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「ソウルフード」という言葉には多かれ少なかれ、きっとなじみがあることと思います。

 

 

「私にとってのソウルフードはー…」「大阪のソウルフードといえばたこ焼きだよね」「九州のソウルフードって基本的に甘辛いよね」

 

 

そんな会話をしたことのある方もいるのではないでしょうか。何を隠そう私自身も「ソウルフード」といえば自分の心にある、大切な食べ物、祖母や母、故郷を思い出すような食べ物。そんなイメージを持っていました。

 

 

そう、今回ニューヨークを8年ぶりに訪れるまでは。ニューヨークにいくつかのミッションがあり2週間ほど滞在したときのこと。

 

 

現地人の友人が、「あなたほどのフーディーなら必ず行くべきだ。」と異常なほどの情熱で薦めてくれたレストランがありました。そうして、こんな会話のやりとりがあったのです。

 

 

友人「It’s a soul food restaurant」(それはソウルフードのレストランなのよ)

 

私「Oh, so they serve New York’s soul food ?」(ああ、ニューヨークのソウルフードを出すレストランっていうこと?)

 

友人「No no, they serve the very traditional kind of soul food」(ううん、そのレストランはとっても伝統的なソウルフードを出すお店なの)

 

私「I see, so they don’t serve pizza then」(なるほど、じゃあそのレストランでピザは出してないんだね)

 

友人「Well, pizza is not exactly a soul food」(まあ、ピザってソウルフードじゃないからね)

 

私「But NYC’s soul food has to be pizza! Right?!」(でもニューヨークのソウルフードといったらピザでしょ?!)

 

友人「There’s no NYC’s soul food, there’s only one kind of soul food」(ニューヨークのソウルフードっていうのはないのよ、ソウルフードといったら1種類だけ)

 

 

そこで私は初めて友人からの説明により「ソウルフード」はアメリカ南部の伝統料理の総称なのだと知ったのです。

 

 

ソウルフード(英語:soul food)とは、 アメリカ合衆国南部で奴隷制を通して生まれた、アフリカ系アメリカ人の伝統料理の総称である。「ソウルフード」という名称が定着したのは、アフリカ系アメリカ人に関する事柄を指すのに「ソウル」(「魂」)という言葉がよく用いられるようになった1960年代半ば頃である。

出典: 「ソウルフード」(2017年1月24日 (火) 13:21 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

 

 

今まで「私にとってのソウルフードはお母さんの作ったオムライスかな。」なんてのんきに言っていたことを小っ恥ずかしく感じた瞬間でした。どうやら日本語でいう「ソウルフード」は既に「魂を感じるようなお料理」や「今の自分を支えてきた大事なお料理」などといった風に別の意味を持った和製英語になってしまっているようなのです。

 

 

もし「蒲田のソウルフード」なんていう看板をアメリカ人が見掛けたらそれは、「蒲田風ソウルフードレストラン」という風に理解されているだろう、と友人は言うのでした。

 

 

ソウルフードの本来の意味を理解したところで少し歴史についてwikiしてみると

 

 

ソウルフードの歴史はアメリカ合衆国の奴隷制の時代にさかのぼるが、[……]アフリカ人の奴隷とその子孫は、手に入る食料で生き延びることを余儀なくされた。アフリカで食べていた野菜の代わりに、大農園で奴隷に与えられたカブやタンポポやビーツの葉が用いられるようになり、カラードグリーン(英語版)、ケール、クレソン、ヨウシュヤマゴボウなど新しい素材も用いられるようになった。奴隷は大農園で捨てられる豚足、牛舌、牛の尾、ハムのかかとの部分(ハムホック)、チタリングス(豚の小腸)、豚の耳、豚の頬肉、牛の複胃(ミノ、センマイ、ハチノス、ギアラ)や皮をもらい受けて料理を工夫し、タマネギ、ニンニク、タイム、ローリエを加えて風味を良くした。

出典:「ソウルフード」(2017年1月24日 (火) 13:21 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』

 

 

 

具体的にはどんなお料理があるのか、というと、皆さんもきっとなじみのある「フライドチキン」、「コーンブレッド」、「マッシュドポテト」、「鳥レバーのソテー」、「マカロニアンドチーズ」、「ハムステーキ」、「ソーセージグリル」、「バターミルクビスケット」等。料理名を読んでいるだけでおなかがいっぱいになりそうなお料理たちです。

 

友人の薦めるレストラン「Jacob’s Pickles」は彼女の知る中でも味、ボリュームともに完璧なソウルフードを提供するそうで、あまりにヘビーでおなかがいっぱいになるので「このレストランに行く日はおなかをペコペコにして行って、食べた後は何も予定を入れないで一度家に帰って横になった方がいいよ。」と言うのでした。

 

 

なんとオーバーな、と思いながらもいよいよJacob’s Picklesへ行く日が訪れ、目いっぱいおなかを空かせて出向きました。人気店ということで開店直後の時間に入店すると平日にも関わらずあっという間に席は満席に近い状態に。店構えはいまどきなブルックリンスタイル。

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前日の予習でメニューを見ずとももう頼みたいものは決まっており、お店の名物である「Fried Pickles」(フライドピクルス)、サラダ好きとしては外せない一品「Buttermilk Fried Chicken Caesar」(バターミルクフライドチキンサラダ)、そして友人からお薦めされた食べるべき逸品という「Croque madame」(バターミルクビスケットのクロックマダム)の3品を注文しました。もう1品頼みたかったところでしたが、ウェイトレスの女性に止められました(いつものこと)。

 

程なくしてフライドピクルスとシーザーサラダが運ばれてきました。まずは興味津々でピクルスを食べてみるとほんのり甘くさっくり、ほわっとした衣で揚げられた自家製のピクルスはくせになる程よい酸味と甘みと食感を併せ持っていました。なるほど。これはいままで味わったことない酸味。

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次はバターミルクで柔らかくし、ごつごつとした衣で揚げたチキンのもも肉1.5枚分をドカンと乗せ、パルミジャーノをこれでもかというほど掛けたシーザーサラダ。チキンのジューシーさとザクザクの衣、たっぷり濃厚なパルミジャーノとシャキシャキなロメインレタスは私ほどの食いしん坊でない方にとっては朝だとちょっとヘビーかもしれませんが、サラダとチキンをこよなく愛する私には食感も味もアメリカらしさを感じる、幸せなひと皿でした。

 

 

興奮しているうちに気付けば大食いの私でもこの2品で既に満腹指数が7分目を通り過ぎそうでした。最後に登場したバターミルクビスケットのクロックマダムはもう、見ただけで残りの3割を埋めてしまいそうなビジュアル。

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スキレットにどかんとのったバターミルクビスケット、フライドチキン、ホワイトソース、目玉焼き、ベーコン入りビスケット、付け合わせのフライドポテト、最強の組み合わせだったけれど、途中から連れとそろってフードファイトに近い心境に陥ったのでした(味は間違いなく美味しいのです)。なんとか、すべてを完食し席を立つと頭がくらっと来て、おなかはパンツのファスナーを少し開けないと呼吸が浅くなってしまうくらいパンパン。その日はその1食だけで寝床に就くまで満腹の状態がキープされていたのでした。

 

 

初めて本場で(本当の本場は南部ですが)ソウルフードを食し、素人がいきなりボクシングのリングに立たされて一発ノックアウトを受けたような後味が残りました。

 

 

それは大胆かつ野蛮で、力強く、感じるよりも先に頭から爪先まで、すべての欲を麻痺させてしまうまさにソウルをガツンと食らうお料理だったのでした。最後に念のため申し上げますが、食べる量が適量であればきちんと味わうことができます。

 

 

まだ味わったことのない方はぜひ、一度ガツンと食らっていただきたいです。

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