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京のおやつは何にする? Vol.3
京都のことを知りたい! もっと楽しく巡りたい! そんな京都好きな方にお届けする、心ときめく京都の旅とおやつのお話。
案内人は、京都在住の和菓子ライフデザイナーの小倉 夢桜-Yume-さんです。
ライトアップに目を奪われる、12月の京都

師走となり、京都市街地でもどこからともなくクリスマスソングが聞こえてくる時期となりました。そして、数多くの光に彩られたイルミネーションが、心をときめかせてくれます。

京都の玄関口である京都駅ビルにも、この時期になると巨大なクリスマスツリーが飾られます。クリスマスツリー前の大階段に、家族連れやカップルたちが座ってひと時を過ごします。
クリスマスツリーと京都タワーを同時に見ることができるスポットもあります。この時期ならではの京都観光を楽しんでみてはいかがでしょうか?
今回は、クリスマスにちなんだお菓子をご紹介させていただきます。
幸せなムードあふれる、愛らしいおやつ
「つながりカフェsobanomi」いちごと白あんクリームのパンケーキ
地下鉄五条駅から徒歩約5分。お天気が良いときは、京都駅から東本願寺方面へお散歩がてら歩いて訪れてみるのもいいお店です。
車や人々が行き交う烏丸通から脇道へ入ると、別世界のように静かなエリアが東本願寺北側に広がります。
築120年を超える京都の長屋の一角で2019年6月よりオープンした「つながりカフェsobanomi」が営業をしています。

店内にはカウンターとテーブル、そして「ごろ寝スペース」と呼ばれているくつろぎの空間が用意されていて、いつでも癒やしの時間を提供してくれるお店です。
こちらのお店では、“ハッピーそばサイクル”を合言葉に、そば粉を使用したパンケーキを提供しています。
“ハッピーそばサイクル”とは、食べる(おいしいそばフードを作って食べる)→粉いる(そば粉の需要が増える)→種まく(栽培農家さんが増える)→花咲く(休耕地などにそばの花が咲き豊かになる)→喜ぶ(新たな収入源となる)、というサイクルで次に生きる人たちへ、そばをつないでいこうというもの。

「いちごと白あんクリームのパンケーキ」は、このクリスマスシーズン(2019年営業期間中まで)のためだけに提供されている、クリスマスバージョンのそば粉を使用したパンケーキ。東本願寺が近くにあることから、蓮をモチーフにしてお皿に盛り付けをされているそうです。
パンケーキに添えられているのは、白あん、生クリーム、水飴で作られているクリームと苺、そしてガレットとハーブ。クランベリー、木苺、苺、ワイン、オレンジジュースで作ったソースをお好みでかけて召し上がってください。
一見、洋菓子のようですが、和菓子のエッセンスがふんだんに取り入れられているお菓子です。
鉄板で一枚一枚丁寧に焼いているパンケーキですが、あえて焼き立てを出さずに一度冷ましてからオーブントースターで温めて提供しています。そうすることによって蕎麦の風味が味わい深いものになるのだとか。この方法は和菓子職人さんよりアドバイスをいただいたことがきっかけだったそうです。
京都駅方面へお出かけの際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
「俵屋吉富」サンタクロース、トナカイ
地下鉄今出川駅より烏丸通りを北へ徒歩約3分。
重厚な暖簾がかかった店舗が目に入ります。宝暦5年(1755)創業の京菓子司「俵屋吉富(烏丸店)」です。
こちらの店舗の裏手には本店があり、北隣には京菓子資料館があります。和菓子好きの方なら一度は行ったことがあるのではないでしょうか。
暖簾をくぐると木製のショーケースの中に整然と並べられた数々の商品が出迎えてくれます。
店の奥には、茶室や坪庭があり、京都らしい造りになっています。
今年のクリスマスは、和菓子にあまり親しみのない方にも親しみやすいようにと、誰もが知っているサンタクロースとトナカイをモチーフにしたお菓子が販売されます。

子供たちへプレゼントを届けるサンタクロース。白銀の世界を、トナカイと共に真っ赤な衣装を着たサンタクロースがソリに乗っている様子を表現しています。
シンプルな意匠の中にも和菓子職人さんの匠の技が見てとれるお菓子です。

生地の色、焼きごてで入れたツノ、赤い鼻。トナカイの特徴を巧みに表現しています。
白こし餡ときな粉をあわせた外郎製のお菓子です。きな粉の風味が口いっぱいに広がり、どこか懐かしさを感じます。
「亀屋重久」聖夜、サンタさん
JR嵯峨野(山陰)線花園駅より妙心寺境内を歩いて約15分。または、京福電鉄(嵐電)妙心寺駅より徒歩3〜4分ほど。
一条通の妙心寺北門前に店を構える、享和2年(1802)創業の「亀屋重久」です。創業当時は、京都御所の近くに店を構え、五摂家のひとつである九条家に出入りを許されていたという、由緒あるお店です。
現在では、仁和寺、妙心寺、神護寺の御用を務めています。
クリスマスのイメージがないお店でしたが、近年、お客様からの要望があり、作り始められたそうです。今では毎年12月24日と25日のみ、店頭で販売されます。

クリスマスツリーを和菓子らしく派手にならないように、素朴な雰囲気に仕上げたきんとん製のお菓子です。そこに白、黄、ピンクの玉あられをあしらっています。
菓銘の聖夜のとおり、クリスマスイヴに召し上がってもらいたいお菓子です。

できる限り手をかけないで作るのが京都の和菓子として大切と語るご主人。その言葉のとおりに無駄を省いた、とてもシンプルでありながらも愛らしいサンタさん。
目は羊羹、ひげはきんとんで表現した、こなし製のお菓子です。小さなお子さんが笑顔で喜ぶ姿が目に浮かんできそうです。
写真・文:小倉 夢桜-Yume-