【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

今回はいつもと趣向を変えて、今年誕生した新店やトレンドキーワードからひもとく2017年の肉事情について、小寺さんに思う存分語っていただきました。

Vol.13「平成29年(肉イヤー)を振り返って」

改元を再来年に控える今年は、奇しくも平成29年。当分来ない29年の2月9日、3月10日(ミート)、11月29日などなど、何かにつけて例年以上にお肉を食べた気がする。

 

「肉を糧に生きる肉食ライター」と公言しているせいか、年末になると、来年の肉トレンドはなんですか?と尋ねられることが多い。熟成肉、赤身、骨付きの塊肉など、肉食ブームは年々カジュアル&細分化され、日本の食肉文化もすっかり成熟した。

 

今年の肉食トレンドを振り返ってみると、イタリアンやフレンチなどのジャンルも含めて全体的に大きな動きのない1年だったと言われるように肉業界も小康状態な印象はあるが、爆発的なブームはなかった分、付加価値のある店が続々とオープンしたのは嬉しいニュースだった。

独自路線で肉を究める新店が続々!

焼肉ケニヤ/写真:外山温子

 

スパイス漬けにしたホルモンやフレンチのエッセンスを加えた肉料理を揃える「焼肉ケニヤ」、人気焼肉店の「うしごろ」は“最上ランクの肉と時間”を楽しませる「肉割烹 上」をオープンさせるなど、よりオリジナリティを追求した店が増えたのは、今年の傾向のひとつかもしれない。

肉割烹 上/出典:Tokyo Rocksさん

日本人のステーキ文化に変化

ベンジャミンステーキハウス/出典:お店から

 

ステーキ人気も継続中で今年も「ベンジャミンステーキハウス」や「エンパイアステーキハウス」など、NYスタイルのステーキハウスが続々と上陸。T-ボーンやL-ボーンといった骨付きのステーキをシェアするという食文化が日本人にも定着しつつある。

エンパイアステーキハウス/写真:富澤 元

“昼間からホッピー×肉”がミレニアル世代のトレンドに!

また、大衆酒場ブームもあって、下町の焼肉店や昔ながらのもつ焼きの店が若い世代を中心に人気を集めているのも興味深いところ。

 

浅草のホッピー通りでもつ煮込みをつまみに昼酒を楽しむオシャレ系女子によれば、パンケーキやカフェのごはんより最近、インスタで受けがよいのは下町酒場の焼鳥なのだとか。

たつや 駅前店(1F) /出典:てりやきさん

 

そういえば、朝から営業の“恵比寿の良心”「たつや」でも、昼間からホッピーを飲む女子をよく見かけるようになった(若い女性慣れしていない常連のおじさんたちがソワソワして見えるのは気のせい!?)。

2018年、行きたい店!

骨付きの塊肉も気軽に楽しめるようになったし、ジビエもすっかり身近になった。ワインを揃え、コーススタイルで提供するお洒落な焼肉店は、もはやデートや女子会の定番で、おひとり様で気軽に通える店も増えた。世の中の選択肢がどんどん多くなっていくなかで、店が切磋琢磨し食べ手に新しい驚きをもたらしてくれるのは、とても有難いことだ。

 

でも、新しさにミーハー心が惹かれる反面、何年も変わらぬ仕事を丁寧に続けている肉焼き名人がいる店には固定の常連客がいて、そうした店の強さはいつの時代も健在だと思う。

 

少し脱線してしまったけれど、来年以降も人気を集めるのは、原点に戻るにしても新たな肉料理に挑戦するにしても、追求することをやめない店。シーンによってはコスパの高さやビジュアルインパクトが求められることもあると思うが、スタンプラリーのように1回行ければ満足というお店ではなく、何度でも足を運びたいと思わせる肉自慢の店がさらに増えるといいなぁと切に思う。