〈福岡のソウルフード〉

グルメタウン福岡では、これまでたくさんの名物料理が生まれてきました。そんな福岡で、近年注目を集めているご当地グルメが「炊き餃子」です。グツグツと音を立てて運ばれてくる鍋の中には、滋味深いスープに、食べ応えのある餃子の組み合わせ。夏は汗を滲ませながら、冬ははふはふっと息を漏らしながら、オールシーズン楽しみたい炊き餃子の魅力をご紹介します。

教えてくれたのは

戸田千文

愛媛県出身。広島、東京生活を経て、転勤族の夫とともに2018年夏に福岡暮らしをスタートした。情報誌やレシピ本、WEBコンテンツの企画・制作を通して出会うローカルのおいしいモノ・楽しいコトが大好き。

福岡に新しいソウルフードを

木の温もりを感じる店内。インパクトがある長いカウンターのほか、テーブルや個室もあり。観光客だけでなく、地元客の姿も多い

訪れたのは、福岡市地下鉄七隈線・天神南駅から歩いて5分ほどの場所にある「池三郎」。炊き餃子の名店として知られています。

「炊き餃子は、創業者の池田和三郎が30年以上前に考案しました。福岡の新しいソウルフードを作りたいと考え、福岡名物として知られる博多とんこつラーメンとひとくち餃子を組み合わせて、とんこつスープに餃子を入れたのがはじまりです」。そう教えてくれたのは、池三郎の店長・岡村祐貴(おかむら ゆうき)さん。発祥の味は池三郎をはじめ、本店である「池田商店」、姉妹店の「池ぽん」「池田屋」でいただくことができます。

改良を重ねてたどり着いたシンプルなスタイル

炊き餃子(6個)770円。グツグツと煮立つ音に、期待も高まる

では、早速炊き餃子をいただきます。オーダーしてしばらくすると、グツグツと音を立てる特注の平鍋が目の前に登場。湯気とともに、ニンニクの香りがふわりと鼻腔をくすぐります。「炊き餃子はこれまでにもスープを変えたり、餃子以外に野菜も一緒に炊いたりと進化してきたんですよ」と岡村さん。現在は、餃子のみを炊き、ネギをトッピングするシンプルなスタイルに落ち着いています。

スープも誕生当時から進化し、豚骨と鶏ガラの二つのスープを組み合わせることで、程よい塩味にうま味があるあっさりした味に。じわ〜っと体に染み渡る滋味深さに、ほうっと息が漏れます。

鶏皮入りのミンチに炭火の地鶏を組み合わせた餃子が主役

こだわりの餃子は、タネに仕掛けあり

ここで、主役の餃子をぱくり。口の中でふわっとミンチがほぐれたと思えば、コリッとした食感とともに、炭火の香りが広がります。

この正体は一体?と驚く私の姿を見て、岡村さんはにっこり。「特に餃子にはこだわりがあるんです」と話します。餃子は、鶏皮を混ぜたミンチ肉を採用。ニンニクやショウガ、ニラのほかに、おからも加えて作る特製ダネは、脂っこくなく、ヘルシーに楽しめます。さらにもう一つこだわりが。「実は、炭火で焼いた地鶏をタネとは別に用意しているんです。ミンチにして練り込んでしまうと炭火の香りが感じられなくなってしまうので、炭火で焼いた地鶏肉を特製ダネで包んだのち、仕上げています」

柚子胡椒(左)と辛味噌(右)。炊き餃子のほか、アラカルトメニューの薬味としてどうぞ

各テーブルには、竹炭を混ぜてマイルドに仕上げた柚子胡椒と辛味噌、二つの薬味が用意されているので、味変しながら堪能できます。さらに残ったスープを余すところなく味わうなら、ちゃんぽんやおじやでどうぞ。

まずは、ちゃんぽん(330円)から。あっさりしたあと味のスープのおかげで、あっという間に完食!

スープを飲みすぎてしまった場合も、締めを頼んだ際に無料で追加してくれるのでご安心を。あっさり味のスープは、飲んだあとのおなかにも優しく、ぺろりといただけます。

さらに、おじや(440円)でフィニッシュ!

ちゃんぽん、おじやの順で、二つの締めを楽しむお客さんも少なくありません。