僕はこんな店で食べてきた
2020年は飲食業界において、未来永劫忘れられない年になることは間違いないだろう。僕は普通の人よりは格段に外食の機会が多いほうだと自覚はしているが、その僕でさえ外食の頻度は半分以下に落ちた。
その少ない中で、2020年のトレンドを考えると僕は「ビストロへの回帰」の年だったと考えている。無理にこじつけると、誰もが大変な中、複雑な料理よりもわかりやすい料理へ意識が向かっていったのかもしれない。ただ、そんな小難しい話ではなく、予約が取れないところに行く楽しさと対極の軸にある、いつ行っても変わらない味が楽しめるという店だってきちんと存在してほしいということに、食いしん坊も気づいたということだろう。
注目の新星と引き継がれる味
その傾向は一昨年に人形町にできた「アン ファス」あたりから続くと思う。
アン ファスはワンオペの店で、いかにもおいしいものを出しそうな大柄なシェフが、アラカルトで典型的なビストロ料理を出す。初めて行った時、頼んだブーダンノワールの大きさに圧倒されたのが懐かしい。ミシュランガイド東京のビブグルマンを獲得して人気になったようだが、こういう店は下町に似合う。