九州から世界へ。始まりは一粒のトリュフチョコレート

博多駅から大博通りを博多港に向かってまっすぐ、オフィスビルが立ち並ぶ中にも下町風情が残る綱場町エリアの洋菓子専門店「チョコレートショップ」。

チョコレート好きにはつとに知られるその店は、東京・旧帝国ホテルで見習いコックとして働いていた佐野源作さんが、そこで出会った一粒のトリュフチョコレートに魅せられ、本場フランスなどでの修行を経て1942年に博多の地で創業した歴史ある名店だ。

 

現在は、源作さんの長男・2代目の隆社長が店を継ぎ、父の味を受け継ぐ看板商品のチョコレート「生チョコ1942 博多の石畳」、チョコムースや生クリームなどを5層に重ねて作るチョコレートケーキ「博多の石畳」といったヒット商品を続々と開発。

 

なかでもパリの「サロン・デュ・ショコラ」出店時に注目を集めた砂糖不使用の「ZEROチョコレート」は、ジェレミー・ブエノ2014年秋冬パリ・オートクチュールコレクションの公式ケータリングフードにも採用されるなど、創業から75年経つ今もなお新しい試みが続けられている。

 

博多を代表する人気洋菓子店へと成長させてきた父の背中を見て育った隆社長の娘・3代目の恵美子さんは、「チョコレートショップを100年続く店にするために」と店を継ぐことを決意。フランスで8年間の修行を積んだ末、今年2月にチョコレートの本場であるフランス・パリに自身の店「レ トロワ ショコラ」を出店した。父とは違ったアプローチで洋菓子業界に新風を吹き込んでいる。

親子3代の味が一粒のチョコレートに凝縮

そんなパワフルな父と娘の2人が、新しく「LES TROIS CHOCOLATS Chocolate Shop(レ トロワ ショコラ コラボ チョコレートショップ)」という店を立ち上げた。

店内には、「日本ではほぼ流通していない」という希少価値の高いカカオなど新鮮な材料を使ってパリで製造し、空輸で届けられた“逆輸入”のショコラがずらり。

 

ほうじ茶、ローズ、ホットワイン、ハチミツしょうが、山椒、ごま、抹茶味など、約15種類を1粒230円からそろえる。

脱脂粉乳を一切使わないため、フルーツの味や香りがより引き立つという「タブレットショコラ」1,000円や、チョコレートショップの人気商品であるケーキ、焼き菓子なども並ぶ。

思わず飾りたくなるような“絵画”がコンセプトという、オーダーメードのチョコレート「ミュゼ・ドゥ・ショコラ」3,000円もユニーク。

入り口横で食欲をそそる香りを漂わせているのは、フランス産バターを使い、外はサクサク、中はしっとりしたフィナンシェ「トロワバターフィナンシェ」250円。「2~3分温めると焼き立てが味わえておすすめ」という。

 

今後はスムージーやパフェなど、テイクアウト商品も展開する予定という。

妥協を許さない父娘の新たな挑戦

独自のスパイスを入れながらも父の味を守ってきた息子と、「祖父の店を続けるため」本場で挑戦をしている孫。店名には3世代の思いを込め、フランス語で「TROIS=3」の文字。個性豊かな3代でつないだ店が誕生した。

「父と一緒に店を出すのは照れや恥ずかしい部分もある」と恵美子さん。両店の人気商品が一度に楽しめる商品構成で、「内装や陳列など、親子でも一切妥協せず、言い合いになりながら準備した(笑)」と2人。“チョコレート”のこととなると、どちらも一歩も譲らない。

 

「親子3代の味を楽しんでいただければ」と恵美子さん。汗と涙の上で誕生した甘~い3代の味、一粒いかが?

 

 

取材・文・写真:秋吉真由美