【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#15】「すっぽんとタイ料理 月島源平」
東京・月島のすっぽん料理を中心とした「日本料理源平」が、2020年9月から「すっぽんとタイ料理 月島源平」に生まれ変わりました。
すっぽんとタイ料理という組み合わせ、ほかでは見たことがありません。一般的にあれもこれも色々とやるお店よりも、ひとつのメニューに絞って出す専門店の方がおいしいと思われがちですが、例外は意外とあるのです。こちらのお店もまさしくその例外的においしいお店であり、すっぽんとタイ料理という一見つながりがなさそうに見える料理をどちらも出すということは、どちらにも自信があるからこそとも言えるでしょう。
マスターは元々タイ料理店で腕を振るいつつ「日本料理源平」の常連だったという方。リーズナブルにすっぽん料理を食べることができるお店として通っていたそうですが、ある時先代が「そろそろ引退しようと考えている」と話したのを聞き、ここの料理を食べられなくなってしまうのはもったいないということで自らお店に入り、お店を手伝いながら料理の手ほどきを受けたそうです。
そんな中で先代から店を譲るという話が出て、代替わりしたのが昨年9月。その際に先代が「すっぽんは鍋が中心だから夏場が弱いんだ」という話が出て、ならば自分がやってきたタイ料理を合わせるという提案をしたところ、承諾してくれて今の形になったというお話です。
お店の常連がそのお店を受け継ぐという形はカレー界にも少なからずあることですが、その多くがうまくいっているように思います。何しろ常連だからこそお店と料理に対する愛とリスペクトがありますから、商売としてやるよりも味が守られる可能性が高いわけです。
そんな月島源平。コロナ禍の中でランチタイム営業を始めています。ランチタイムはタイ料理中心でありつつ、すっぽん雑炊などもあるという面白さ。タイ料理もポピュラーなものからマニアックなものまで多種多様です。レギュラーメニューと限定メニューの組み合わせで様々な楽しみ方ができるのですが、例えば限定メニューには「クアクリンムー」900円が出ることもあります。
クアクリンとはタイ南部の激辛ドライカレーのこと。僕の大好きな料理なのですが、これを食べられるお店はまだまだ少ないです。粗挽きという以上に叩いたようなカットの豚肉が自家製のクアクリンペーストと新鮮なバイマックルー(こぶみかんの葉)で仕上げられ、しっかりと辛いのですが、カイダーオ(目玉焼き)を割って食べるとその辛さが程良く落ち着き、ご飯が止まらなくなる逸品です。クアクリンも色々なお店で食べてきましたが、こちらのクアクリンはトップクラスにおいしいです。
ある日のランチには「グリーンカレー炒飯」850円に「ミニゲーンソム」400円を合わせていただきました。グリーンカレーのペーストで作る炒飯はほかのお店よりもドライでシャープな仕上がり。スパイスの刺激とホーラパー(タイのスウィートバジル)の香りがおいしさの相乗効果を生んでいます。
ゲーンソムとはタイ南部の酸っぱ辛いスープ状のカレーのこと。海老やパパイヤが入っていて南国ムード満点。蒸し暑い時期にぴったりのおいしさです。
夜には「すっぽん鍋」1人前3,500円や、「さばのへしこ」950円、タイ料理なら「クンパッポンカリー」1,300円などもあり、タイ料理と日本料理を融合させた「土鍋カオマンガイ」2,000円はぜひとも食べてほしいこちらのお店ならではの逸品です。
現在は基本的に不定休とのことなのでお店のSNSで営業情報を確認してみてください。そしてシェフはお一人しかいないお店なので、混んでいる際には焦らず、限定メニューも多いのでこれが食べたいというものがあれば予めご連絡くださいとのことです。
僕はすっぽん料理については全く詳しくないのですが、何もわからない僕が食べてもおいしいと思えるすっぽん鍋ですし、日常的に食べているタイ料理に関しては間違いなく一級品のおいしさと言えるクオリティのお店です。どちらの料理が好きな方にも行ってほしいお店であり、どちらの料理も食べ比べてみてほしいです。普段食べ慣れていない料理への興味が生まれる良いきっかけになると思います。
※価格はすべて税込