【噂の新店】「膳司 水光庵」

三田の名店が東麻布に移転し、リニューアルオープン!

打ち水をした玄関がしっとりと和の風情を誘う

住所非公開で紹介制、港区三田という都心にある店主自宅のマンションの一室で、数々の食通を魅了してきた「膳司 水光庵」。その名店が東麻布に居を移し、新たにオープンしたと聞けば話題を呼ばないわけはない。新しい場所は東京タワーのお膝元にあるビルの1階。その佇まいは一軒家の京町家を思わせるしっとりとした情緒が漂っていた。

カウンターは銘木として知られる鉄刀木(タガヤサン)の一枚板

からりと戸を開けると、ゆったりと空間をとった待ち合いがあり、その奥に一枚板の広々としたカウンター8席が現れる。料亭のような風格ある設えを、カウンターに灯された燈明の光が柔らかく照らしだし、これから始まるコースへの期待値を高めてくれる。カウンターを構えたことで、目の前で調理されるライブ感が加わり、今まで以上に店主・石田知裕氏の凝縮した世界を体感できるようになった。

茶室を模したテーブル席の個室

日本の文化を継承していきたいと願う店主の思いとは?

「古典を前にすると謙虚になれる」と話す店主の石田知裕さん。44歳

店主の石田知裕さんは、「京都吉兆」で17年のキャリアを積んだ料理人だ。そのうちの2008年から2014年までは「京都 吉兆 嵐山本店」で副料理長を務めた。そもそも石田さんが料理を志したのは、茶道、書道などをはじめとする、日本文化の奥深さに魅せられたからであったという。
そこで独立後は「二十四節気」など日本文化の根幹をなす考え方を軸に料理を作り、広めてきた。そしてまた、こうした日本の美しい文化を若い人にも伝えていきたいという思いが募り、多くの若者を育てられる環境の店づくりへと転換を図ったのだという。

一流の素材を洗練された技術で料理へと昇華させる

京都時代から付き合いのある仕入れ先から届いた見事な間人蟹

食材の季節を最も大切にしているという石田さん。どの食材も愛おしむかのように丁寧に調理されている。また見事な器に盛りつけられて登場し、目と舌を楽しませてくれるのだ。春は京都・山城のたけのこ、夏は鮎、冬は間人蟹など、修業時代から付き合いのある仕入れ先から最高のものを取り寄せている。ことに冬の間は、丹後半島でとれる高級食材の一つである間人蟹が欠かせない。

オリジナル日本酒も用意!

「水光 純米大吟醸」一合3,000円

料理に合わせる日本酒はいくつかの銘柄を用意するが、プライベートラベルの「水光」は「吉兆」と同じ岐阜の「白扇酒造」で造ってもらっている酒だ。さらりとしてクセがなく、料理の邪魔をしないので、繊細な日本料理を引き立ててくれる。