愛されベーグルの秘密を取材 !
ひのさん
現在の白金高輪に移転してから何年になりますか?
稲木さん
こっちにきて12年です。代々木上原のオープンからは、2021年8月1日で17年になります。
ひのさん
最初にお店に伺った時に、サンドイッチを薄紙で包んで色鉛筆で“egg”とか書いてくれるのが、NYっぽくてすごくおしゃれだな、と印象に残ったんです。
稲木さん
ありがとうございます。「Ess-a-Bagel」で勉強させてもらったので、真似しています(笑)。
ひのさん
ベーグル屋さんを始めようと思ったきっかけが、その「Ess-a-Bagel」さんとの出会いなのですよね。
稲木さん
はい、卒業旅行で行ったNYで、ガイドブックに載っていたので、何気なく行って食べてみたら、「なんだこれは!?」と(笑)。パンのようなものだと思ってたんですが、全然違って。すごくハマッて、帰国してパン屋さんなどでベーグルと書いてあるものを買って食べたら、これじゃないと。
ひのさん
当時の日本では、ベーグルの専門店はほぼなかったですしね。
稲木さん
こんなに違うものに同じ名前をつけるのは、あの(Ess-a-Bagel)の味を知らないんだろうなと。知ることができたのは、すごいことなのかもしれないと思って。それで勉強させてもらおうと動き出したんです。
ひのさん
ベーグルの作り方は、焼く前に茹でる、またはスチームを当てるなどがありますが、どのようにされていますか?
稲木さん
茹でています。茹でることでベーグルになれるというか。ベーグルの歴史には諸説ありますが、元々ベーグルはユダヤ人の食べ物で、ユダヤ教の頭から水に潜る洗礼の儀式的な意味もあるのかもしれないと聞いたので、茹でるのは必須工程だと思っています。茹でることによって税率が下がり、ニューヨークで普及したとも言われているので。
ひのさん
ゴマやポピーシードなどいろいろなトッピングがありますが、どのベーグルにこの具材が合う、というお店からのおすすめの組み合わせはありますか?
稲木さん
特にないんです。これとこれは絶対合わないというのは、基本ないと思うので。アップルシナモンとか、甘いクリームチーズを、あえて塩気のあるエブリシングに挟む方も結構いらっしゃって。ただ、初めて来店された方は、イメージと違ってしまう場合もあるので、相談しながら選んでいただくようにしていますが、ベーグルは基本的にどれも食事。デザートにはなり得ない食べ物だと思っています。
ひのさん
オープン以来、これだけ人気を集めている理由は、どこにあると思われますか?
稲木さん
「Ess-a-Bagel」で学ばせてもらった作り方はそのままです。そこは、いじっちゃいけない部分だと思っているので、元の形を変えないように気をつけています。でも、まるで同じにはなりたくなかったので、国産小麦や酵母にこだわって、というのは、私の経歴や好みならではのスタイルになっていて。それがたまたま、多くの方に受け入れてもらえているのかなと思います。
ひのさん
使用されているお塩も特徴的ですよね。
稲木さん
シチリアの岩塩を使っています。たまたま業者さんに教えてもらったのですが、味と値段のバランスがとてもいいので。
ひのさん
お客様から、マルイチベーグルのここが好きという声はありますか?
稲木さん
塩がしょっぱ過ぎなくていいね、ですとか、外国人のお客様からは、母国の味を日本で食べられてうれしいと言っていただくこともあります。
ひのさん
変にアレンジしていないのが評価されているのかもしれませんね。
稲木さん
そうですね。昔のベーグルに近いというか。
ひのさん
NYの中でもトラディショナルなスタイルですよね。今後、新たに挑戦したいことはありますか?
稲木さん
やりたいことは、一生のうちにおさまらないぐらいたくさんあります(内容はお楽しみ!)。実現できるようにがんばります。ですが、今の(ベーグルの)スタイルを変えるつもりはありません。それが、多くの方に求めてもらえる状態が続けばいいなと思っています。
ひのさん
型からはみ出さずに続ける姿勢がかっこいいです。ちなみに、常にベーグルと向き合っている稲木さんならではの、好きなベーグルの食べ方はありますか?
稲木さん
裏側にプルタブのような、閉じ目の突起があるんですが、そこをベリッと剥がして、皮だけをめくって先に食べてから、中を食べる。皮のパリパリと中にかわいいまるいホワホワが、いるのを確認して別々に食べるのが好きです。ぜひやってみてください(笑)。