クライマックスまで手抜かりのない大満足のコース

「蟹の心臓」

これが蟹の心臓だ! 甲羅の裏に隠れているのでうっかりすると味噌と一緒に気づかず食べてしまう。星のような五角形の心臓はプリンとした食感。

「蒸し蟹」

いよいよコースもクライマックスへ。「蒸し蟹」は腹の身をほぐし蟹味噌と共にいただく。うまみが凝縮された腹の身と味噌のコクと香りが、ふわりと口中に広がる。味をつける必要がないとはこのこと。食材の天性を生かした一皿だ。

雑炊は甲羅に盛り付ける
〆には“最高の雑炊”を! 好みで小ネギを入れても

食事の最後は「雑炊」だ。少し残しておいた「蒸し蟹」の腹の身と味噌を甲羅に盛りつけ、「蟹しゃぶ」に使った出汁と米と卵で作った雑炊をかける。上品で繊細だけど蟹のうまみをしっかり感じるのは、蟹しゃぶの出汁を使うことと、焼いた甲羅に注ぐことで中に残った蟹味噌や甲殻類特有の香りを纏うから。本日のコースで費やしたすべてはこのためにあると言っても過言ではない、まさにクライマックスな一皿だ!

2杯目のいくらトッピング

すると「お代わりいかがですか」と橋本さん。2杯目にはなんと、自家製の「鮨屋のいくら」をトッピング! しかも好きなだけ盛ってくれるというから驚きだ。これがまた実にうまくてつい「3杯目を」と言ってしまう。

「せとかのジュレ」

デザートは果肉がやわらかく甘みたっぷり、「柑橘の大トロ」と呼ばれる「せとか」を使ったジュレ。ひんやりとして瑞々しくてデザートも最高峰だ!

「新富きた福」の寿司と蟹料理を融合させた新たなコースは、「きた福」という名に恥じないさすがの味であった。仕入れたその日に店の水槽に入れる鮮度の良い蟹、「やま幸」の鮪と鯖、最高の料理は食材が語ってくれるものなのだ。

オープン時はカウンターが18時、個室が19時スタートだったが、3月からはカウンターのみ20時半からも可能になる。またオープンから1カ月間のみ、雑炊にトッピングする「鮨屋のいくら」をお土産にしてくれるそう。これは直ちに予約したい!

文:高橋綾子、食べログマガジン編集部
撮影:松園多聞