〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、食べロググルメ著名人・山本憲資さんがおすすめする、さいたま市にある「駕籠休み」。店主の思いとこだわりが詰まった、売り切れ必至の「豪麺(ゴーメン)」をご紹介。

教えてくれる人

山本 憲資

Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

一見うどん屋に見えない。クセの強さが溢れ出る

東京都心から電車でおよそ1時間、さいたま新都心駅は埼玉県内有数のビジネス拠点であり「さいたまスーパーアリーナ」へのアクセス拠点としても有名だ。駅前から続く古木のケヤキ並木は武蔵一宮氷川神社の参道であり、南北約2kmに渡って長く伸びている。その参道をしばらく歩くと、左手に見えてくるのが行列必至の人気うどん店「駕籠休み」。

飲食店もまばらな住宅街の一角にあるが、黄色のテント看板に描かれた巨大な「うどん」の文字は間違いようがない。店頭には「地粉専門」「頑固にこだわり素材を活かす」などとさまざまに書きこまれた木の立て看板があり、野菜が販売されている。このうどん店らしからぬカオスな佇まいに、訪れる人は圧倒される。

太く大きく、力強く書かれた「うどん」の文字が出迎える
 

山本さん

住まいのある軽井沢から東京に移動するとき、大宮で新幹線を降りることも結構あるので、そのついでに寄りました。

一歩踏み込めばまたもやその個性派ぶりに驚かされる。丸太イスが置かれた山小屋風の店内は、毛筆の文字が躍る貼り紙が壁を埋め尽くしている。新メニューの案内やランチメニューに交じって、店のこだわりや店主の人生訓なども貼られていて、読まずにはいられないオーラを放っているのだ。

カウンター12席。4人掛けテーブルが6卓ある

平日でも開店前からポツポツと待つ人が現れ、開店直前には行列ができているという人気店。なので開店後はすぐに満席となり、2回転目を待つ人がちらほらと並ぶほどだ。

店主手書きのお品書きや人生訓などが貼られていて、賑やかな店内

人間力と芯の強さに脱帽。商売上手な店主が名店を生んだ

手打ちうどんの名店として、日本全国からうどん好きがやってくる「駕籠休み」。中には毎月通ってくるというファンも少なくないとか。その理由は、店主の井島さんが独学で編み出した、どこにもないうどんにあった。

店主の井島 秋三さん

元はスーパーを経営していたという井島さん。周辺に大手スーパーが進出してきたことから違う商売をしようと考え、以前から好きだったうどんを仕事に選んだという。そこからは仕事を終えて毎夜うどんを打つこと5年、試行錯誤を繰り返し周囲においしいといわれるうどんを完成させて店を開いたという。

井島さんの座右の銘。心に響く

とはいえ、普通にやっていてもこんな場所までなかなか人が来てくれるものではない。そこで思いついたのが1カ月無料でうどんを出すという作戦。それが評判を呼び、うどんのおいしさは口コミで着々と広まっていった。こうしたビジネスセンスは今も健在で、驚きの390円というランチの「ラッキー丼」など、赤字覚悟の目玉商品を常に掲げている。しかもその根底には「お客さんに喜んでもらいたい」という気持ちがこもっている。だからこそ愛される繁盛店なのである。

水が命。自家製手打ち麺のこだわりは素材にあり

「駕籠休み」の麺は厳選した国産の小麦粉、いわゆる“地粉”を数種類ブレンドし、独自に編み出した製法で打つ。これだけでも特別だが、決め手は水にあった。仕込みに使う水は、何時間もかけて山奥まで名水を汲みに行くという。清らかな山の軟水が、もちもちつるりとしたここだけにしかない麺のおいしさを作りだす秘訣というわけだ。

打った麺は少し寝かしておくことで味が馴染み食べた時の風味がよくなる
麺を茹でる水は浄水器で不純物を取り除いた水を使っている
茹で上がった麺はしなやか
氷水を張ったザルの中で素早く締める