目黒川沿いに佇むオシャレなモダンチャイニーズレストラン

往年のファンが待ち焦がれる伝説の担々麺

かつて「日本一有名な裏メニュー」と呼ばれ、グルマンたちの舌を魅了した伝説の担々麺があった。そのメニューが五反田にオープンする本格中国料理レストラン「彬龍華66(ハンリュウカ ロクロク)」で蘇る。立役者はメニューを世に広めた広東料理の重鎮、陳啓明氏と、その厨房で腕を振るっていた中里卓シェフ。タッグを組むのは黒毛和牛のエキスパート、ヤザワミート。自慢の担々麺だけではない、グルマンの五感を刺激する料理がそろう期待の店だ。

店舗外観。シンプルながら風格が感じられる外観

場所は五反田駅からほど近い、目黒川沿い。流麗な文字で書かれた店名が人目を引く。ニューヨークのチャイニーズレストランをイメージしたという店内は黒を基調とし、赤やゴールドをアクセントにしてモダンでスタイリッシュな雰囲気。ちょっとオシャレして出かけたくなる趣がある。

テーブル席。部屋の随所に飾られているアートもぜひ注目したい

席数は46席。個室や半個室、テーブル席の他、目の前に生け簀があるカウンター席も用意されている。家族や友人とのプライベートな会食から気軽に楽しむ“お一人様ディナー”までさまざまなシーンで活用できそうだ。

中国料理のトップシェフと和牛エキスパートとの出会い

総料理長を務める中里卓さん

「彬龍華66」のストーリーは、総料理長として迎えた中里卓シェフとヤザワミートとの出会いから始まる。中里シェフはウェスティンホテル東京「龍天門」で陳啓明氏の下でシェフを務めた後、ウィシュトンホテル ユーカリ「マンダリンキャップ」、グランド ハイアット 東京「チャイナルーム」で料理長を歴任。2007年には「台湾美食展 世界厨芸邀請賽」で銀賞受賞、2019年には東京都知事賞を受賞するなど、まさに東京の中国料理界を代表するトップシェフの一人だ。

勉強熱心な中里シェフ。料理の話を始めるとその博識ぶりに驚かされる

その中里シェフと縁あってタッグを組むことになったのは、和牛のエキスパート、ヤザワミート。これまでに「ミート矢澤」をはじめ、こだわりの食材を使った人気店を次々とオープンさせてきた。そのヤザワミートが、シェフの持つ匠の技や食材と料理への思いに共感。最高顧問に中里シェフの師でもある陳啓明氏を迎え、伝統的な中国料理の技法を生かしつつ、モダンなエッセンスを取り入れた独自の世界観を持つレストランのオープンとなった。この組み合わせを聞くだけで、名店誕生の予感に胸が高鳴る。

広東料理の名店が生み出した逸品

広東料理に精通している中里シェフが作る中国料理に期待が高まるが、まず何よりも紹介したいのが伝説の「66合桃(クルミ)担々麺」だ。

「66合桃担々麺」 単品1,700円

世の美食家たちが絶賛した担々麺のオリジンは、中里シェフがカリフォルニアで開催されたクルミ料理のコンテストでグランプリをとったメニューにある。当時、四川発祥の担々麺といえば胡麻ペーストが常識。けれど、中里シェフはクルミペーストをブレンドし、その斬新なアイデアは審査員たちの度肝を抜いたという。この担々麺を陳氏が当時料理長を務めていた広東料理の高級レストランにふさわしいものとして磨きをかけ、伝説のメニューが生まれた。

現在、このメニューを供するレストランはないが、「彬龍華66」では、生みの親とも言うべき二人のシェフの元で完璧にメニューを再現した。

野菜のトッピングは白髪ネギとニラ。ネギには山椒が振りかけられている

スープは、広東料理ならではの滋味豊かなスープに胡麻ペーストと、たっぷりのクルミを使ったクルミペースト、秘伝の麺ダレをブレンド。麺は小麦の味わいを生かした配合の細麺を特注。肉みそには海鮮の旨みが詰まった海鮮醤を合わせ、味のアクセントとなるラー油は自家製の豆板醤の上澄みを使用。辛みだけでなく、旨みと香りがあるラー油だ。

麺は香港の麺料理でよく使われているパツパツした食感の麺になっている

うまみたっぷりのだしにまろやかなクルミのコクを合わせたスープは、まるでフレンチのポタージュのように濃厚でクリーミー。ピリッとしたラー油が刺激を添える。コシのある細麺はしっかり小麦の味わいと香りが感じられ、スープに負けない個性がある。刺激的な辛さの担々麺とはひと味違う、広東料理の風格を感じさせる逸品だ。

ヤザワミートならではの肉好きの心を掴む和牛中華

「ランボソのステーキ 香港式紅ワインソース」時価。一見するとフレンチのような一皿。脇に置かれたワインはソースに使ったもの

ヤザワミートが手掛けるとなれば、和牛メニューへの期待も高まるというもの。和牛のリブロースとモモ、タンを使った料理がスタンダードメニューとして用意されているが、その日に入荷された和牛の希少部位を使ったものも楽しめる。

牛テールを8時間かけて煮詰めたものに、半量まで煮詰めた赤ワインを合わせたソース。このソースが絶品だ

「和牛のランボソステーキ、香港赤ワインソースかけ」。ランボソとは、お尻の部位の中でも特に柔らかく、赤身の旨さが詰まった部位。この肉を1時間かけ、高温で揚げては休ませを繰り返して、火入れしていく。この火入れが絶品。外側はカリカリとしながら、中はしっとりとし、噛みしめるとトロリと口の中で肉が溶けていく柔らかさ。肉好きの心をわしづかみにするおいしさだ。

このステーキに合わせるのは、シェフが香港で体得した牛テールと赤ワインを煮詰めたソース。ほんのり甘酸っぱいコクのあるソースが、和牛のとろけるような旨みと相性が抜群だ。

調理中の「和牛リブロース、XO醤炒め」。丁寧に下ごしらえした素材を一気に仕上げる

好きな和牛の部位を好みの調理法でリクエストできるのも同店ならではの楽しみ。「矢澤和牛、和牛リブロース、XO醤炒め」。XO醤とは干し貝柱や金華ハムなど旨みたっぷりの食材から作られる香港を代表する調味料。XO醤の香り豊かで少しスパイシーな味わいが和牛の甘みを引き立ててくれる。

「矢澤和牛、和牛リブロース、XO醤炒め」 4,500円。グリーンの野菜はアスパラ菜。甘い風味と歯応えがアスパラと似ている

「彬龍華66」では野菜にも注目。千葉の契約農家に同店専用の畑を作ってもらい、店で使うほとんどの中国野菜を栽培している。鮮度の高い旬の野菜を存分に食べてもらいたいというこだわりの表れだ。