【第3週のカレーとスパイス】この牛すじカレーを待っていた! 流浪の間借りカレー店が西新宿で待望のリスタート「ラナンクルス」

歌舞伎町にあるホストクラブ的バーの間借りカレー店としてスタートし話題となった「ラナンクルス」。(その際の記事をリンクさせておきますので気になる方はご覧ください↓)

その後同じく歌舞伎町の星座館というカオス感あるビル内の会員制バーに移転し、こちらも話題となりました。場所の話題性のみならず名店で手ほどきを受けた料理のクオリティの高さもあり、メディア露出も続く人気店となりましたが、独立準備のために一時閉店となりました。

新たな場所が決まったにもかかわらず諸事情で振り出しに戻るということを繰り返し、しばらくお休みしていたのですが、2024年3月12日から今度は西新宿の地に移転し、独立までの期間限定の間借りカレー店として再スタートを切りました。

新天地は新宿常圓寺の裏手ビルの2F

期間限定と言ってもすぐに終了するわけではなく、しばらくここで営業するとのこと。場所は新宿常圓寺の裏手「スナックべにばな」の隣の水色の扉の奥にある日本酒バーの間借りで、新宿駅からも徒歩圏内です。

水色のドアが目印

メニューは週替わり。「本日のカレープレート」1,800円をあいがけ(+300円)でいただきました。

「本日のカレープレート」

この日のメインのカレーは「あさり新ワカメミントカレー」と「牛すじ葉にんにくカレー」。「出汁パリップ」(スリランカの豆カレーをアレンジしたもの)もついてきます。これに副菜がたっぷりと。詳細はメニュー写真をご覧いただければわかるのですが、とにかくたくさんの野菜とフルーツを使っているのがラナンクルスらしさ。

他ではなかなか出合えないビジュアルも楽しい

修業先のお店に加え、イベントなどでコラボしてきた「カレー独歩ちゃん」や「堕天使かっきー」などの影響もうかがえる独創的なスタイルであり、どのお店にも共通する「食べていて疲れないおいしさ」と「意外性ある食材の調和」を感じられるのが素晴らしいです。

旨みを引き立て合う、牛すじと葉ニンニクのカレー

僕はラナンクルスの牛すじカレーが大好きなのですが、食べてみるとしばらく休んでいたブランクを感じさせないクオリティであり、思わず「これを待ってました!」と快哉を叫びました。

あさり+新ワカメ+ミントという想像力をくすぐる組み合わせ

単体でそれぞれおいしく、混ぜても調和する味。ワンプレートだからこその楽しさがあります。

食後はアイスティーですっきり

食後のプチドリンクは埼玉の名店「紅茶屋さん」から仕入れたヌワラエリヤをアイスで。すっきりと香り高く、情報量の多いカレーを穏やかにリセットしてくれる味でした。

ファンの多いお店の復活ということもあり、土日祝は並びも出るので予約優先とのこと。間借りということもあり随時スタイルは変わっていく可能性があるので、詳細はお店のSNSをご覧ください。

先述したように今も独立に向けて準備を続けているそうです。しばらくはここで営業するとのことですが、具体的な独立のタイミングも見据えている様子。今のうちにこの地でラナンクルスの味を楽しんでおくのが良いでしょう。

【第4週のカレーとスパイス】目指すは“箸でも食べやすい自由なインド料理”! 有名店出身者同士がタッグを組む注目の新店が飯田橋に誕生「すぱいし家 飯田橋店」

ここのところカレー関係の新店舗、注目店が増えてきている飯田橋ですが、また新たに注目すべき期待の新店舗ができました。2024年3月19日に開店した「すぱいし家 飯田橋店」です。

2024年3月19日にオープンした「すぱいし家 飯田橋店」

こちらはインド・パキスタン料理のチェーン店で有名な「シディーク」に長年勤め、本部長も務めた日本人と、インドはバンガロールの「シェラトン」で10年、日本でも「ボルツ・タージマハール」(現在は閉店)をはじめさまざまなお店で25年もの間腕を振るってきたベテランインド人シェフのタッグという、とてつもない経歴のお店なのです。

壁のタイルとイラストのデザインが可愛らしい雰囲気の店内

僕自身は何も知らずに食べに行ったのですが、注文した料理のすべてがおいしいことに驚き、お話を聞いてみたら上記の通りで納得したというわけでした。

取材日のメニュー

ランチはわかりやすくカレーとナンのセットやビリヤニ。ディナーはおつまみとして食べられるインド料理と、独自にアレンジしたスパイス料理の数々を食べることができます。

「ゴマとコリアンダーのポテサラ」

まずは「ゴマとコリアンダーのポテサラ」630円から。シェフ自身が大好きな食材だというゴマを使ったサラダ。シンプルでありながらコリアンダーの香りが良く、ポテトの火入れも絶妙で、いきなり腕の良さを感じました。

「特製やわらかポークのグリル煮」

続いてお店のおすすめメニューである「特製やわらかポークのグリル煮」850円を。しっかりと表面を焼いてからじっくり煮込み、コリアンダーなどのスパイスが弾けるインド風角煮とでも呼べそうな一品。

「牛カルビのインディアングリル」

「牛カルビのインディアングリル」740円はタンドリーチキンの味付けで牛カルビを焼いたもの。これもお酒が進む味であり、ご飯と一緒に食べても満足できるおかずでした。豚にしろ牛にしろインドではなかなか食べられない食材を、しっかりとインドの味付けで出してくれるお店は他になかなかありません。このあたりは長年インド料理に携わってきた日本人と、長年日本で腕を振るってきたインド人シェフのタッグならでは。

「ボンベイチキンビリヤニ」と「別皿ミニカレー鯖」

〆に「ボンベイチキンビリヤニ」1,380円にトッピングで「別皿ミニカレー鯖」480円と「マサラたまご」200円もつけて。

ある程度火を入れてから、最終的にバナナリーフで包んでさらに火を入れて仕上げるという手間のかかるビリヤニは、だからこその香りの良さを感じます。

ライタをかけて味変を楽しむ

ライタもつくのでそれをかけて食べてみたり、好きな別皿カレーを選んでかけてみたりするのも日本だからこそできる楽しみ方。

「もっとインド料理は自由で良いと思うんです」とは、すぱいし家オーナー田渕さんの言葉ですが、まさにその通り。

「ラムコーク」

ビリヤニにはコーラだろうということでオールドモンクの「ラムコーク」580円を合わせていただきましたが、期待通り最高の相性。

タイ料理など他のアジア料理に比べてインド料理店は夜の時間帯が弱いといわれていますが、お酒とインド料理の相性の良さを知らない人がまだまだ多いからでしょう。田渕さんは「きっと箸で食べることができるか、できないかの差だと思うんです。箸で食べることができる他のアジア料理はお酒と一緒に楽しむ方も多いですが、インド料理はそうではない。だからうちでは箸で食べることができる自由なインド料理を目指して、お酒との相性の良さをもっと多くの方に知ってほしいです」と語ってくれました。

確かに一理あるなと感じます。箸で軽く食べられるインド料理。今回いただいた豚の料理や牛の料理ではまさにそれを感じます。

時にオーセンティックに、時に自由に。変幻自在のインド料理を楽しませてくれる期待の新店舗。インド料理好きはもちろん、お酒好きな方も是非行ってみてください。

※価格はすべて税込です。

撮影:カレーおじさん

文:カレーおじさん、食べログマガジン編集部