ワインを飲めない人にも、ペアリングを。

マリアージュとペアリングは似ているようで、その意味は異なる。マリアージュが料理と飲みものを合わせたときにその化学反応によって生まれた“新しい味”を楽しむことと定義される一方、ペアリングでは料理と飲み物の本質的な相性を追求することが多いようだ。ペアリングという言葉をいまのようにレストランで頻繁に見かけるまえは、おもにマリアージュ“ワイン”の専売特許であったように思う。

 

だが、ペアリングが浸透し始めてから、日本酒やお茶など、ワイン以外の飲み物と料理の組み合わせの妙を楽しませるレストランが増えてきた。とくにペアリングコースを提供している店のほとんどは、アルコールとノンアルコールの2種(または混合の3種)を用意しており、ランチ時やお酒が飲めないゲストから好評を集めていると聞く。

ひと皿ひと皿に合わせて、緻密に計算した一杯。

「自然、環境、美味しさ、楽しみ、人と人のつながり」をコンセプトに掲げ、体が喜ぶ食体験でゲストを魅了する『I・K・U青山』でもオープン時からノンアルコールペアリングのコースを提供しているが、美しいひと皿に花を添えるペアリングが堪能できると評判。

料理のコースは4,500円から15,000円まで4種を揃えているが、いずれもまずは専用のプレスマシーンで搾った3種のコールドプレスジュースからスタートする。旬の果物や野菜を使うため季節によって内容は異なるが、バターナッツかぼちゃとアーモンドミルク、小松菜にゴーヤにパイナップルなどヘルシーかつユニークな組み合わせに料理とペアリングへの期待も高まる。

前菜にはシャンパーニュのような華やかな香り

減圧調理で仕上げた自然栽培野菜と新鮮な魚介を合わせた前菜とともに登場するのは、水出しのハーブティー。シャンパーニュグラスからふわっとフルーティな香りが立ち上るが、これはジャスミンティーにマンゴーエキスを加えたもの。チャーミングな飲み口で清涼感のある一杯に野菜と魚介をふんだんに使ったひと皿がよく合う。

とろみのある温かなお茶で緩急を

スモモと楽しむ紅茶のジュを添えたオマール海老のポッシェには、ほのかな甘みのあるソースのようなニュアンスを持つ、栗と黒砂糖を加えた日本茶。ノンアルコールでも料理に合わせて味に緩急をつけるテクニックはサプライズ感にあふれ、食べすすめる(飲みすすめる!?)ごとに気分が高揚する。

メインにはワインを思わせるブレンドを合わせて

メインのほうき鶏のロティ そのジュとトリュフのソースといった重厚感のある皿には、ランブルスコと同品種の有機ぶどうジュースと日向夏の水出し紅茶を。軽めのピノ・ノワールを思わせる風味が鶏の旨みやトリュフソースの香りを引き立て、思わず感嘆の溜息が。

 

ノンアルコールのペアリングコースは2,800円だが、アルコールに負けず劣らずの満足感。緻密に計算された料理との相性はもちろん、サプライジングな一杯一杯に心が弾む。

 

 

写真:外山温子

取材・文:小寺慶子