食通が見いだした、今月の新店

新しいお店がどんどん出店し、ますますの盛り上がりを見せる飲食業界。「気になる店が多すぎてどこの店に行ったらいいかわからない!」という人も多いのではないでしょうか。そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。

今回は、令和のグルメ王、浜崎龍さんが推薦する、「repertio」を紹介します。

今月のベストワン

Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください

A. 「repertio(レペルティオ)」です

ラテン語で「再発見」を意味する
 

浜崎さん

正直、やられました。麻布十番駅から徒歩3分ほど、AR10というビルの6階。席について最初に出てくるのが、ワインではなく台湾茶なんです。無農薬の茶葉を水出しした一杯で、前の店の余韻や甘いものの記憶をいったんリセットし、口と気持ちを整えてから飲み始める。店名はラテン語で「再発見」、コンセプトは「感覚を取り戻す場所」。この導入だけで、ただのワインバーではないと確信しました。

器にも注目
 

浜崎さん

なぜ1杯目からこれほど体験が緻密なのか? その謎は、オーナーの経歴を聞いて一瞬で解けました。下田悠さんは、外資系医療機器メーカーのサラリーマンからの異業種転身。実際にオペに立ち会い人の内側からも健康を見てきました。その過程でワインに出会い、起業し、ワインバー経営やワインショップ経営を通して重ねた経験や思想の集大成として、大阪・関西万博のパビリオンなどを手がけた建築家・永山祐子さん、美濃の名窯・幸兵衛窯八代目の陶芸家・加藤亮太郎さんら、各分野の第一人者と共創して生まれたのがこの店なのです。

内観
 

浜崎さん

空間は、カウンター、シェアリングテーブル、ラウンジ、個室がはっきりとは仕切られず、波打つような境界で緩やかに分かれる設計。隣を気にせず自分の時間に没入できるのに、閉じきってはいない。この“あわい”の心地よさは圧巻です。手にする器は、幸兵衛窯の加藤亮太郎さんがrepertioのためにつくられたもの。ぐい呑みと茶碗の中間ほどの大きさ。両手で包み込めば、土の質感とともにワインがじんわり染みてくる。空間も器も一杯も、すべてが「作品」として繋がっています。

Q. 「repertio」でおすすめしたいメニューを教えてください

A. 「その日の気分と体調で注ぎ分けてもらう、おまかせの一杯」です

おまかせの一杯
 

浜崎さん

ここではメニューから選ぶのではなく、その日の気分や好み、体調まで聞いたうえで注ぎ分けてくれます。1杯ごとに土壌や造り手の物語が短く添えられ、味わいの奥行きがぐっと増していく。ナチュラルワインを軸にしつつ、酸の出方や香りの立ち方まで確かめ抜いた選定は、奇をてらった自然派とは一線を画す丁寧な仕事です。しかもグラス2,000円台から。この総合体験を考えれば、断言します、破格の安値です。

生ハムとブリオッシュ
 

浜崎さん

合わせるなら名物の生ハムとブリオッシュを。発酵バターを重ねた一口大で、脂の甘みとコクが広がりながらも、あくまでワインを主役に置いたままつまめる軽やかさが心憎い。しっかり食べたあとの2軒目や、少人数で静かに語らいたい夜にぴったりです。ここはワインの知識を競う場ではなく、自分が心地よいと感じる感覚をゆっくり確かめ直す場所。「ワインを飲みに行く」というより「自分の感覚を取り戻しに行く」——店を出る頃には、大げさではなく本気でそう思える一軒です。

文・写真:浜崎龍