シンプルだけど別格にうまい! 熟練の技が光るパエリアとは?
では“チャンピオンのパエリア”は一体、ほかとは何が違うのか。結城シェフにたずねると「大前提として米のひと粒ひと粒にスープを最大限に閉じ込めた料理であること」と話す。
そもそもパエリアとは、スペインのバレンシア地方で長く愛される郷土料理のひとつ。日本でスペイン料理の人気が高まるにつれ“パエリア風”の米料理を出す店が増えたことも、結城シェフの「正当に文化を継承したいと願う心」に火をつけた。歴史を学び、文化を肌で感じ、現地の食文化に敬意を持つこと。本物のパエリアとは、材料や工程だけではなく食文化の根源を知ること。結城シェフはその“根っこ”の部分を一番大切とした上で「バレンシアの大会では全チームが同じパエリアを作ります。薪起こしから始めて2時間半以内に丸の状態のうさぎや鶏をさばき、完成まで持っていく。野菜はトマトや白いんげん豆など。僕の店では魚介のパエリアもお出ししますが、バレンシアの大会では海のものを使うことはありません。大きなポイントのひとつは鍋底全体にソカラという“おこげ”をつくること。これはコンクールの審査基準にも含まれているほど大切な要素です」と語ってくれた。
「anocado restaurante+」で人気の魚介のパエリアは、具材を(オリーブオイルで)炒め、真鯛や香味野菜から作るカルド(出汁)にサフランを加えて煮込んだスープにお米を加え、一粒一粒にスープを閉じ込めるように炊き上げる。店中に食欲を刺激する匂いが充満し、出来上がりを待つまでの時間もワインを飲みながら胸が高鳴る。
さまざまな王道料理が楽しめるコースで“スペインの風”を全身で体感!
「anocado restaurante+」で供されるのはコースのみ。6品前後が登場する季節のパエリアコースは“主役”以外のお楽しみも。常連客にファンが多いスパニッシュオムレツや旬の魚介料理、火入れの技にうなる肉料理など、結城シェフの細やかな仕事と愛情があふれる逸品にお腹も心も満たされる。
「穴子といえば春ですが、この時期もおいしい」と結城シェフ。衣がカリッと香ばしいフリットは柑橘の爽やかな酸味が利いたソースとの相性も抜群!
いかに食材のおいしさを引き出すかという結城シェフの創意は肉料理にも。黒毛和牛のランプはハツラツとしたうまみが凝縮。ブルーチーズのソースに加えるマッシュルームはあらゆる食感を楽しませるため、3種に切り分けるなど“おいしさの追求”が細部に感じられる。
ここ数年、日本では全国的に新たなスペイン料理ブームが巻き起こっており、その注目度は高まるばかり。気軽なバルや予約困難な高級店などシーンによって使い分けができるほど市民権を得たスペイン料理だが、何度でも帰ってきたくなるのは、パエリアの名手が真心を込めて腕を振るう“あの角”の店なのかもしれない。
※価格は税込