても、きっと注文するのは同じ骨付きチキンカリー。それでも、あの玉ねぎの甘みや軟らかなチキンをまた食べたいし、味変もあれこれ試したくなる。僕にとって「カリー フランキー軒」は、そんな一軒になりました。小倉を訪れたら、ぜひこの細い階段を上がってみてください。

教えてくれた人

浜崎龍

グルメメディア「TERIYAKI」や国内最大規模のグルメオンラインサロン「TERIYAKI美食倶楽部」の運営を行う、テリヤキ株式会社の代表を務める。大学生時代から幅広く食べ歩きを行い、ラーメンから高級フレンチまで年間1,500軒以上も飲食店を巡り歩く。ジャンル問わず、日頃全国の「おいしい」を求めており、北海道の端から沖縄、はたまた世界中まで飛び回る。レストランとのイベント企画も手がけ、飲食に対する新たな可能性を日夜見いだす。メディア掲載、マガジンハウス「Hanako」など。

文:浜崎龍、食べログマガジン編集部