【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#16】「トラットリア モンテトミ」
両国にある「トラットリア モンテトミ」。本場フィレンツェの名店「トラットリア・アルマンド」で修業した日本人シェフのお店です。基本的にはれっきとした正統派イタリア料理店なのですが、水・木曜のランチタイム限定で「昼間のトミさん」という名前に変わり、カレー専門店に変身するのです。
こちらのシェフは元々カレー好きで様々なお店でカレーを食べ歩いていた中、「カレーノトリコ」や「魯珈」で今まで食べたことがなかったような個性的な絶品カレーと出合って衝撃を受け、自分でも作ってみたいと思うようになったそうです。独学でカレー作りを開始し、最初は賄いとして従業員と一緒に食べていた中で、だんだんとカレー作りのコツが掴めてきて、スタッフさんに「これならお店で出せるんじゃないですか?」と言われたのをきっかけに、曜日限定で二毛作的にカレーのお店を始めたのが2020年1月のこと。
僕は何度かこちらのお店のカレーを食べているのですが、食べる度においしさのレベルが上がってきていると感じます。そんな中、最近遂にご自身の専門分野であるパスタとカレーを融合させたカレーパスタがメニューに加わったということで、気になって食べに行ってきました。
いただいたのは「マトンのレモンカレーパスタ」1,200円。これに「パクチーソース」50円をトッピング。修業先の名物料理であるチンギアーレ(猪)のラグー(煮込み)をヒントにスパイスと合わせて再構築したというカレーパスタ。麺にもこだわっていて、米粉で作った高たんぱく麺なのです。
マトンはブリブリの食感で程良い火入れ。イタリア料理らしくトマト感がベースにありつつ、スパイスとハーブが香り、上にのったレモンとカレーリーフが良いアクセントになっています。麺ももちもちで食べ応え十分。パクチーソースはジェノベーゼソースのような仕上がりですが、香りがバジルではなくパクチーであり、これをかけるとよりカレー感が強まって非常に面白く、おいしいカレーパスタとなっていました。
カレーうどん、カレーラーメンなど、カレー麺にも色々あるのですが、カレーパスタが一番進化できていない料理だと感じています。昔ながらのおいしさのカレーパスタは時々あり、それはそれで魅力的なのですが、ここ数年で盛り上がりを見せているスパイスカレーをパスタにしたものはありそうで意外となかなか無いもの。こちらのカレーパスタはまさにその時代の先端を行くカレーパスタだと感動していると、シェフから「もし良かったらこちらも味見してみてください」と出していただいたのが、カブの冷製パスタ(ひとくちサイズを特別に)でした。
こちらはイタリア料理のクレマというスープとピューレの間くらいのものを元に、スパイスを合わせて作ったというカレーパスタ。カブの良い意味でザラッとした舌ざわりが心地よく、青唐辛子とセロリのペーストが添えられ、すべて混ぜて食べてみれば、スパイス感は控えめでありながら確かに香りが立っているというもので、カレーパスタと聞いて想像するものを超えた場所にある、興味深いパスタとなっていました。
おいしかったのでデザートも。デザートには最近流行しているイタリアのデザートであるマリトッツォ。こちらにマサラを合わせた「マリトッツォマサラ」350円です。ブリオッシュにたっぷりのクリームを挟み込んだスイーツなのですが、クリームの上にかかっているのがガラムマサラ。このスパイスの香りが華やかであり、ほのかな苦味がクリームの甘さを適度に抑える働きを見せていて、こちらも興味深いおいしさになっています。
元々料理の基礎がしっかりしているシェフがカレーに目覚め、自身の専門分野とスパイスを合わせて新しい形のカレーを生み出しているお店が少しずつ増えてきていますが、こちらのお店もまさにそれ。イタリアではカレーはほとんど食べないといわれていますが、よく使う食材を考えればトマトやニンニクなど共通点は少なからずありますから、イタリア料理とカレー、インド料理の相性は良いはずなのです。
シェフご自身がカレーが好きだからこそのカレー愛と探求心で日々進化するカレー。ライスで食べるカレーもあり、こちらもおいしいのですが僕のおすすめはカレーパスタ。水・木の昼のみとハードルは高いのですが、そのハードルを乗り越えていく価値あるお店です。
※価格はすべて税込