大規模な再開発にともない、しばらくこの地を離れていた大人たちから再びの注目を集める街・渋谷。だけど、いざ来てみたら食事処に迷ってしまうというケースもしばしば。そんな、“シブヤお久しぶり組”の迷える大人たちのため、「食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO（Chief Eat Officer）を務める小宮山雄飛さんに渋谷の新＆定番グルメスポットを両方教えてもらっちゃおう！ というこの連載。
[定番]編17回目となる今回は、連日行列ができる、渋谷が誇る日本そばの名店「玉笑」をご案内します。
【大人の渋谷メシ・定番編】第17回「玉笑（たまわらい）」
日本そば店として、ミシュランで9年連続星獲得！ 5年連続「THE TABELOG AWARD」Bronze受賞、さらに4年連続「食べログ そば 百名店」にも選ばれている、誰もが認めるそばの名店「玉笑」。
渋谷と原宿の間、穏田神社（僕の実家の氏神様でもあります！）のすぐ近く、とても静かな住宅街にお店はあります。シンプルでシックな外観は、言われなければここがそば屋さんだと気づかないくらい。
外観同様、お店の中も無駄のないシンプルなデザインで、純粋においしいそばを追求しているんだというストイックさを感じます。
そば前（そばを食べる前のツマミ）に、まずおすすめは「焼き味噌」770円。特製の円い鉄板がなんとも可愛らしい！
焼けた味噌の香ばしさと、そばの実の味わい、そしてふっくらと優しい食感がたまりません。
続いては、そば前と言えば！の「板わさ」990円。
こちらの板わさは「皮目」がしっかりしているのが特徴。一口かじると、歯にかまぼこ特有の硬すぎずやわらかすぎずの心地よい弾力を感じ、さらに噛み切ろうとすると薄い皮の部分がほんの少しの抵抗を与え、最後はシャクッと噛み切れる。この一連の弾力の変化が実に気持ち良いのです。
「とうふ」770円は、日によって違う豆を用いた冷奴（この日は緑豆の豆腐）に、自家製の湯葉をのせたもの。二つの違う味と食感が楽しめ、おろしたての山葵が全体の味をキリッと引き締めます。
そしてこちらのお店で絶対に食べてほしいそば前が「そばがき」1,760円。
これ自体がそばなので、そば前と呼ぶのも変ですが（笑）。天日干しのそばの実を使っているというそばがきは、まさにそばのおいしさがぎゅっと詰まっている一品。
ぷりっぷりの食感で、口に入れればそばの香りが口いっぱいに広がる、そば好きにはたまらない一品。この食感は出来立てしか味わえない（すぐに乾いて硬くなってしまう）ので、こればっかりはしっかり味わいながらも、早めに食べるのが良いでしょう。
玉笑はそば屋さんとしてはツマミの種類が多い方ではありませんが、一つ一つのクオリティが本当に高いのです！ 薬味として添えられている山葵がおろしたてで風味がめちゃくちゃ良かったり、細かいところまで仕事がしっかりされていたりするのが、名店と呼ばれる所以でしょう。
そして、いよいよ肝心のそばへ。
こちらの名物の一つ、冷たい「納豆そば」1,760円。青豆の大粒な納豆に卵の黄身、海苔、鰹節、青ネギの5種類の具がきれいに盛り付けられた、見た目も美しい一品。
まずは、そばだけ一口。黒いツブツブに見えるのは俗に「そばのホシ」と呼ばれるそばの殻（文字通り星付きのそば！）。
粗挽きらしいワイルドなそばの風味を残しながらも、瑞々しく繊細な味わいで、そばだけでなんでこんなにおいしいんだろう！と改めて感じます。
そばの味をしっかり味わったら、あとはお行儀悪いようですが、納豆・卵など全部の具をしっかり混ぜていただきます。
青豆納豆の濃い味わいに卵の黄身のねっとり感、海苔の風味も加わり、これはほんとに絶品！ これだけの具が加わってもそばの風味が負けていないのがまたすごい。
僕は普段シンプルな「せいろ」を食べることが多いですが、こちらのお店はそばの味がしっかりしているからこそ、タネもので食べるのもおすすめなのです。
最後はこちらも名物の「熱もりせいろ」1,100円。温かい汁に、生卵と青ネギが付きます。
温かい状態で提供される、特製の平たい粗挽きそば。
よくある太めの田舎そばと違い、幅はありますが厚みはないので、そばの風味と喉越しの良さ、その両方をしっかり味わえるのが特徴。
辛めの汁にさっとつけて食べると、そばがきのようなしっかりしたそばの味を感じます。
冷たいせいろと温かい汁物の良いとこどりとも言える熱もりは、そばそのものがしっかりしているからこそ出せるメニュー。冷たいそばと食べ比べて、味や食感の違いを楽しむのもおすすめです。
連日開店前から行列ができ、14時過ぎには売り切れ終いしてしまう超人気店ですが、並んででも食べる価値のある、こだわりの料理の数々。渋谷が誇る日本そばの名店です！
※価格はすべて税込
