〈おいしい歴史を訪ねて〉

歴史があるところには、城跡や建造物や信仰への思いなど人が集まり生活した痕跡が数多くある。訪れた土地の、史跡・酒蔵・陶芸・食を通して、その土地の歴史を感じる。そんな歴史の偶然(必然?)から生まれた美味が交差する場所を、気鋭のフォトグラファー小平尚典が切り取り、届ける。モットーは、「歴史あるところに、おいしいものあり」。

第20回 福井駅からローカル線で蟹探しの旅

福井県・三国町を訪れた。三国を代表する絶景といえば、東尋坊(とうじんぼう)だ。東尋坊の海岸線は波の浸食によって荒々しくカットされた断崖で、落ちたら助からないという。そんな見るからに怖い絶壁が続く日本的海岸線のなかでも名高い場所。

なんでも「輝石安山岩の柱状節理」は、地質学的にも珍しい奇岩で、世界にもこれだけのスケールのものは、スカンディナヴィア半島のノルウェーの西海岸、朝鮮半島の金剛山、そして東尋坊の3カ所にしかないそうだ。

えちぜん鉄道三国芦原線 三国港行

三国芦原線(みくにあわらせん)は、福井駅から三国港までを走るローカルな路線で、途中に温泉で有名なあわら湯のまち駅がある。芦原温泉は福井県屈指の温泉街として「関西の奥座敷」と呼ばれ、永平寺の精進落としの湯としても昔から多くの文人に愛された。水上勉や田山花袋が通ったともされている。

三国港駅のグルメ、蟹を買う、食べる

田島魚問屋

元々三国港は、青森あたりからの北前船の大切な寄港地で大変な盛況ぶりだったため北からいろんな食材と文化が運ばれてきた歴史がある。三毛猫も連れてきたという話である。暖流と寒流がぶつかり蟹の好物のプランクトンがふんだんにあったから蟹も住みついてしまったのだろう。蟹を無言で食べるとそのおいしさから頭が真っ白になり全てを忘れさせてくれるかのよう。これぞ、おいしいリフレッシュ(笑)。

たまには東京の家族に蟹でも送ってやろうと訪れたのが「田島魚問屋」。なんでも宮内庁ご用達らしい。蟹を選んでいたら、地元の知人が足が一本ぐらいもげているのないのかなあと店員に聞いた。すると、「この蟹たちはちょっと訳ありでお安くしておきますよ」との返し。全く味は変わりないのでこれはなかなかよいことを教わった。なお、蟹は一度にたくさん茹でたほうがおいしいらしい。いろんな成分がたくさん出て味がよくなるからだそうだ。

自分への褒美として、うにといくら丼も忘れずに

お食事処 田島

蟹を買ったら隣のレストランでいくら&うに丼。リーズナブルな値段でビールを飲みながら至福の時である。北海道はうにもいくらも山盛り丼だけど、我々にはこの程度の盛り付けが助かる。

旅の〆ごはんは、福井を代表するラーメン

8番らーめん 福井駅店

1967年創業。加賀市国道8号線沿いの田んぼの真ん中で、掘っ建て小屋同然の粗末な店構えのラーメン店からはじまった。福井県民で知らない人はモグリだ。炒めた野菜をたっぷりのせたこの店のラーメンの評判は最高で健康にもよい気がする。

 

店の名前は、国道8号線にちなんで「8番らーめん」と名付けられた。この野菜らーめんの調理は、全国から取り寄せ徹底管理されたキャベツ、人参、玉葱、もやしなど「新鮮野菜」と「強い火力」の出合いから始まる。今や石川・岡山・長野・愛知・富山県、それからなんとタイに香港までこの正義の味方エイトマンラーメンは活躍している。

新鮮でおいしい蟹で満腹だったが、ここでもラーメンは別腹なようだ。

 

撮影・文:小平尚典