〈食べログNo.1には理由がある!〉アイスクリーム編

食べログのジャンル別ランキング〈アイスクリーム部門〉で堂々の1位(2019/11/1付ランキング)に輝く「ジェラテリア アクオリーナ」。その魅力はどこにあるのか? 食べログマガジンでおなじみのお菓子の歴史研究家、猫井 登さんとともにお店を訪問し、お話を伺いました。

教えてくれる人

猫井 登(ねこい のぼる)
1960年京都生まれ。 早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。 退職後、服部栄養専門学校調理科で学び、調理免許取得。ル・コルドン・ブルー代官山校にて、菓子ディプロム取得。フランスエコール・リッツ・エスコフィエ等で製菓を学ぶ。著書に「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス刊)「おいしさの秘密がわかる スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版刊)がある。

本場イタリアで修行。ジェラート愛あふれる店主の店

「ジェラテリア アクオリーナ」は、東急東横線・祐天寺駅の中央改札からすぐの場所にあるジェラート専門店。本場イタリアで修行したオーナーの茂垣綾介(もがき りょうすけ)さんが、2012年5月にオープンさせました。

店内は、シンプルながらもイタリアのバールを彷彿とさせ、白を基調にグリーンを使った、ナチュラルで落ち着いた雰囲気。

 

食べログではアイスクリーム部門の1位であり、「食べログ スイーツ 百名店 TOKYO」では2017年の百名店設立以来3年連続で選出されている人気店です。

猫井さんも驚いた! 注目ポイント

何度かお店に来たことがあるという猫井さんにとっても、驚きの多かった今回の取材。猫井さんがジェラテリア アクオリーナのすごさを感じたポイントはこの3点!

1. ジェラートの品質が第一!の管理方法

2. 厳選素材を使っているのに、強調しない謙虚な姿勢

3. たゆまぬ努力・探求・投資があってこそ生まれる味わい

では、そのすごさの理由とはいったい何か? さっそく解き明かしていきます。

究極のジェラート、ここにあり

こちらのお店では、カップまたはコーンに1〜3種盛りにしてもらうことができるので、今回はシャーベット3種盛りと、ジェラート2種盛りのカップを実食!

まず、選んだのは、「ペーラ(洋ナシ)」「ブラムリー(青りんご)」「ぶどう」の3種盛り。シャーベットは、乳成分が入っていないので、さっぱりとしながらも、それぞれのフルーツの味わいが濃く、ダイレクトに旨味が伝わってきます。

 

イタリアでジェラート店に行くと、複数の種類のフレーバーを一度に注文する人が多いです。これは、複数のフレーバーを一度に口に含むと、単体では味わえない素晴らしい味わいを口の中で創り出せるからだといいます。ワインの世界でいうマリアージュに似ていますね。

そこで、ここでもあえて、複数のフレーバーを口に含みマリアージュを楽しむことに!

 

ぶどう+洋ナシ=ぶどうの、白桃のような爽やかな甘味に、洋ナシのまったりとした旨味・甘みが加わり、上品なネクターのような味わいに。

青りんご+ぶどう=酸味が立ち、ルバーブのような味わいに。

青りんご+洋ナシ=洋ナシの味わいが青りんごの味わいを包み込む。

 

最後に3種を同時に口に含むと……、最初はそれぞれの個性ある味わいが現れ、ぶどうの存在感、青りんごの爽やかな酸味、洋ナシの上品な甘味が感じられますが、最後は一体となり、みずみずしいプラムのような味わいに収れんされました。

次は、「ピスタッキオ」に「オリーブオイル」の組み合わせ。

「ピスタッキオ」の原料に使われるのは、シチリア島の中でもピスタチオの産地として有名なエトナ山の麓の町、ブロンテのもの。ピスタチオの粒が感じられ、香り、味わいともに濃厚でした。

「オリーブオイル」は、ウンブリア産のエクストラバージンオイルを使ったジェラート。口に含むと途端にオリーブが香り立ち、少し青さが感じられるフルーティーな味わいが広がります。油っぽさは全くなく、すぅ〜っとなめらかな口溶け。

 

オリーブオイルとピスタチオを一緒に口に含むと、オリーブオイルの青みがかったフルーティーさとピスタチオの濃厚な味わいが一体となり、なんとも言えないまろやかな旨味が形成されました。

とどまるところを知らないジェラート愛を徹底取材!

 

猫井

本日はよろしくお願いいたします。たくさんのジェラートやシャーベットが並んでいますが、何種類ぐらいあるのでしょうか?

 

茂垣

お店に出しているのは20種類程度ですが、全部合わせると300種類以上あると思います。

 

猫井

どれくらいのタームで入れ替えをされるのでしょうか?

 

茂垣

一部ではありますが、ほぼ毎日ですね。一日の中でも入れ替わることがあります。季節感を出したり、新しいフレーバーをご紹介したいということもありますが、近所のお客様で頻繁においでいただく方も多いので、飽きさせないように心掛けています。

 

猫井

こちらでは、ジェラートやシャーベットの容器に全てキッチリと蓋がされていますね。

 

茂垣

ジェラートは素材が多く使われ、保管温度が高いことから、デリケートなスイーツです。店では、品質管理を重視して、蓋のできるタイプの容器を採用し、ジェラートが空気に触れるのを最小限にして、最適な温度で新鮮な状態を保つようにしています。

使用しているピスタチオの実を特別に見せてくれました
 

猫井

なるほど。オープンされて以来、ジェラート一筋でやってきたわけですが、茂垣さんにとって、ジェラートの魅力とはなんでしょうか?

 

茂垣

「モノづくりとしての魅力」と「ジャンルとしての魅力」の二面があると思います。まず、モノづくりとしての魅力は、原材料となる素材の魅力をダイレクトにフォーカスできる点でしょうか。ジェラートはフレーバーの主役となる食材をたっぷりと使いますからね。だからうちでは原材料にこだわって、ヘーゼルナッツ、アーモンド、ピスタチオなどのナッツ類はイタリアの生産者から直輸入していますし、フルーツ類やミルク類は厳選した国内の生産者さんから直接仕入れています。

実を割ると鮮やかなグリーンが現れます。厳選された素材だけあって香りも豊か
 

茂垣

ジャンルとしての魅力は、色々な人たちと触れ合えるということでしょうか。ジェラートは、お子さんから大人まで幅広い年齢層の方々に楽しんでいただけますし、飲食店としては価格帯もそこまで高いというわけではないですから、色んな方が毎日たくさんお店にいらして、面白いですよ。

 

猫井

営業は夜11時までですね。

 

茂垣

うちはなぜか、夜9時台よりも10時以降の方が、お客様が多い場合があるんですよ。

 

猫井

お酒を飲んだあとにジェラートを楽しむお客様も?

 

茂垣

そういうお客様も結構いらっしゃいます。

 

猫井

どういったフレーバ―が人気でしょうか? おすすめのフレーバーはありますか?

 

茂垣

人それぞれバックグラウンドもさまざまで、お好みも人それぞれですから、まずはお客様の食べたいものやお好みを伺うようにしています。迷われたら、まず1種類選んでいただいて、あとはどういったものがお好みか言っていただければ、相性の良い組み合わせなどを提案させていただきます。

茂垣さんの手にかかれば、月桂樹の葉もジェラートに!
 

猫井

すでに相当数のレパートリーをお持ちですが、今後挑戦してみたいジェラートというのはありますか?

 

茂垣

極端なことを言えば、どんなものだってジェラートにできると思います。店頭のラインアップを考えると置くことはないと思いますが、料理人の方とのコラボで生ハムのジェラートや料理系のものを作ったこともありますので、そういったことは今後もやってみてもいいなと思います。ジェラートで作るケーキならば、月桂樹とザバイオーネ(卵黄に砂糖を加え、温めながら泡立て、マルサラ酒などを加えたもの)とベリーの組み合わせなどは、以前作ってみて面白かったです。

 

猫井

最後に、ずばりお伺いします。シェフにとって、ジェラートとは?

 

茂垣

どこかのテレビ番組みたいですね(笑)。まあ、ひと言でいえば「架け橋」でしょうか。たとえば、高級レストランに行かなければお目にかかれない高価な食材や珍しい食材でも、ジェラートにすればお客様に気軽に味わってもらいやすくなります。そのような意味で、ジェラートは未知の食材とお客様を繋ぐ架け橋になれるかなと思います。またジェラートは私自身とお客様を繋ぐ架け橋だと思っていますし、この店を訪れるお客様同士を繋ぐ架け橋にもなってくれれば、これに越したことはないと思います。

 

猫井

今日は貴重なお話をありがとうございました。

 

茂垣

いえいえ、こちらこそ。是非また遊びにいらして下さい。

 

※「ジェラテリア アクオリーナ」では常にフレーバーの入れ替えを行っているので、文章中に記しているフレーバーが販売されていない場合があります。ご了承ください。

 

 

取材を終えて……

茂垣さんのインタビューにもありましたが、このお店では、品質を第一に考え、ジェラートの販売促進に有利な「見えるディスプレイ」は行わず、蓋つきの容器を採用しています。

また、厳選した材料を使っているにもかかわらず、説明書きは、いたってシンプル。代わりに、口頭でお店の思いを顧客に伝えすぎることもなく、あくまでお客様の好み、希望を優先するという姿勢を貫いています。

そこには、どんなに良い材料を使っても、どんなにお店の思いを伝えても、最後はお客様が気に入ってくれるかどうかが全て、という謙虚さが感じられました。

 

しかし、それは単なる謙虚さではありません。多くを語らなくても、このお店の商品を食べたお客様には、必ず伝わる、必ずわかってもらえるという自信に裏打ちされた謙虚さです。

そして、その自信を維持するために行われる、たゆまぬ努力、探求、投資にこそ、この店のすごさがあり、この店が頂点の座に君臨する所以なのでしょう。

 

文:猫井 登
写真:石渡 朋