今、訪ねるべき店がわかる「スイーツ百名店」
- 「スイーツ百名店」から紐解く洋菓子の傾向、現在形とは？
スイーツ百名店を知るためのキーワード【1】「アシェットデセール」
スイーツ百名店を知るためのキーワード【2】「クラシック・ルヴィジテ（温故知新）」
スイーツ百名店の今を知るためのキーワード【3】「スイーツ界の細分化」
次回より、猫井先生のスイーツ百名店洋菓子講座が本格スタート！

今、訪ねるべき店がわかる「スイーツ百名店」

365日、私たちの胃袋を掴んで離さない魅惑の存在である“スイーツ”。そんな、全国で今注目のスイーツ店を100店集めた「食べログスイーツ百名店」の中から洋菓子専門店に絞り、現在の洋菓子の傾向をお菓子の歴史研究家・猫井登先生に分析していただきました。

猫井登（ねこいのぼる）　お菓子の歴史研究家。1960年京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理科で学び、調理師免許取得。ル・コルドン・ブルー代官山校にて、菓子ディプロム取得。フランスエコール・リッツ・エスコフィエ等で製菓を学ぶ。著書に「お菓子の由来物語」（幻冬舎ルネッサンス刊）「おいしさの秘密がわかる　スイーツ断面図鑑」（朝日新聞出版刊）がある。

「スイーツ百名店」から紐解く洋菓子の傾向、現在形とは？

100店の傾向分析をするために、まずは大きく「洋菓子」と「和菓子」に大きくジャンル分けしてみよう。かき氷店や和洋折衷のスイーツのお店はどうするかなど問題は色々あるが、パンケーキなど洋風のものを扱っていれば洋菓子とみなし分類すると、ざっと100店中70店が「洋菓子」のお店となる。昨今、スイーツ好きの約7割は洋菓子党だといわれており、それを裏付けるような数字になっているのは興味深い。

スイーツ百名店を知るためのキーワード【1】「アシェットデセール」

さて洋菓子店の内訳を見てみると…予想通り「フランス菓子店」が、70店中53店と圧倒的に多いが、注目すべきは、“アシェットデセール”のお店が5軒入っていること。「アトリエコータ」、「コミナセマコ」、「デセールルコントワール」などだ。

アシェットデセールとは、フルコースの最後に出てくる皿盛りのデザートのことで、芸術的に盛り付けされた、出来立てのスイーツを堪能できるのが魅力。また、カウンター形式の座席でシェフがデザートを仕上げる様子を見ることができる場合も多い。スイーツを単に味わうだけではなく、目でも楽しみたいという傾向が伺える。スイーツが、ひとつのエンターテインメントに昇華してきているといってもいいだろう。

東京都・新宿区「アトリエ　コータ」

愛知県・名古屋市「コミナセマコ」

東京都・世田谷区「デセールルコントワール」

スイーツ百名店を知るためのキーワード【2】「クラシック・ルヴィジテ（温故知新）」

さらに、百名店に選ばれたフランス菓子店の店名をみて思うのは、古典菓子を大切にしているお店が多く入っているということだ。フランス菓子の重鎮、河田シェフの「オーボンヴュータン」はもとより、同店で修業された井上シェフの「ピュイサンス」などだ。若手の中では、捧シェフの「パティスリーユウササゲ」、興野シェフの「アカシエ」、などでは、フランス古典菓子をベースとしながらも、そこに新たな解釈を加えていくという傾向が読み取れる。フランス菓子の近時の大きな潮流として「クラシック・ルヴィジテ」というものが挙げられるが、これは日本語で言えば「温故知新」。

まさに「故きを温ねて新しきを知る」という若手シェフのフレッシュな感性が日本のスイーツファンにも評価されているといえよう。