〈おいしいテイクアウト・特別編〉

新型コロナウイルスの影響で外食も自粛ムード。こんなときだからこそ「お家でおいしい食事をして元気になって欲しい」と、テイクアウトを始める飲食店が続々と登場している。小さな子供がいて諦めていたあのお店の味も、いつもは予約でいっぱいのあのお店の味も、テイクアウトならお家でゆっくり味わえる。在宅勤務で自炊も飽きてきた、そろそろプロの味が恋しい……。さあ、もっとテイクアウトを活用して、日本の素晴らしい飲食店を応援しよう。

 

今回は特別編として、連載「森脇慶子のココに注目」でお馴染みのフードライター・森脇慶子さんに、東京・中目黒のステーキ名店によるとっておきのテイクアウトメニューを教えてもらった。是非参考にして、充実したお家時間をお過ごそう。

 

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〈目利きのテイクアウト〉炉窯でじっくり焼かれたステーキを弁当でも存分に味わえる「ステーキ ダイニング ヴィティス」

ステーキ弁当に焼肉弁当etc.牛肉メインの弁当は数あれど、炉窯(ろがま)で焼いたステーキをテイクアウトできるところはそうそうない。そんな希少な味を自宅で楽しませてくれるのが、ここ。肉ラバーにはつとに知られた炉窯焼きステーキの名店「ステーキ ダイニング ヴィティス」だ。

オーナーシェフの結城壮平シェフは、炭火ステーキの名門「麤皮(ARAGAWA)」出身。約7年半に亘る修業の後独立。中目黒に店を構えて6年になる。「ステーキは炭火焼が一番」と語る結城シェフの言葉通り、特注の耐熱レンガでできた炉窯は、いわば炭火のオーブン。そこで焼き上げられるステーキは、およそ900度にまで上がる炭火にかざされ、周りはカリッ、中はしっとり焼き上がる。

それも、より火力が強く最上級といわれる紀州備長炭馬目小丸を駆使。火力と焼き時間のタイミングを絶妙な加減で図りつつ、肉への火の入り具合を見極める結城シェフの鋭い洞察力、そして炭火による遠赤外線効果と炉窯ならではの輻射熱のなせる技だろう。余分な脂が落ち、その滴り落ちた脂による燻煙効果で香ばしさが倍増したステーキの旨さは推して知るべし。その極上のステーキを、お弁当でいただけるのだから見逃せない。

「ヴィティス特製ステーキ重」

4月半ばから販売を始めたご覧の「ヴィティス特製ステーキ重」3,500円は、炉窯で焼いた赤身のステーキがたっぷり120gも入った豪華版! もちろん、牛肉は黒毛和牛。それも飼育日数30ケ月以上の処女牛のみを使う徹底ぶりだ。部位は、冷めても脂が気にならず、なおかつ柔らかく旨味の強い内もも肉やランプがメインだとか。

「このご時世なので、神戸牛だったりのざき牛だったりとその時々で牛は変わりますが、クオリティは変わりません」と結城シェフ。ちなみに、写真のステーキは神戸牛の内ももを使用。塊のまま焼き上げ、スライスすれば麗しいロゼ色の断面が現われる。この肉片を折り箱に詰めたご飯の上に並べるのだが、そのご飯がまたふるっている。なんとスモークサーモンの炊き込みご飯なのだ。

 

それも、ただのスモークサーモンではない。件の炉窯を使い、5時間燻製にかけたホットスモークサーモンを使っているというのだから恐れ入る。独特の薫香を纏ったサーモンは、ステーキと並ぶ同店のスペシャリテ。贅沢にもこれを炊き込んでいるのだ。

 

しかも、米を炊き始める最初から皮ごと一緒に炊き込むことで、皮と身の間に潜む旨味も全て米に染み渡らせている。お弁当に詰める際は、皮を綺麗に取り除いているそうで、そんな丁寧な一手間にも一流店としての矜持が窺えよう。

「ステーキ屋さんが作る牛肉ゴロゴロオムライス(炉窯焼きステーキ付き)」

この「ヴィティス特製ステーキ重」に続く第2弾が、ゴールデンウイーク明けから新発売の「ステーキ屋さんが作る牛肉ゴロゴロオムライス(炉窯焼きステーキ付き)」3,500円だ。結城シェフ曰く「ご家族で召し上がるケースが多いようだったので、お子様向けにと考えたのがこのオムライスです。ステーキ重は、どちらかというとお酒を意識した大人の味に仕立てていますが、こちらはケチャップ味のチキンライスならぬビーフライス。いたってノーマルな味になっています」とのこと。

 

卵はスクランブルエッグ状になっているが、持ち帰りを考えてしっかりめの火入れになっているのでご安心を。こちらにもステーキ肉は120gとたっぷり! さらにケチャップライスの中にも、文字通り牛肉がゴロゴロ。ケチャップ味も控えめで、肉の旨みを邪魔されることなく完食できる。添えてあるマッシュルームと牛肉入りクリームソースをかければ、ちょっとしたビーフストロガノフ風に変身。途中で味変して味わうのも一興。大人にもうれしいオムライスだ。

「特製ヒレカツサンド」

そして、大トリは、見るからに迫力満点のこの逸品! 「特製ヒレカツサンド」だ。6,000円とお値段も張るが、それだけの価値は充分。厚さにして3〜4cm、重さ120gあまりとそのままステーキとして充分いただけるヒレ肉を丸ごと一個挟んでいることを思えば、むしろお安いぐらいだろう。

ヒレ肉は、そのまま揚げずに一度炉窯で焼いてから揚げているのも、「ヴィティス」ならでは。と言っても、単なるパフォーマンスではなく、厚みのある肉の芯まできちんと火を通すため。加えて、かぶりついたときにほのかに香る薫香も、おいしさに拍車をかけている。

同じく炉窯で焼いた食パンと同時に嚙み切れる柔らかさは特筆もの。噛みしめるうち、味らいに広がる豊潤にして上品な肉汁には、思わず法悦となる。極上のヒレ肉なればこそ、だろう(ちなみに写真のヒレ肉は岩手前沢牛)。その快感を味わうならできるだけ早く食べることが肝心だ。冷蔵庫にしまう間も無くいただきたい。

 

そのほか、「炉窯焼きステーキサンド」もあり、内モモ4,000円、サーロイン5,000円、ヒレ6,000円。予約は、前日までに電話にて。受け渡しは、当日の14時〜20時。支払いは現金のみ。

 

※価格はすべて税抜

 

 

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※時節柄、営業時間やテイクアウトメニューの内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

 

教えてくれた人

森脇 慶子

「dancyu」や女性誌などで広く活躍する料理ライター。毎日、取材はもちろん、プライベートでもひたすら食べ歩き、特に夏の鮎食いは伝説と化しているほど有名。フカヒレをはじめとしたコラーゲンものも語らせると尽きない。最近は、血の濃い味にもうえている傾向あり。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

 

写真・文:森脇慶子