〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

遠方からピッツァ好きが訪れる話題の店とは?

ファカロー ピッツァ ギャラリー 外観
店内には不定期でアーティストの作品が展示され、ギャラリーとしても活用されている。

新御徒町駅から徒歩3分の場所にある「ファカロー ピッツァ ギャラリー」は、ピッツァ好きのグルマンたちの間で話題となっている店。その話題性は、遠方から飛行機や新幹線で上京してまで食べに来る人がいるという話でも窺えるだろう。

周囲には住宅も多い地域。落ち着いた雰囲気の中に白で統一されたシンプルな店が佇んでいる。ピッツァの店として想像しがちなイタリアンな雰囲気がまったくないことで、逆にピッツァへのこだわりを感じてしまう店構えだ。

こんなピッツァ初めて! 誰もが驚く「とろける生地」

ファカロー ピッツァ ギャラリー
マルゲリータ(2,000円)。生地がやわらかいので中心部は折り曲げて食べる。

ピッツァを食べるなら、やはりトマトベースは外せない。シンプルにピッツァそのものの味が楽しめることから、来店したら絶対に頼んでおくべきは「マルゲリータ」だろう。

ピッツァにはナポリスタイル、ローマスタイルなど地域によって特徴があるが、同店のピッツァはナポリスタイル。店主がナポリの人気店や自分が惚れ込んだ店などで学んできたものをベースに作っている。

そのピッツァはなかなかに衝撃的だ。一般的には、外側の耳の部分がパリッとしていて、中央部分がやわらかいのだが、ここのピッツァは「やわらかい」を通り越して「とろけるような食感」と例えるのが近い。訪れた客が「飲めるピッツァ」と表現するほどの新食感に驚く。

あまりにやわらかく、慣れていない人は戸惑ってしまうため、食べ方が描かれた紙があるほど。ポイントは、とろとろの中心部を少し折りたたむこと。これでとろりとなめらかな最初の一口を、余すところなく堪能できる。

水牛のモッツァレラ チーズを使ったマルゲリータ コン ブーファラ(2,800円)もある。

ベースとなるトマトソースは酸味がしっかりと感じられ、チーズに負けていない。しかしそれよりも香り高いのがピッツァ生地の小麦だ。店主の出身地である群馬県産の小麦粉で作られた生地は、トマトとチーズ、バジルの香りの中でもしっかりと存在を主張しながらも、とろんとした食感ですべての具材をやさしく調和させている。

チーズベースのシャキシャキルーコラのピッツァ

ファカロー ピッツァ ギャラリー
ルーコラの香り高い、プロシュート エ ルーコラ(3,000円)。

同店にはピッツァ以外のサイドメニューもあるが、これだけの絶品ピザ。1人1枚は食べておきたい。

そこで2枚目は、シンプルにルーコラと生ハムをのせた「プロシュート エ ルーコラ」にした。ピッツァにはトマトベースの他にチーズベースがあり、こちらはチーズベース。モッツアレラチーズを敷き詰めて焼いた後、新鮮なルーコラと生ハムを散らしている。

シャキシャキのルーコラに、塩気を控えた生ハムがバランスよくトッピングされていて、 サラダ感覚で食べることができるピッツァだ。

サイドメニューで野菜もしっかり楽しめる

窯でじっくり焼き上げるので、野菜のうまみが凝縮された旬野菜の窯焼き(2,800円)。

数人での食事ならピッツァのほか、前菜などのサイドメニューを頼むのも良い。
おすすめは「旬野菜の窯焼き」。店主も栽培に携わっている千葉の生産者「自然野菜のら」から送られてくる季節の野菜10種類前後をピザ窯で焼いている。野菜のうまみと甘味が凝縮し、薪の香ばしさがアクセントとなった食欲をそそる一皿だ。

この日はキャベツやパープルスティックにんじん、ロマネスコ、キャッサバ、カブなど。生で食べられるサラダ春菊も、仕上げに薪火で直接グリルして香りを付けていた。
にんじんには、にんじんの葉で作ったソースが添えられているが、それ以外は基本、塩コショウやニンニクオイル、ハーブなどを軽くまわしかけただけの味付けなので、野菜そのものの味を楽しむことができる。

なお、仕入れ状況や混雑の具合によっては注文できないこともあるとのこと。それだけにOKだった時には、ぜひとも頼んでおきたいメニューだ。

ほうれん草が苦手でも食べられる絶品ピッツァ

季節のピッツァは不定期で変わっていくので、まさに「そのときだけ」のお楽しみ。

最後に紹介するのは「ほうれん草とリコッタチーズのクリームと自家製パンチェッタ」。季節限定のピッツァだが、しばらくは提供していくという。

ベースはほうれん草をまるごと使ったソースに、リコッタチーズとクリームを加えてまろやかに仕上げたもの。そこに自家製のパンチェッタを散らしている。ほうれん草特有の青みがチーズとクリームで緩和されているうえ、ほうれん草ならではの甘味が加わり、まろやかでありながらも、爽やかな風味のある一品だ。

これまでのトマトベース、チーズベースともまったく異なる味わいのため、3枚目とはいえ飽きることなく食べ進めていける 。

もっちり&とろとろ食感を生み出す、ふんわりやわらかな生地

ファカロー ピッツァ ギャラリー
生地は群馬県産の小麦を独自に配合。水分量は綿密な計算によって割り出している。

同店のピザの特徴として「とろける食感」を挙げたが、その食感を生み出しているのが生地のやわらかさだ。ピザ生地を成形する時、丸めた生地を空中で軽く回すようにして広げていくシーンを見たことがある人も多いと思うが 、その広げる時の手のかけ方が飛びぬけて繊細だ。最初に1~2回延ばした後、軽やかに回すこと、わずか2~3回。それだけで生地はふんわりと広がる。

ファカロー ピッツァ ギャラリー
ここから焼き上がるまでは、わずか1分。焦げ目もおいしいピッツァが出来上がる。

そこからベースやトッピングを散らすまでわずか数分。あっという間の出来事だ。店主曰く「ピッツァ生地を作るなら、粉はイタリア産が一番という人が多いけれど、日本の小麦粉でもここまでやわらかく、それでいてしっかり味わいのある生地ができるというのを実践したかったんです」とのこと。

チーズやオリーブオイルなど一部はイタリア産や外国産を使うこともあるが、極力国産の食材でピッツァを作っていきたいというのが店主のこだわりなのだ。

オリジナルの薪&ガスのハイブリット窯で、理想のピッツァを追求

ファカロー ピッツァ ギャラリー
薪は岩手県の「一般社団法人ゴジョる」から仕入れ、食べるだけで知らずに社会貢献になる。

「自分がおいしいと思うピッツァを食べたい」。その思いはピッツァ窯にも表れている。窯は、機械工学を学び前職ではモノづくりに携わっていた店主が手がけたオリジナルの窯で、薪とガスのハイブリッドだ。薪とガスを併用することにより、二次燃焼をさせて煤の出にくい窯となっている。これにより、一般的なピザ窯より高い温度を維持することができる。

そうすることでやわらかなピッツァ生地にほどよく火が通り、生地全体はもっちり感を、周りはカリッとした部分を残し、中心部分はとろ~りとした食感に仕上がる。この店でしか食べられないピッツァの出来上がりだ。
この味を求めて多くの人が集まるのも納得といえる。

また、同店のピッツァは翌日でも硬くならずに、おいしく食べられる。せっかく訪れたなら、お土産として持ち帰るのもおすすめだ。

カウンターの外装やキッチン内の引き出しなども店主が設計・施工している。

店内はテーブル席が14席分。そのうちの3分の2ほどを予約席としているが、土日の予約枠はすぐに埋まってしまうという。当日席もあるが、できれば予約が良いだろう。

お酒やドルチェなどもあるので、前菜やサイドメニューとピッツァを1人1枚ずつ。ピッツァをたっぷりと堪能できる店だ。

【本日のお会計】
■食事
・マルゲリータ 2,000円
・プロシュート エ ルーコラ 3,000円
・ほうれん草とリコッタチーズのクリームと自家製パンチェッタ 3,000円
・旬野菜の窯焼き 2,800円

合計 10,800円

※価格はすべて税込。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。
※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:岡崎たかこ(UP SPICE)
撮影:松村宇洋(UP SPICE)