ガレットにかき氷…!西日本ならではのバラエティ豊かなスイーツのラインアップに注目

昨年スタートした、全国で今注目のスイーツ店を100店集めた「食べログ スイーツ 百名店」が、3つの地域に細分化&掲載店も新たに「食べログ スイーツ 百名店2018」(以下、スイーツ百名店2018)としてパワーアップ! そこで昨年に引き続き、お菓子の歴史研究家・猫井登先生に、西日本地域の「スイーツ百名店 WEST 2018」の中から、スイーツ店の傾向と注目ポイントを分析していただきました。

 

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【スイーツ 百名店 WEST 2018 トレンド その1】〜スイーツにも「粉もん」嗜好〜

まず、大きく洋菓子と和菓子に分類すると、洋菓子店58店、和菓子店42店となっており、やはり京都が範囲に入っているだけあって、和菓子店の割合が、昨年の百名店(全国)や「スイーツ百名店 TOKYO 2018」と比べると14%ほど高い。次に洋菓子店の内訳を見て行くと、洋菓子店に占めるフランス菓子店の比率は60%と、昨年の百名店(全国)の76%と比べると、「スイーツ百名店 TOKYO 2018」60%と同様、低い水準となっている。

 

さて、西日本では今、どのようなスイーツの店が人気を集めているのだろうか? トレンドをみてみよう。

 

スイーツ百名店WEST 2018の洋菓子店の業種を分析すると、フランス菓子店とともに、クレープ、パンケーキ、バウムクーヘン、フレンチトーストといった店が多いことが特徴としてあげられる。これらの業種が洋菓子店の約14%を占めており、スイーツにも「粉もん」嗜好が反映されているといえるのではないだろうか。

 

関西で「粉もん」文化が生まれた背景としては、

 

【1】 大阪市場で小麦粉の流通が盛んであった。それが神戸ではパン、京都では麩など独自の発展を遂げた。

【2】 大阪万博を盛り上げるため、大阪市場の小麦粉を使った商品を広めた。

【3】 関西人は「手軽、簡単、安価」で美味しいものを好む傾向があり、粉もんがマッチした。

 

など、諸々の理由が述べられているが、スイーツの嗜好にも影響を与えているのだろう。

シンプルからゴージャスまで様々なクレープを味わえる「クレープリー・アルション」(大阪)

出典:kmrさん

 

難波の裏通りにある、黄色い壁の洋館は異彩を放つ。フランス産の小麦やバターを厳選し、本場フランスのクレープやガレットの「生地」の味わいを追求するお店。さっと砂糖をふりかけただけの「シュクレ」のようなシンプルなものから、「モンブランクレープ」のように、こってりと甘みのあるものまで、さまざまなバリエーションが堪能できる。

 

出典:kakip202さん

 

テイクアウトのクレープの味わいも素晴らしく、行列ができる。夏場はアイス入りも登場!

20分待つだけの価値がある!ふわっふわのパンケーキ「カフェ アリエッティ」(京都)

出典:かんみ♪さん

 

フォーシーズンズホテル京都の南向かいに佇む、赤いオーニングが印象的な店舗のこちらは、パンケーキメニューが充実している。一番人気といわれるプレーンのパンケーキは、極厚、ふわっふわ生地の二段重ねに、ホイップバターをトッピング。ミニピッチャーに入ったメープルシロップがついてくる。生地自体にもほんのりと甘みがあるが、バターとメープルシロップを合わせると絶品!

 

出典:wan♡wanさん

 

焼き上がりまでに20分程度かかるが、待つだけの価値があるホットケーキである。

 

【スイーツ 百名店 WEST 2018トレンド その2】~冷菓(パフェ、かき氷)の台頭~

パフェ3店、和菓子店においてもかき氷6店と冷菓が台頭してきているのは、スイーツ百名店 TOKYO 2018と同様である。冷菓でも、東京に比べ、かき氷店の比率が高いのは、気温の違いが原因であろう。

 

一般に「アイスクリーム」は22〜23℃くらいから売り上げが伸びるといわれるが、30℃を超えると、「かき氷」の方が好まれるそうだ。気温が30℃を超える日を真夏日などと称するが、昨年の統計をみると、大阪・京都の年間の真夏日(35℃以上の猛暑日も含む)の割合は、東京を超える数字となっている。

 

もうひとつ、西日本の冷菓事情の特徴として挙げられるのは「冬かき氷」だ。最近、東京でも見られる現象だが、西日本で顕著にみられる。かき氷は今や通年商品になりつつある。

 

良質な宇治茶を使ったパフェなど京都ならではの味わいを堪能「茶寮都路里 祇園本店」(京都)

出典:Mハルさん

 

宇治茶の老舗、祇園辻利の甘味処。良質な宇治抹茶を使ったパフェや白玉だんごなどを楽しめるお店。パフェは、定番メニューのほかに季節ごとの限定メニューも登場する。

 

出典:みけたんらぶさん

 

先頃のバレンタインでは、カカオショコラアイスをはじめ、ピンクに彩ったチョコのふわふわクリームや、抹茶といちごのチョコゼリー、ほうじ茶ブラウニーなどを使った、バレンタイン限定商品も登場した。

あわあわふんわり。エスプーマかき氷の先駆者的有名店「ほうせき箱」(奈良)

出典:ふるはうすさん

 

「エスプーマかき氷」の先駆者的な店。エスプーマとはスペイン語で「泡」を意味し、食材をムースのような泡状にする調理法のことだ。このお店で驚かされるのは、真冬の平日でも行列ができていること!

 

出典:ふるはうすさん

 

もちろん店内にはストーブがあり暖かいので問題はないのだが、かき氷の「クリスマス限定メニュー」があるのをみると、もはや、「かき氷=夏のもの」という図式は完璧に昔のものになりつつあるのを実感する。

【スイーツ 百名店 WEST 2018 トレンド その3】〜チョコレート専門店の台頭~

西日本においてもチョコレート専門店6店と台頭してきているのは、スイーツ百名店 TOKYO 2018と同様である。比率的には洋菓子店の10%程度と、東京の17%に比べれば低いが、今後伸びてくるだろう。昨今は、上記で述べた「冬かき氷」のトッピングとしてもチョコレートが使われることも多くなっている。

インドネシアのカカオを京都から発信「Dari K 祇園あきしの店」(京都)

出典:ingridbさん

 

Dari Kが、他の洋菓子店やチョコレート店と異なるところは、クーベルチュールと呼ばれる製菓用のチョコレートを使用せず、カカオ豆から手がけていることだ。つまり「Bean to  Bar」の体現者であること。それに加え、従来、顧みられなかったインドネシア(スラウェンシ島)のカカオの生産者に「発酵」技術を指導し、インドネシアのカカオを広く世界に発信しようとしていること。

 

出典:Mハルさん

 

その姿勢は高く評価され、今や京都のチョコレート界をけん引する存在となっている。

〜フランス菓子店はバランス良く広範囲の店を網羅~

さて、最後に大勢を占めるフランス菓子店に目を向けると、京都の「サロン・ド・テ オ・グルニエ・ドール」、から福岡の「ジャック」に至るまで、広範囲にまたがる地域の名店を規模にかかわらずバランスよく網羅しているのがわかる。

今年5月まで!惜しくもクローズ予定の名店の味に会いに行こう「サロン・ド・テ オ・グルニエ・ドール」(京都)

出典:Testarossaさん

 

まずは、スイーツ百名店 WEST2018の今年の情報としては、2001年6月に西原金蔵シェフが京都でオープンし、関西のフランス菓子界に多大な影響を与えた「サロン・ド・テ オ・グルニエ・ドール」が、2018年5月31日にクローズすることをお伝えしなければならないだろう。オープン当初から65歳になったら引退すると宣言されていた西原シェフだが、まさか本当に引退されるとは……。

 

出典:ガレットブルトンヌさん

 

一方でシェフの右腕として店を支えた加藤シェフ、西原シェフのご子息の裕勝氏は、開店の準備をしているとの情報もあるので期待したいところ。何はともあれ、残された期間内に「ピラミッド」など西原シェフが創作された珠玉のお菓子を味わっておきたいものだ。

福岡が誇るトップパティシエのお店。生菓子のみならず焼き菓子も超一流「ジャック」(福岡)

出典:辣油は飲み物さん

 

こちらの店は、生菓子はもちろん焼き菓子も超一流。フランス菓子のトップシェフたちで構成されるルレ・デセールのメンバーの1人、パティシエ大塚良成氏のお店。店名を冠した「ジャック」は、アーモンドパウダーとバターの生地に、バニラビーンズが香るキャラメルのムース、蜂蜜で煮た果肉入りの洋なしのババロアをはさみ、洋なしの煮汁にブランデーを加えたシロップを上掛けしたもの。口に入れると、まずは洋なしの瑞々しい味わいが広がり、あとからキャラメルの風味が感じられる、洋なし好きにはたまらない逸品。

 

出典:mayupapaさん

 

焼き菓子では、大塚シェフが修行されたフランス・アルザスの郷土菓子であるクグロフを試してほしい。発酵バターたっぷりのしっとりとした食感と豊かな香りを楽しめる。

文:猫井登