和牛みすじをポン酢でさっぱりと
これはもう、誰が食べてもおいしいという、鉄板の味わい。みすじとは、牛の肩から腕にかけての肉で、ほどよい脂肪と強い旨みでファンの多い希少部位だ。「和牛小皿 しんうち」では、頻繁に使う。その理由が、比較的水っぽい下半身ではなく、旨みの強い上半身の肉に限定して仕入れているからだそう。薄切りにしたみすじを熱湯にゆらゆらとくぐらせて引き上げ、ポン酢でいただく。
小松さん
みすじの脂の甘味と爽やかなポン酢がよく合って、口の中でとろけるようです。
スキレットでさっぱりしたすき焼き
小さなスキレットで焼き立ての熱々が供されるすき焼き。こちらも肉はみすじを使用。スキレットでネギや舞茸、焼き豆腐をじっくり焼き、割り下を加えて少し煮たら、ミスジを大判のまま、2枚。ごくさっとだけ焼いて、最後に春菊を添えてテーブルへ。「レアの肉に少しずつ火が入るところに生卵をつけて食べてください。肉の味が引き立つように、割り下もさっぱりめに合わせていますから」と。嫌いな人のいない、最強のメインディッシュだ。
小松さん
割り下の少ない、ジュッと焼ける感じが関西風に近い、すき焼き。より肉のおいしさが際だつようです。
アラカルトで好きなものを楽しめる
こちらは、必ず箸休めに頼みたい小鉢。実は、福井の本店が創業以来50年間作り継いでいるという伝統の味で、長年作り続けているからこその、まろやかでコクのあるほどよい辛さはやみつきになるおいしさ。
小松さん
酸味と甘味と辛味のバランスがとてもいいキムチです。充分にコクはあるのだけれど、さっぱりしていて食べ飽きないですね。つい箸が止まらなくなります。
締めに何を選ぶかがまた悩ましいのだが、まずは一番人気の欧風ビーフカレーを頼んでみたい。ほろほろに煮込まれた、ユッケに使う部位などがたっぷりと入った、スパイシーな中にも心地よい甘味が際だつ、ボリューム感のあるカレーだ。実は、このカレーの仕上げは、社員誰一人として知らないのだとか。社長がカレーだけは絶対にさわらせず、一人で仕上げるという秘伝のレシピ。それほど思い入れのあるカレーだと聞くと、食べてみたくなるのが人情だが、裏切られることは絶対なし。ただ、かなりボリューム感があるため、お腹が九分目というようなら、ツルリと喉を通る一口すだち冷麺がおすすめだ。
小松さん
どこか懐かしい、甘味とスパイシーさのバランスが絶妙な欧風カレー。なかでも、マーマレードを加え、肉によく合うオールスパイスを利かせた、品のいい味わい。もうお腹いっぱいと思っていても、ついついご飯が進んでしまいます。
ほかにも、はちのす煮、和牛すじ煮込み、炭焼きミニハンバーグ、焼きものではとろけるレバ串、つらみ串、チーズメンチカツ串などの肉料理のほか、洋風卯の花、季節野菜の揚げ浸しなどの野菜料理、締めはほかに優しい玉子クッパなども。あれこれ迷い出したら止まらないような一品料理が目白押しだ。メニューには記されていないが、ヒレと赤身の2種盛りのビフテキを頼むこともでき、中山氏の焼きの技術も、味にうるさい顧客を満足させている。
肉割烹というと、かなり高級でコース仕立てというのがお決まりだが、カジュアルな価格で食べたいものを好きなだけ堪能できるというのが、なんといっても「和牛小皿 しんうち」の魅力だ。牛肉好きなら、まずは一度、気軽に試してみてほしい。