〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは、口コミ数が少なかったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり、点数が上がると予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。情報通のカレー細胞さんに、横浜・伊勢佐木長者町駅近くでタイ東北地方の料理が味わえるレストランを教えてもらった。

教えてくれる人

カレー細胞(松 宏彰)

兵庫・神戸生まれ。国内だけでなくインドから東南アジア、アフリカ南端、南米の砂漠まで4,000軒以上を食べ歩き、Web、雑誌、TVなど各メディアでカレー文化を発信し続ける。年2回、カレーにまつわるカルチャーを西武池袋本店に集結させる「東京カレーカルチャー」など、イベントプロデュースも多数。TBS「マツコの知らない世界」ではドライカレーを担当。Japanese Curry Awards選考委員。食べログアカウント:ropefish

タイ地方料理の一大エンターテインメントを横浜で

店構えから放たれる雰囲気も現地さながら

多くのタイ料理店やタイ古式マッサージ店がひしめく関内、伊勢佐木町界隈は、リトルタイランドとも呼ばれる繁華街。みなとみらいや元町などの人気観光スポットからさほど距離が離れていないのだが、それらのエリアとは全く異なる、ディープな横浜の別の顔に出合うことができる。

そんな街の一角、横浜中郵便局近くに佇むのが今回ご紹介する店「クァクンティム」。数あるタイ料理レストランの中でも、超マニアックなタイ料理に出合えるらしい。

口コミ数が23件と少ないこともあり食べログの点数は3.29だが「タイ本場レベル」「現地の疑似体験ができる」など高評価が目立つ。

※点数は2023年1月時点のものです。

 

カレー細胞さん

最初この店が気になったきっかけはSNSで流れてきた動画。タイのお母さんが笑顔で野菜を収穫していたのですが、それがタイじゃなく日本だということにビックリ。興味を持って行ってみたら、期待値の100倍ディープで100倍楽しい、食の一大エンターテインメントとも言うべき体験が待っていました。

他店とは圧倒的に違う、食材やハーブの「強さ」を堪能

こざっぱりとした店内には15のテーブル席がある

トムヤムクンやガパオライスなど、日本でも身近になってきているタイ料理。だが一言でタイ料理と言っても、バンコクなどの中央部とその他の地域では、特色が大きく異なるのをご存じだろうか。

ここ「クァクンティム」が提供するのは、タイ東北部、北はラオス、南はカンボジアと接し、タイの他の地域とは異なる独特の食文化を持つイサーン地方の料理。油はあまり使わず、唐辛子や薬草をふんだんに用いるのが特色だ。

 

カレー細胞さん

料理ははっきり言ってディープです。辛さは容赦ない現地流と控えめ、どちらにも対応してくれますし、食材のフレッシュさは最強無双クラス。他店で食べるタイ料理とは圧倒的に違う、食材やハーブの「強さ」を堪能できます。

オーナーのテンクワさん(左)と母のティムさん(右)

店のオーナーは、タイのインフルエンサーとしてもその名を知られるテンクワさん。カレー細胞さんが動画で見た「タイのお母さん」はテンクワさんの母で、店名の「クァクンティム」はタイ語で「ティムさんの台所」という意味がある。

 

カレー細胞さん

イサーンは基本、田舎なので、そこで採れたものをそこで料理にします。いわば強い食材、面白い食材ありきの地産地消のタイ料理なんですよね。それを横浜の地で、輸入品に頼らずやっている。これが実にすごい。

「タイパクチーやホーラパー(タイバジル)、パクチーファラン、ガパオなど、ありとあらゆるハーブや野菜は綾瀬市にある畑で育てています。カニや川海老などの魚介や巨大なシイタケも、新鮮なものを扱っています。それらを使って、うちでしか味わえない本場のイサーン料理をお出ししています」(テンクワさん)

 

カレー細胞さん

「夏も終わりなのでおいしいセミもラストチャンスだよー」「今日は新鮮なゴンズイ(ナマズ目の海水魚)がオススメですよ」など、毎回想像のはるか上をいく季節感。これってよく考えてみると地産地消にとどまらず、フードロスゼロ活動、SDGs=持続可能なタイ料理店と言えるかもしれません。