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旅の余韻としてパンをテイクアウト!ひのさんが立ち寄るのはこの2軒
パンのためなら全国津々浦々、どこへでも出かけて行く。そんなパンラバーたちを夢中にさせる、パン激戦区のひとつが鎌倉。舌の肥えた大人が集まる鎌倉は、新鮮な魚介類や鎌倉野菜など、関東近郊では指折りの食材の宝庫としても知られる場所。だからこそ、日々の食卓を彩るパンにも逸品が求められるのかも。
そんな、数多ある鎌倉の名店のなかで、鎌倉ならではのパンを楽しめるところとは? 「食べログ パン 百名店 2018」の特集でも、その幅広い知識とパン愛を語ってくれた、〈こんがりパンだパンクラブ〉のひのようこさんをナビゲーターに迎え、厳選の5軒をお届け。第2回は「テイクアウト編」として、鎌倉を訪れたなら立ち寄り必至の2軒をご紹介。
>心地よくておいしい。鎌倉パンをのんびり楽しむ。〈イートイン編〉はこちら
バゲットとバインミーで大ブレイク。地元の美味を詰め込んだパン
1. mbs 46.7
小さなパンケースに所狭しと並べられたパンを窓越しに購入するスタイルで、2011年のオープン以来、全国のパンラバーを虜にしている「mbs 46.7」。ひのさんも「おしゃれな雰囲気なのですが、パン自体のおいしさでパンクラブの会員さんたちを魅了しています。ハード系のパンは全部おすすめ!」と太鼓判を押す。
この店を有名にした「バイン★ミー」をはじめ、サンドイッチやおかずパンなどに使われている食材にも妥協なし。季節の美味しさを詰め込んだサンドイッチは、鎌倉散歩のお供にも。ワインに合うパンも多いのも、グルメの胃袋を掴んで離さない理由のひとつかもしれない。
このパンを指名買い!
「普段使いできる、ご飯みたいに食べ飽きないパンが理想」という店主の岸本朗子さん。人気のバゲットをさらに美味しく食べられるサンドイッチは、どれも一度食べたら癖になる味。
鎌倉に来たら一度は食べたい、店を代表する人気者
「バイン★ミー」550円
最近では専門店ができるほど人気のバインミー。小さく作った「ナチュラルバゲット」の間に挟んだ焼豚は、近所の老舗精肉店「北村牛肉店」の焼豚を、このバインミー用に特別に部位を選んで提供してもらっているものだそう。レバーペーストは自家製。「バインミーのバゲットって、いわゆる“引きがある”(噛み切ろうとするとムギュッと伸びてしまう)ものだと、食べる時に具が出てきてしまったりして困るんですよね。この店のバゲットはハードすぎず、全体のバランスが絶妙。パクチーがたっぷり入っているのもいいんです」
旬の時期の土日だけ食べられる、フレッシュ感満点のサバサンド
「サバサンド・ローストレモン」700円
ナチュラルバケットとともに人気のパン「リュスティック」に、材木座の魚屋さんから仕入れる新鮮な近海物のサバを一夜干ししてから、南部鉄器の鍋でレモンローストしたものをサンド。プリプリの食感とレモンの香りがたまらない、究極のサバサンドです。「バケットより薄皮でもっちりとした生地のリュスティックに、ちょうどいい具合に脂の乗乗ったサバが相性抜群。サバサンドは本場トルコでも食べましたが、これはかなりの贅沢バージョンと言えそう。このサバサンドひとつで完成されたお料理だな、と思える仕上がりです」とひのさんも絶賛。
普段の食卓を豊かにする、バゲットをはじめとしたハード系パン
(奥)「ナチュラルバゲット」280円、(手前)「フーガス」380円
牛乳とヨーグルトから作る酵母とライ麦の酵母という2つの酵母を使って作る「ナチュラルバゲット」は、mbs 46.7の一番人気の商品。こっくりした味が特徴で、そのままでも、オリーブオイルをつけて食べても味わい深いバゲット。一方、「ナチュラルバゲット」の生地にチェダーチーズとゴーダチーズ、それにハムをのせた「フーガス」は、朝ごはん用に買っていく人が多いのだとか。「バリバリとした感じのバゲットではないので、家でサンドイッチを作るのにはぴったり。フーガスも生地がモチっとしていて、朝から鎌倉を巡る時などにもおすすめです」。岸本さんは「翌日食べる時はアルミホイルに包んでリベイクして。風味が戻りますよ」とアドバイスしてくれた。
※現在の定休日は、月曜・火曜(不定休) 祝日営業
路地裏の民家で買える、初代のレシピを受け継ぐマフィンと世界のパン
2. エリぱんサンドイッチ@米町マフィンズ
鎌倉駅東口から横須賀線に沿って逗子方面に歩いて5分。大通りから少し入った住宅街の中に「エリぱんサンドイッチ@米町マフィンズ」という、一風変わった名前の店がひっそり佇む。実はこの店、3年間の期間限定ショップ。「米町マフィンズ」の2代目店主の留守を、フランスのアルザス地方でのパン修業の経験をもつ有我エリさんが預かっている。店内にはマフィンとパンが一緒に並んだことで、新旧の客が交じりそれがまた楽しいのだとか。
「エリさんは勉強熱心な方で、今なおパン屋さん巡りを続けていらっしゃるなど、美味しいパン研究に余念がありません。お店と同じ場所でパン教室も開かれているので、パン作りに興味がある方はぜひホームページなどをチェックしてみて」とひのさん。自称“パンオタク”だからこそ作れる、多彩なパンが揃うのも魅力的。注目株は、ベトナム現地で学んだバインミー。席数は限られているが、イートインもOK。
このパンを指名買い!
毎朝食べたいカンパーニュなどの食事パンから、おやつにぴったりの甘いパンまで、シーンに合わせて選べるラインナップがうれしい。
ほろりと優しい、懐かしさが漂う“おやつの友”
「ホワイトチョコ入りレモンマフィン」250円
定番の「プレーンマフィン」(180円)をはじめ、常時数種類が並ぶマフィン。生地ははちみつをたっぷり使った初代のレシピに忠実に作っている。「ほろっとした食感が美味しい。レモンとホワイトチョコの組み合わせも爽やかで、こういう部分にはシェフのセンスが光っています。フロスティングが主張するアメリカンタイプのマフィンと違い、優しい甘さ。大きすぎないのもいいですね。お土産にもぴったりです」
クリームチーズ入りの生地にピザ用チーズをトッピングした「Wチーズマフィン」240円、自家製梅ジャムが入った季節限定の「梅マフィン」220円
北欧に思いを馳せながら作った、エリぱん流シナモンロール
「シナモンロール」250円
しっとり、ふわふわの仕上がりのシナモンロール。カルダモンが入っている、北欧タイプの仕上がりがこの店ならでは。「北欧風のシナモンロールはどこでも食べられるというものではありませんが、食感が軽く、甘さもくどくなくて、とっても食べやすいんです。シナモンとカルダモンの香りはコーヒーとの相性も抜群です」とひのさん。鎌倉にはコーヒーの自家焙煎珈琲豆の店も多いので、両方買って帰ればちょっと贅沢なカフェタイムが楽しめそう。
季節の酵母を使ったカンパーニュ
「カンパーニュ」ホール 900円、ハーフ 450円
自家製天然酵母を使ったカンパーニュは、中は意外にふんわりしているので、ハード系パンが苦手な人にも試して欲しいメニュー。酵母は季節によって変わる。取材時に使用していたのは梅酵母。ひのさんも「果物から自分で酵母をおこしているのが素敵。先日いただいた苺の酵母のカンパーニュも風味を感じられました」と絶賛。梅酵母は7月いっぱいくらいまで。「ぶどうの季節になったら巨峰酵母とかでも作ってみたい」と、有我さん。季節ごとに訪れる楽しみが増えそうだ。
※パン教室については、お店のFacebook を参照
PROFILE
ひの・ようこ
〈こんがりパンだパンクラブ〉主宰。〈ベッカライ徳多朗〉
写真:安彦幸枝
取材・文:山下紫陽