教えてくれる人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 
好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。最新刊「東京最高のレストラン2023」が発売中。

新しいグルメビルに「すし光琳」と「味坊」の新店が登場!

人形町にできた大型施設

7月は新たなグルメビルが誕生しました。7月6日、人形町交差点にオープンした大型施設「ハシゴ楼」です。10階建て複合商業ビル「エムズクロス人形町」の1~5階に18店、1フロアに3、4軒がグッと詰まった縦型横丁形式。グルメビルといえば野村不動産株式会社の「GEMS」が有名ですが、こちらは三菱地所株式会社です。

「ハシゴ楼」 写真:お店から

オープン当日は1階の立ち飲み「スタンドクレイジークラフトビア」のビールが、営業中に売り切れるほどの人気だったようです。

すし 其一

そんな中、なんといっても注目は5階の「すし 其一(きいつ)」でしょう。江戸時代の町寿司の復活を、とばかりに低価格で高品質、お好みOKというスタイルで大人気となった、渋谷「すし光琳」の姉妹店です。

「すし 其一」 写真:大木淳夫

もちろんこちらもシステムは同じで、握りは一貫110円から990円まで。コースもありますが、ぜひ黒板のお品書きを眺めながら、お好みで楽しんでください。ちなみに店名は江戸琳派を広めた鈴木其一から。

初台「すし宗達」、渋谷「すし光琳」と琳派の名人を店名にするという流れをしっかり受け継いでいます。

商館味坊

そして4階には、中華の一大人気グループ、疾走する味坊集団の「商館味坊」が入りました。系列店はそれぞれ特徴がありますが、こちらは羊肉串焼きの各国産地食べ比べが楽しめます。訪れた日はウェールズ産の肩肉、アイスランド産のマトンをいただきましたが、ニュージーランド、フランス、チリなどもあるようです。

「商館味坊」 写真:お店から

味坊は広大な自家農園を持っていて、各店の野菜はほぼこちらで賄っているのですが、パクチーサラダ、最高でした。

Kitade Tacos & Sake

「Kitade Tacos & Sake」 写真:大木淳夫

せっかく“ハシゴ”楼なのだからと、もう1軒訪れたのは2階の「Kitade Tacos & Sake」。グランスタ東京や下北沢にも展開している人気店ですが、横丁なら赤ちょうちんだろうとばかりに、日本酒が充実しています。北海道産トウモロコシのみを使った、香ばしい自家製トルティーヤで多彩な具を包む楽しさ。来る来るといわれながら、なかなかブームが訪れなかったタコスですが、いよいよ盛り上がってきた気がします。

鉄道ファンも注目? 名店出身のイタリアンと、ソーセージの無いドイツ・オーストリア料理店

続いて、個人的にとても刺さった2店。7月1日、御茶ノ水にオープンしたイタリア料理店「701」と、6月5日、市ヶ谷にオープンしたドイツ・オーストリア料理店「ブラウアーエンゲル」です。

電車の立体交差が窓から楽しめるイタリアン

「701」鮑のトマトアンチョビクリームソース
「701」鮑のトマトアンチョビクリームソース   写真:お店から

「701」は、「キャンティ」で約10年修業し「アクアパッツァ」を経て独立という、直井一寛オーナーシェフのお店です。シンプルな味付けと美しさでしっかり旨いという、ありそうでなかなか無いイタリアン。竹屋シェフ共々感じがいいし、気持ちよく食事ができます。

「701」前菜の盛り合わせ
「701」前菜の盛り合わせ   写真:お店から

さらにこちら、窓越しにまるでジオラマのように丸ノ内線、中央線、総武線の立体交差を見ることができて、鉄道ファンでなくてもその風景に魅入ってしまいます。3線の立体交差は大変珍しいらしく、近くの聖橋は有名な撮り鉄スポットだそうです。

日本人の知らないドイツ語圏の料理

「ブラウアーエンゲル」 写真:大木淳夫

「ブラウアーエンゲル」は、日本人の知らないドイツ・オーストリアなどドイツ語圏の料理を広めたいと、ドイツ文化会館の「マールツァイト」でシェフを務めていた山口雅鷹さんが開いたカウンター7席と個室のお店。あえてソーセージはラインアップしないというメニューは、魅力的。アイスバインだけでなくラムバインがあったり、ハンガリーのビーフシチューである「グーラッシュ」や「ケーゼシュペッツレ」という、ショートパスタにチーズクリームをかけたドイツ南部の名物料理があったりで、まあおいしい。もちろん、この圏内のビールやワインも充実しているのですが、同店のソムリエが実は日本酒のプロ。お願いするとメニューには掲載されていない日本酒をごぞごそと出してきてくれて、これも面白い。ワクワクするレストランです。