教えてくれる人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 
好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。最新刊「東京最高のレストラン2023」が発売中。

大人の隠れ家的な薪焼きイタリアンとジビエ専門店

ミシュラン二つ星店出身シェフのイタリアン

「オルケストラ」店内
「オルケストラ」店内   写真:お店から

今月のイチ押しはこちら、9月1日参宮橋にオープンしたカウンターイタリアン「オルケストラ」です。今年36歳の小川慎二シェフは、ミシュラン二つ星の「リストランテ サン ドメニコ」でスーシェフを務め、帰国後は目黒の「リナシメント」でシェフに就任したという実力者。その調理を目の前で楽しめるのもポイントでしょう。

「オルケストラ」 写真:大木淳夫

鶏や生ハムだけではなく、五島列島の焼きあごや昆布、長ネギまで使用した「トルテッリーニ イン ブロード」のスープはあまりに美味で、濃厚なうまさのラヴィオリ、そして薪焼きを世に広めた第一人者・元「ヴァッカロッサ」渡邊雅之さん直伝の、肉のうまみが閉じこめられた薪焼きなど、記憶に刻まれる料理の数々。店名にちなんだ、楽器をイメージしたオシャレな食器を揃えながらも、トイレには「ウコンの力」を置くというお茶目さも。人に教えたくない大人のレストランと言えるでしょう。書いちゃってますが。

ハンターでもあるシェフが振る舞うジビエ

「ジビヱ 岸井家」
「ジビヱ 岸井家」   写真:お店から

ジビエ好きにはたまらないお店もできました。9月1日、東北沢にオープンした、その名も「ジビヱ 岸井家」。店主は西麻布「キャンティ」で修業し、六本木のジビエ・イタリアン「ラカッチャ」のシェフだった岸井昭生さん。カウンター8席のワンオペで、前菜、メイン、パスタのほぼすべてが猪、鹿、熊などのジビエ料理。

「ジビヱ 岸井家」蝦夷鹿のロースト 写真:大木淳夫

猪のタンと蝦夷鹿のローストをいただきましたが、味、ボリューム共に申し分なし。ワインが進みます。シェフはご自身も狩猟免許を持つハンターで、よく千葉や埼玉で狩りをしているとのこと。とても興味深い話がたくさん聞けるので、ぜひ会話を楽しみながらジビエを堪能してください。

若手が躍動するフレンチ、ビストロ、焼鳥店

西洋野菜を生かした旬の料理

「anneau」 写真:大木淳夫

若手も元気です。8月4日、神保町にオープンした「anneau(アノー)」は、目黒「kabi」系列の兜町「ケイブマン」出身、早川歌輪シェフのイノヴェーティヴフレンチ。グリーンパンツなどの西洋野菜を活かして、巧みに美しく旬を表現する料理と、オープンキッチンでモノトーンのセンスのいい内装、2人のスタッフのフレンドリーだけど丁寧なサービスと、流行る要素が十分。昼夜共にコースのみですが、ふらっと立ち寄れる“パンとワインの日”を設けるなど意欲的な試みもしているので、どのように進化するのかが楽しみです。

15時から飲めるワインビストロ

「TiTi」
「TiTi」   写真:お店から

恵比寿のワインビストロ「TiTi(ティティ)」は9月11日のオープン。シェフは北海道出身の渡部紘人さんと久木公貴さん。フレンチのみならず、中華や和食、出張料理など、経験豊富な渡部シェフの料理はフルーツも多用したフュージョン系。900円からの豊富なグラスワインも楽しく、お二人ともコミュニケーション力が高いので、ついつい飲み過ぎてしまいます。15時からの営業で、ワイン1杯からでもどうぞ、とのことなので常連さんが増えそうです。

少しだけ贅沢に食べたい日の焼鳥

「焼鳥 一」 写真:大木淳夫

不動前には「焼鳥 一(まこと)」が8月29日にオープンしました。おまかせストップ制でカウンター12席。店主の猪股和弥さんはソムリエとSAKE DIPLOMAの資格を持つ31歳で、鶏は出身地である長野の信州黄金シャモ、野菜は友人が営むという宮崎県の「有機農園power of plants」から。締めには塩と醤油のラーメン、チキンカレーがあって迷いましたが、食べロググルメ著名人でもある大崎裕史さんが褒めてくれた(と、うれしそうに常連さんに語っていましたが、それはうれしいですよね)という塩に。客単価は8,000円ほどなので、ちょっとだけ贅沢においしいものを食べたいね、という時にぴったりです。

復活した町中華の名店とファミマ店内にできたカウンターバー

10年振りに復活した人気の町中華

松原昭彦
「有昌Astage代官山」しいたけソバ   出典:松原昭彦さん

グルメの間で大きな話題になったのが9月1日、代官山にオープンした中華「有昌Astage代官山」です。かつて並木橋交差点そばで、多くの有名人に愛された町中華「有昌」が、2代目橋本和雄さんの手で10年の時を経て復活しました。路地を入った小さなビルの2階で、カウンターのみ。メニューも9月半ばの時点では5品程度と、前の店とはだいぶ違いますが、名物「しいたけソバ」を目当てに新旧ファンが詰めかけています。塩ベースのスープに、甘く煮たシイタケの味が徐々に染み出して最後まで飽きずにうまいんです。

店内には並木橋時代に壁に飾られていた永六輔さんの書や、木梨憲武さんからの祝花などもあり、オールドファンは懐かしさで胸が一杯になるはず。

ファミリーマートの店内にバー?

「お酒の美術館 渋谷明治通り店」 写真:大木淳夫

並木橋といえばなんと、少し渋谷方面に歩いたファミリーマートの店内に、8月29日「お酒の美術館 渋谷明治通り店」というカウンターバーがオープンしました。京都を中心に展開するカジュアルバー「お酒の美術館」とファミマのコラボ。サントリーオールドなどのウイスキーが500円、山崎で1,000円とお手頃価格。そして特筆すべきは、こちらのファミマで買った商品を食べられること。しかも無料でベーコンやチーズをバナーで炙ってくれたり、150円で瞬間スモークしてくれたり。さらにファミチキ専用にブレンドされた樽ウイスキーもあって、楽しいことこの上なし。かつて堀江貴文さんが、居酒屋はコンビニに取って代わられると話していたことが現実になってきたようです。