思わずはしごしたくなる阿佐谷のバルとそば

和牛やジビエをカジュアルに

中央線沿線の中でも、昔からおいしいお店が揃う阿佐谷。そのスターロード商店街に面白いお店が2軒できました。

まずは2月1日オープンの「六燗(ろっかん)」。思わず引き込まれる木枠とガラス窓の外観の、和牛やジビエ、おばんざいとお酒をカジュアルに楽しめるバルです。

店主は長年、焼き肉店で修業してきたというだけあり、ハツのコンフィ、タンのグリル、ハラミのたたきなど肉メニューが充実。仕入れは方南町の有名な精肉店、川島食品から。さらに自店の真空パック器で鮮度を保っています。エゾ鹿の醤油麹焼きをいただきましたが、納得のおいしさでした。ワインも日本酒も120mlでグラス690円~といううれしい値段。天井が高く、気持ちのいい店内で間違いなくお酒が進みます。

honeyP
エゾ鹿の醤油麹焼き   出典:honeyPさん

通いたくなる小粋なそば店

そしてすぐ近所に2月3日にオープンしたのが「SOBA」。老舗おでん屋「米久」があった場所の近くで月~金の営業です。ちなみに土日は近所の「バル和」が「三代目 米久」として営業しています。

SOBAの店主は、戸越銀座で「炭火ホルモン焼のネバーランド」を経営していた澤田泰広さん。京都の進化系立ち食いそばとして有名な「suba」、明治神宮前の名店「玉笑」でも学んでいるだけに、メニューは極めて魅力的。前店の焼肉のタレで焼き、出汁で煮込んだ「牛焼き煮」はこちらならではで、抜群の酒肴です。「もりそば」にはそば本来の味も楽しんでほしいと、つけ汁だけでなく、オリジナルの「水塩」も。冷たいそばは玉笑、温そばはsubaのエッセンスが盛り込まれていて、しかも季節のそばはほぼ2週間で変わるとのこと。これは通わねばなりません。

「六燗」と「SOBA」、2軒はしごもぜひ。

蓼喰人
もりそば   出典:蓼喰人さん

豪華な時間を楽しめる個室炉端焼きと、オールインクルーシブのジビエ日本料理店

コースは4時間、その価値がある

2月25日、いかにも西麻布な、贅沢な空間が誕生しました。炉端焼き「徒然」です。1日2組2室の紹介制レストラン。高級感が漂うシンプルな部屋に入ると、囲炉裏を中心にした円卓とソファーが。そして「リストランテASO」のスーシェフなどを務めた亀田智広シェフが、炭火を操りながら目の前で料理を仕上げてくれる、ザ・シェフズテーブルです。

おいしい小鉢とお酒をいただきながら、但馬牛の最高峰である但馬玄(たじまぐろ)の塊が目の前でゆっくりと焼きあがるのを見るのは至福。目鯛の串焼きや野菜の蒸籠ももちろん囲炉裏で。コースは締めの釜焚きご飯まで約4時間かかりますが、それもまた贅沢で、東京の真ん中でガストロノミーツーリズムを体験したかのような満足感に浸れます。

囲炉裏を眺めながら
囲炉裏を眺めながら   写真:お店から

人気銘柄の日本酒が飲み放題

日本酒好きにはたまらないのが、2月5日にオープンした「(カスガイ)四谷三丁目」です。カウンター8席のみの日本料理店なのですが、コースは7,700円と12,000円。どちらも今年で創業175年という、四谷の酒店「鈴傳」から仕入れた「紀土」「菊姫」「伯楽星」などの人気銘柄が飲み放題。前職はそれぞれ「荒木町 きんつぎ」と虎ノ門横丁の「エレゾゲート」という、1995年生まれの若い男性2人がカウンターに立っています。

料理はうれしくなるような酒肴が並ぶ前菜盛り合わせや、ジビエのステーキを堪能でき、12,000円のコースならジビエの握りも。ゆっくりと杯を傾けたくなる一軒です。

みるみんく
小田原 鹿肉の握り   出典:みるみんくさん

コメダならではのおにぎり店と野菜たっぷりの味噌汁専門店

あのコメダがおにぎりに進出

ブームの元祖ともいえる大塚「おにぎりぼんご」がファミリーマートとコラボするなど、おにぎり業態は拡大を続けています。そして2月22日、なんとあのコメダ珈琲店でおなじみの株式会社コメダホールディングスが、新宿センタービル地下1階に「おむすび米屋の太郎 新宿センタービル店」をオープンさせました。

名古屋発祥のお店なので、ひつまぶしの「うなぎむすび」、名古屋コーチンを使った「とり天むす」、さらには赤みその「味噌ヒレカツむすび」など特徴ある具が並びます。うなぎむすびはおにぎり全体にタレの味が染み込み、ヒレカツは330円とは思えない具の巨大さ。注文が入ってから握るので少し時間はかかりますが、後発だけに研究し尽くしたおいしさがありました。続けざまに埼玉県の川口と大宮にもオープンしており、早くも多店舗展開が進んでいるようです。

天むす、とり天むす
天むす、とり天むす   写真:お店から

味噌汁の専門店も

おにぎりといえばお味噌汁。2月3日、恵比寿には「恵比寿みそ汁(仮)」がオープンしています。大ぶりなお椀には巨大なつみれをセンターに、季節の野菜がたっぷり。みそ汁自体は控えめな味ですが、素材ごとに丁寧に仕込まれた野菜がおいしく、まさに食べる味噌汁。ご飯やおかずとのセットもありますが、単体でも満腹感は得られます。

ちなみに店名の(仮)は、今後よりいいものを公募予定だからとのこと。

ゆっきょし
みそ汁(肉団子)、ご飯、蒸し鶏のセット   出典:ゆっきょしさん

文・撮影/大木淳夫

※価格は税込です

教えてくれた人

大木淳夫
「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。最新刊「東京最高のレストラン2025」が発売中。

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https://www.instagram.com/tabelog/