【映画のあの味が食べたい!】

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

アメリカンダイナーで映画気分に浸りたい

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』より (C)Block 2 Pictures 2006

 

最初のアメリカ旅行で、必ず行きたかったところのひとつが“ダイナー”です。

 

ダイナーとは、食堂のようなもので、朝食から夕食、カフェタイムまでオープンしている、サニーサイドアップ(目玉焼き)やパンケーキ、ハンバーガー、サラダ、ステーキ、パイやサンデーなどのポピュラーなアメリカ料理を出す、いわば食堂のようなもの。

 

街中にもあるし、街道などにもあるドライブ・インのような存在でもあります。おそらく、日本のファミレスは、アメリカのダイナーを原型にしているのではないでしょうか。

 

そんな庶民的なダイナーになぜ惹かれたのかというと、アメリカ映画を見ていると、このダイナーがおそろしいほど頻繁に登場するからです。

 

ジョージ・ルーカスの出世作『アメリカン・グラフィティ』(74年)など青春映画の名作を始め、恋愛もの、ファミリーもの、ヒューマンドラマなど、アメリカの日常を舞台とする映画にはものすごく高い確率でダイナーが登場するのです。

 

実際に、“ダイナー”が印象的に登場する名画はたくさんあります。青春映画なら『マイ・プライベート・アイダホ』(91年)、『(500)日のサマー』(10年)、マフィアものなら『グッドフェローズ』(90年)、『パルプ・フィクション』(94年)、去年のヒット映画『ベイビー・ドライバー』(17年)では、ヒロインがダイナーのウェイトレスという設定だっただけに、重要なシーンの舞台ともなります。

 

ダイナーでは、コーヒー1杯から朝食、ディナーまでさまざまなアメリカン料理が登場しますが、なかでも印象的なのは、大きめのサイズのアメリカン・パイです。『ミリオンダラー・ベイビー』(05年)のレモンパイやTVシリーズ『ツイン・ピークス』(90~91年)のチェリーパイなどは、まるで登場人物扱いでダイナーのパイが登場します。

 

マフィア映画のコワモテの男たちがアイスクリームや生クリームを添えたパイを食べているシーンにはいつもほくそ笑んでしまいます。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』より (C)Block 2 Pictures 2006

 

ウォン・カーウァイの『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(08年)は、そんなアメリカ映画におけるダイナーとパイの関係を象徴するような映画です。

主人公は、これが映画初主演のノラ・ジョーンズ演じるエリザベス。

 

恋人の心変わりに心を痛めるエリザベスは、彼のアパートの前にあるダイナーに入り、その店のオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)に最近の彼の様子を聞く。新しい彼女であろう女性と店を訪れたことを聞いて、悲嘆にくれるエリザベスをジェレミーが慰める。

 

1日の終わりに、なぜかホールのまま売れ残ったブルーベリーパイの一切れに、エリザベスは、アイスクリームを添えて食べながら、「まるで自分のようだ」とつぶやきますが、ジェレミーは、「ただ選ばれなかっただけ」と答える。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』より (C)Block 2 Pictures 2006

 

そう、ブルーベリーパイは、他のパイより美味しくないワケではないし、選ばれなかったのはブルーベリーパイに原因があるわけでもない。

 

失恋すると、人は誰も、自分のどこが悪かったのだろう? なぜ愛されなかったのだろう?とマイナス思考に考えがち。でも、恋が上手くいかなかったのは、本当は、そんなことが原因じゃないのかもしれません。ただ、相性が悪かっただけ、“ただ選ばれなかっただけ”。

 

エリザベスは溶けかかったアイスクリームと一緒に食べたブルーベリーパイが本当に美味しいと感じ、納得したのでした。

 

実際に、大きめにカットされた、ブルーベリーパイは、なぜ売れ残ったのだろう?と観ていても感じるくらいにとても美味しそうです。ジュード・ロウが豪快に食べる他のパイももちろん、美味しそうですが。

それから、エリザベスは旅に出ます。旅先からジェレミーに手紙を送り続けますが……。

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』より (C)Block 2 Pictures 2006

 

ウォン・カーウァイは、『花様年華』で知られる上海出身の監督で、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は、彼にとって初めての英語作品です。アメリカ映画で育った彼が、米国進出映画で、ダイナーを舞台にした映画を撮ったのは夢が叶ったということでしょうか。

エーエス クラシックス ダイナー駒沢本店 メニュー一例/出典:ケン犬さん

 

家の近くの行きつけのダイナーで、アップルパイ、チェリーパイ、レモンパイ、チョコレートパイなどお気に入りのパイを食べるのは、映画好きの夢! さらに、ジュード・ロウのようなイケメン・オーナーがいれば尚よしというところですが、こちらはまた夢の夢。

エーエス クラシックス ダイナー駒沢本店 店内/写真:お店より

 

ということで、日本でもアメリカンなダイナー気分を味わえる希少なお店が、「AS CLASSICS DINER(エーエス クラシックス ダイナー)」駒沢本店です。駒沢公園に隣接した店内は、まさに映画に出てきそうな60年代風。

エーエス クラシックス ダイナー駒沢本店 メニュー一例/出典:苺みるく姫さん

 

メニューもアイスクリーム添えのアップルパイなどのホームメイドスイーツを始め、ハンバーガーやサンドイッチ、ミートローフ、スペアリブ、クラムチャウダー、オニオンリング、シェイクやサンデーなどボリュームたっぷりのこれぞアメリカン・フードが並びます。保存料、添加物を使わず、良質な食材でつくる安全な“ジャンクフード”は、恋に悩める女の子も安心して食せます!

エーエス クラシックス ダイナー駒沢本店 エントランス/写真:お店より

 

 

【作品紹介】

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』ジャケット (C)Block 2 Pictures 2006

 

ニューヨーク。失恋したエリザベスは、とあるカフェに出入りするようになる。毎晩ブルーベリー・パイを残して待っていてくれるカフェのオーナー、ジェレミー。優しい彼との会話に、心が慰められるエリザベスだったが、失恋相手が新しい恋人といるところを見てしまい、旅へ出ることを決める。別れた妻への愛を断ち切れず、アルコール中毒になった男と、その元妻。人を信じない若くて美しいギャンブラー。数々の人々と出会いながら、エリザベスはジェレミーの待つニューヨークへ戻りたいと思い始める……

 

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
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発売元:アスミック・エース 販売元:KADOKAWA