グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、全国の“うまい店”に精通する山本憲資さんに、幻の店とうわさされる鉄板焼き店を教えてもらった。

教えてくれる人

山本憲資
1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、Sumallyを起業、2023年10月末に代表を退任し顧問に就任。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

仁王門通にあるレトロな一軒

京阪三条駅ほど近く。仁王門通にひときわ賑わう、レトロな雰囲気が漂う一軒がある。独特の風情に、旅行中の日本人や外国人観光客も「ここはなんだ?」といったん足を止め、中を覗き込むことも。ここは鉄板焼き屋「ニューオーモン」だ。

古い民家に集まる人々

店主は前田隆汎(たかひろ)さん。近くで骨董屋「アンティークベル」、飲食店「にこみ鈴や」を経営している人物だ。2020年7月に「ニューオーモン」を開店し、その理由を「友達が鉄板を貸してくれることになり『じゃりン子チエ』みたいな店をやってみようと思って」と話す。ちなみに、店名については「壁の絵と一緒に描かれていた『ニューオーモン』が気に入って、そのまま店名にしました」とのこと。

店内に描かれた絵
店主の前田隆汎さん

まず営業スタイルがユニークだ。営業日はたいてい週に2日。17時に開店し、18時半にはラストオーダーとなる。19時閉店の2時間のみの営業だ。「子供をお風呂に入れないとあかんから」と前田さん。営業日はインスタで告知され、開店と同時に満席になることも多く、「今日は入れてラッキーでした」と話す東京からの人も。“この空間に居られる”ことがもうレアなのだ。

鉄板の周りで立ち飲み
 

山本さん

京都で週2の夕方2時間しか営業しない幻の店があると聞いて、興味をもって訪問しました。

開店してからの空気感も独特。スタンディングで鉄板の周りを陣取る人、丸いちゃぶ台が置かれた小上がりに座る人……みんなが思い思いの場所で、自らビールやワインを取って開け、飲み始める。そろそろ、といった感になった時に、前田さんが鉄板に向かう。特にメニューはなく、「その日の感じで作ってます。できたらやったことのないものをやりたい」と。定番のホルモン焼き以外は新作メニュー目白押しの日も。客はみんな飲みながら、鉄板前でコテを操る前田さんの動きに注目している。料理ができた時の、「これ食べたい人?」との前田さんの言葉にお客さんが手を挙げ、各人の小皿に料理が分けられていく。

焼きあがったら、料理は欲しい人へ分配される
 

山本さん

大人で鉄板を囲んで夕方から飲みながら楽しめる、もう最高としか言いようがありません。