【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】
「食事と同じくらい、むしろそれ以上にデザートやスイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々おいしいスイーツを探し求めるスイーツガチ勢の皆さんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが「これを食べるために出かける価値あり!」と太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。
〈第7回〉「ジェラテリア シンチェリータ」
8月も後半だが、まだまだ残暑が厳しい。暑い時期のスイーツと言えば「アイスクリーム」や「かき氷」が真っ先に浮かぶ。統計によれば、気温34℃以下ではアイスクリームの人気が高く、34℃超えとなると、かき氷の人気が高まるという。そんな中にあって、今の時季人気なのが、アイスクリームの「甘味・旨味」と、かき氷の「さっぱり感」を併せ持つ、イタリア発祥の「ジェラート」だ。
ジェラートとは、イタリア語で「凍った=congelato」という言葉に由来する氷菓だ。山の氷雪などを使った氷菓の歴史は紀元前にまで遡るが、今日の氷菓に直接結びつくのは、11世紀頃にアラブ世界にあった「シャルバート」という飲み物で、バラや麝香(じゃこう)で香味をつけた砂糖水を山の氷雪で冷やした飲み物であった。これが十字軍の遠征でイタリアのシチリアに伝わり、さまざまな工夫がなされ、名前も「ソルベット」に変わり、今日のシャーベットの原型となる。その後イタリアでは、冷凍技術が発明され、ルネッサンスの中心となったフィレンツェにおいて「ジェラート」が誕生したとされる。
ジェラートは、使用する素材により大きく異なるものの、アイスクリームに比べて空気含有量が少ないので、素材の味わいが濃く感じられ、また乳脂肪分が少ないことからさっぱりした味わいとなることが多い。今回は、東京・阿佐谷にある「食べログ アイス・ジェラート 百名店」にも選出されている、ジェラートの名店を紹介しよう。
「ジェラテリア シンチェリータ」は、2010年3月にオープンした、本格的なジェラート店だ。オーナーの中井洋輔さんは、大学時代からデザインに興味を持ち、 卒業後イタリアに留学。イタリアではどこの街にもジェラテリア(ジェラート屋さん)があり、もともとアイス好きだった中井さんは色々なお店を廻り、食べ歩きしたという。帰国後、一旦はデザイン関係の仕事に従事するが、やがて行き詰まりを感じ始めた。そんなとき、頭によみがえったのが、子供から大人までが皆楽しそうにジェラートを食べていたイタリアの街の風景だった。
好きだったジェラートを自ら作る仕事がしたい。思い立ったのはよいが、当時まだ日本には本格的なジェラートを作る店はほとんどなかった。イタリアから専門書を取り寄せ、メーカーの関係者に教えを請いながら、ほぼ独学で技術を習得。一見シンプルに見えるジェラート作りだが、科学的要素が強く、かなり苦労したという。
努力が実り、30歳の時にお店をオープン。店名の「シンチェリータ」は、イタリア語で「誠実」という意味。この言葉の語感が好きだったのだという。お店のコンセプトは「街角のジェラート屋さん」。日常的に、気軽に立ち寄りたくなる、そんな店が理想なのだという。
こちらのお店は「A子さんの恋人」(ハルタコミックス)というコミックの中にも登場することから 「聖地」巡礼で訪れる人も少なからずいる。
お店に入ると、入り口正面にカウンターがあり、そこで注文・支払いを済ませ、カウンターの左端の方で商品を受け取る流れとなる。 すぐに食べる場合は、カップに2つのフレーバーを盛り付ける「デュオ」600円(フレーバーにより追加料金有り)が基本。10歳未満の子どもには「ピッコロ」(小サイズ)300円もある。また、プラス80円でカップをコーンに変更することも可能だ。このほかに、保冷バッグにドライアイスを詰めてもらい「持ち帰り」をすることも、「配送」も可能だ(ネット販売も行っている)。
今回は、数ある中から特におすすめのフレーバーを2種類組み合わせたジェラートを3カップ紹介する。