シラカチ 日本料理
“元気になるホテル”がコンセプトの「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」。同ホテルには、食事をするために泊まる客がいるという話を聞いて出掛けた。
さらにこちらの日本料理「シラカチ 日本料理」では、琉球和会席がいただけるらしい。これはなんとしても食べずにはいられない。ちなみに「シラカチ」とは、瀬良垣の琉球語の呼び方である。
海に沈む夕日を見ながら、琉球和会席のコース「TEEDA」がスタートした。前菜は「長命草と苦菜、柑橘の白和え」、豚肩ロースや魚のすり身を合わせて蒸しあげた、優しい味の「シシかまぼこ」「和三盆カステラ玉子」、イカを飾り切りにした「花烏賊」が色鮮やかに盛られ食欲を刺激する。
豚肉が胡麻の甘みと出会う、豚ロースと黒胡麻ペーストの蒸し料理「ミヌダル」。寸前にゆでて、繊細な甘みが弾ける「沖縄産車海老とキャビア」。マグロを芯にして昆布巻きにした「クーブマチ」といった料理が並ぶ。
沖縄料理は味が濃いという印象を持っている人も多いと思うが、どの料理も味付けが淡い。日本料理の本質「大味必淡」の精神に満ちている。
コースの中でも汁椀「いなむどぅち風」が素晴らしかった。本来は豚肉や野菜などを短冊に切って、砂糖で甘く味付けした汁料理だが、砂糖の代わりに西京味噌の甘みを使い、久米島の白味噌と合わせられている。優しい甘さが心を撫でる。
郷土伝統料理は次世代に伝えなくてはいけない。だが料理を後世に残そうと思うなら、このように伝統の本質を理解しつつ、顧客のニーズを受け止め、現代の技術や調味料を使って再構築しなくてはいけない。それこそが伝統をつなげていくことになるのではないか。その答えがこの汁椀にあった。
その後の、紅麹の熟れた塩気がフォアグラの脂の香りと牛肉の滋味を盛り立てる「沖縄産黒毛和牛とフォアグラの紅麹風味焼き」、イラブの出汁が滋味深い「てびちとイラブの玉地蒸し」など、郷土料理が洗練されて生まれ変わった味わいを存分に堪能した。
しかも、泡盛マイスターである嘉数順料理長がすすめる泡盛を飲みながら楽しめるのである。こりゃたまらん。
〆の食事は、沖縄パインを食べさせながら育てたスッポンを使った丸雑炊であった。すっぽんの臭みはまったくなく、素直な味わいで、特有の深いうまみが米と抱き合ってため息が出るようなうまさをもたらす。まさに、元気になるホテルにふさわしい料理である。
沈みゆく夕日を眺めながらいただく新琉球料理の幸せをたっぷりと楽しんだ。