旬の素材を少しずつ。一品料理のおいしいお店

おひとり様に優しい名店を紹介していく本連載。連載3回目の今回は「一品料理のおいしいお店」をピックアップした。好きなお酒と合わせて、ちょっとずつ色々な種類の料理を楽しむ至福の時間。逆に、サクッと食事を済ませたいときにも重宝するのが魅力だ。

 

今回は、そんなおいしい一品料理を求めて世田谷区・経堂にある居酒屋「凧(はた)HANARE」を訪れた。メニューが日替わりのため、リピーターのお客様も多い同店。一品料理に対する思いやおひとり様にオススメの過ごし方などを、オーナー兼店長である高橋善郎さんに伺った。

ようこそ、おひとり様が集う一品330円の居酒屋へ

小田急線経堂駅から徒歩1分。駅前すぐのテナントビルの一角に居酒屋「凧 HANARE」はある。経堂に店を構える人気店「凧」の2号店が「凧 HANARE」だ。「凧」は、高橋さんの父親が切り盛りしており、「凧 HANARE」は息子である高橋善郎さんが店主なのだとか。

 

特筆すべきは、一品料理はほとんどが330円と、かなりの低価格であること。「元々、凧 本店は父が60歳すぎて始めたお店。仕事をリタイアした年配の方でも気軽に外食ができるように、との思いから設定した価格なんです」と、高橋さん。2号店もその思いを受け継ぎ、低価格を徹底している。年配の方だけでなく、若い女性から家族連れまで老若男女がおいしい食事と癒やしを求めて足を運ぶ人気店だ。

「魚貝うにソース ココット焼き」330円

そんな「凧 HANARE」では、安価でありながら絶品の料理がいただけることもお忘れなく。

 

「魚貝うにソース ココット焼き」はこの店の人気メニュー。ストウブのココットのなかに、焼き雲丹ソース、エビやイカなどの魚介を入れてオーブンで焼きあげた一品料理。焼き雲丹ソースは、プリンのように滑らかで濃厚。香り高い魚介の風味が濃縮された、贅沢なひと皿をご賞味あれ。

「法蓮草としらす・くるみのナムル」330円

「法蓮草としらす・くるみのナムル」も絶品。塩茹でされた法蓮草に、しらすやくるみを加えてごま油であえたシンプルなナムル。野菜の甘みと抜群の塩加減、さらにローストされたくるみのカリッとした食感が良いアクセントになっている。

「3種きのこと生ハムのにんにく塩麹マリネ」330円

生ハムやバジル、旬のきのこをあえたマリネも、高橋さんの手にかかれば日本酒がすすむ和テイストに。塩麹で漬けた生ハムは、ほど良い塩気が絶妙だ。

 

居酒屋というと、お酒のお供として塩味の利いた料理が多いイメージだが、高橋さん曰く、「出す料理は全て、塩分には気をつけています」とのこと。しかし、決して薄味に感じないのは、スパイスや出汁を利かせているからなのだとか。ついつい塩分を取り過ぎてしまう一品料理。この心遣いは有難い。

「豚の角煮と煮卵」550円

「豚の角煮と煮卵」は是非頼んでみて欲しい。醤油ベースの煮汁に漬けこまれた角煮は、口に入れるとトロトロと解ける程の柔らかさ。脂身がしつこ過ぎずあっさりとしているためいくらでも食べられそう。さらに煮卵は黄身まで味が染み込んでいて、甘めの煮汁と良く合う。思わずお酒が欲しくなる、味わい深い一品だ。

高橋さんオススメの日本酒。左から「白露垂珠(はくろすいしゅ)」550円。「月山(がっさん)」550円。「久保田」550円

一品料理といえば、お酒は欠かせない。飲ん兵衛ならば是非日本酒を。山形の「白露垂珠(はくろすいしゅ)」や、島根の「月山(がっさん)」、新潟の「久保田」など、店主自ら選ぶ日本酒はこだわりの一本ばかり。季節毎に日本酒のラインアップも替えているそうなので、日本酒好きは必見だ。

おひとり様の来店も多いという「凧 HANARE」だが、高橋さんはお客さんにあまりしつこく話しかけないようにしているそうだ。「ふらっとひとりで来たお客さんには、必要以上に話しかけません。気を遣わせてしまいますし、何より自分の時間をゆっくりと過ごして欲しいんです」

 

疲れた日、良いことがあった日、静かにお酒を飲みたい日……どんな日でも、この店に来れば淡々と迎え入れてくれそうな安心感がある。お客さんに寄り添った価格、丁寧な手仕事が施された料理の数々にも、その思いがうかがえる。

 

忙しい日々を過ごす方、ゆっくりとした食事を楽しみたい方、経堂へ訪れた際は是非「凧 HANARE」へ立ち寄ってみてほしい。

 

※価格はすべて税込
※メニューは季節、仕入れによって毎日変わるため今回紹介したお料理が無い場合もございます。

 

 

「絶品料理をつまみに一杯」が至高! 他にもおいしい一品料理がいただける4店

ひとり時間を満喫するなら、おいしい一品料理のあるお店は欠かせない。「凧 HANARE」以外にも気軽に立ち寄ることのできる名店の数々をご紹介したい。

1. 「TA-IM(タイーム)」

ヘルシーなイスラエルの伝統料理に舌鼓

「ファラフェル」(4個)680円 出典:きみよしるやさん

広尾にある本格的なイスラエル料理店「TA-IM(タイーム)」。メニューには、フムス、シャクシュカ、ババガヌーシュ、シュニッツェルなど、野菜や豆がたっぷり入った中近東の定番メニューが並ぶ。

 

同店で人気の「ファラフェル」は、すり潰したひよこ豆やそら豆に、スパイスを練りこんで揚げた、コロッケに似たイスラエルの伝統料理だ。豆の濃厚な旨味とスパイスの香りがやみつきになること間違いなし。イスラエルビールとして定番の「マカビー」とともに中近東グルメを堪能したい。

 

※価格は税抜

 

2.「タコスショップ」

お手製トルティーヤと和惣菜が意外にもベストマッチ

「かぶとくんせいトウガラシ」400円 出典:helihopさん

吉祥寺駅からほど近い「ハーモニカ横丁」の一角にある「タコスショップ」。ここでは、注文が入ってから焼くというメキシカンタコスが人気だ。生地を丁寧に焼き上げるタコス店は日本では珍しく、そのおいしさはメキシコ人もお墨付きのものだとか。

 

生地に挟む具材は「キンピラとレンコン」や「豚モツと高菜漬」など、意外性抜群だが、これがトルティーヤに巻かれると一気に絶品タコスに変身するから驚きだ。様々な具材をお好みでトッピングすることもできるそう。今回ご紹介する「かぶとくんせいトウガラシ」は燻製されたカブの風味と唐辛子のスパイシーさが口中に広がる大人の味。キーライムを搾った「リモンサワー」に合わせてメキシコの風を感じたい。

 

※価格は税込

 

3.「nibu(ニブ)」

昼は酒屋、夜はバルを営む二毛作店

「肉屋のハムエッグ」480円 写真:お店から

西新井の閑静な住宅街に店を構えるのは、昼は酒屋、夜はバルとして営業する「nibu(ニブ)」。

 

ここでは生ハムが定番だが、精肉店の上質なベーコンを使用した「肉屋のハムエッグ」はオーダー必須。濃厚かつ上質な脂が口いっぱいに広がる一皿は、ワインとともに味わって。

 

※価格は税込

 

4.「Bicoque(ビコック)」

リーズナブルにフレンチを楽しめる一軒家ビストロ

「タルト・フランベ」ハーフサイズ/800円~ 出典:ノバンディさん

神楽坂のビストロ&ワインバー、「Bicoque(ビコック)」。ここでは、フランス人シェフが織りなす上質なフレンチをお手頃価格でいただける。

 

フランス、アルザス地方の郷土料理「タルト・フランベ」は、薄焼きピザのような料理で、ピザほど重くなくつまみやすいのでひとり飲みや二軒目にもぴったり。メニューは数種類から選べるため、どれにしようか迷うのも楽しい。店主に好みを伝えると選んでくれるという「自然派ワイン」からお気に入りの組み合わせを見つけてみては?

 

※価格は税込

 

 

※「食べログ」に掲載されている情報をもとに、料理名・金額を掲載しております。最新の情報はお店の方にご確認ください。

自宅に帰る前に、ちょっとおいしいひと時を

おいしい一品料理のあるお店なら、滞在時間は短くても大丈夫。自宅に帰る前に、ふらっとお店に立ち寄り、サクッと食事をしてみては? 癒やされる場所で、おいしい時間を過ごせば、日常はいつもよりも豊かになるはずだ。

 

企画・取材:天野成実(Roaster)
文:宮垣歩乃佳(Roaster)
撮影:藤井由依(Roaster)