〈おいしい歴史を訪ねて〉

歴史があるところには、城跡や建造物や信仰への思いなど人が集まり生活した痕跡が数多くある。訪れた土地の、史跡・酒蔵・陶芸・食を通して、その土地の歴史を感じる。そんな歴史の偶然(必然?)から生まれた美味が交差する場所を、気鋭のフォトグラファー小平尚典が切り取り、届ける。モットーは、「歴史あるところに、おいしいものあり」。

第5回 伊賀の「寿き焼」

伊賀国といえば忍者というけど(すき焼きという人もいる)、戦国時代に大活躍した忍者。忍者の基本は情報収集と処理である。つまり「他国より当国へ入り候においては、惣国一味同心にて防がるべく候事」で、他国より伊賀国へ侵略があった場合国が一体となってこれを防ぐようにするという意味。ここは武家日本のミステリアスな場所だ。

 

まずは、食指が動く写真を。伊賀牛のすき焼きは実にうまかった。

鎌倉時代から伊賀牛があったと聞く。

伊賀街道が通る伊賀国は、伊勢・近江・山城などの国々に囲まれた山国で、 伊賀盆地(上野盆地の別名)に入るためには、どの道を通っても険しい山を越えなければならなかったと同時に、 伊賀国を通らなければ相互の連絡に不自由するという交通の要衝であった。つまり近畿地方において大切なジャンクションだったのです。

初瀬街道は、「江戸時代に大阪や京都から伊勢参りに通った道である」そう。
散歩していたら魔除け(鬼除け)を見つけた。平安時代には類似の習慣が記録に残っており、柊(ひいらぎ)の葉の縁にあるトゲトゲが鬼の目を刺し、また鰯の臭いが鬼を遠ざけるため、鬼が家に入って来られない。鰯を焼いて(炒めて)柊に刺して冬を追い払い春を招く、という説もあるそうだ。

伊賀肉の旨みを全方位で味わえる「寿き焼」!

金谷

さて、お待ちかね。今回のおいしいものは「寿き焼(すき焼き)」。ここのすき焼きは実に優雅でうまい!!
名物の「寿き焼」「バター焼」をはじめ、「しゃぶしゃぶ」「炭焼」「肉刺し」など料理の種類が豊富なのがうれしい。
「寿き焼」いぶし銀をまとったような最高級のすき焼き肉を使用。伊賀肉独特の風味、素材の良さをそのまま生かした炊き方で、とろけるような風味・旨みを醸し出す。
今や松阪、神戸肉に勝るとも劣らぬ「伊賀肉」。この伊賀肉は高度な肥育技術と清浄な空気と水、豊かな牧草など、 伊賀盆地の恵まれた自然環境に育まれながら歳月と人手をかけ、良質なものとなる。
とろけるようなまろやかさが口いっぱいに広がる特有の風味は最高で、野菜の旨みと融合するとさらに格別のおいしさ。
旅はまだまだ続く。

写真・文:小平尚典