わざわざ行きたい、ゆったり過ごせる中華料理店

神楽坂上の大久保通りに面した「中国菜 智林(ちりん)」は、厳選した紹興酒やワインのラインアップと、ゆったりした空間が魅力的なお店。いつも予約でいっぱいの飯田橋の人気中華料理店「中国菜 膳楽房」の姉妹店として、2019年4月にオープンした。

 

オーナーシェフの榛澤知弥(はんざわ ともや)氏いわく、「本店の『中国菜 膳楽房』は飯田橋の駅から近くて気軽に寄っていただける場所にありますが、姉妹店のこちらはわざわざ目指して来ていただく場所。その分ゆっくり過ごしていただけるようにしたいと思っています」とのこと。

お酒に合わせて楽しみたい、必食の3品

メニューには定番のおつまみ系や点心、シェフが得意とする野菜料理などが豊富に揃い、いかにもお酒が進みそうなラインアップだ。なかでも必ず注文したい3品をご紹介しよう。

 

スターターにおすすめの「自家製腸詰め」は、本店でも人気の定番料理。厚めに切られた腸詰めは、一般的なものよりジューシーな食感だ。秘訣をシェフに尋ねれば、ごく粗く挽いた豚肉を使い、干す時間を調整して生ソーセージのように仕上げているのだとか。五香粉とはちみつの甘みがほどよく利いた腸詰は、肉汁の濃厚な旨みに溢れ、ほとんどのお客が注文するというのも納得のおいしさ。紹興酒が進むこと請け合いだ。

「自家製腸詰め」1本850円。薬味は長ねぎ、香菜(パクチー)、自家製の甜麺醤と豆板醤

続いて楽しみたいのは、「咸蛋(アヒルの卵の塩漬け)入りちまき」(550円)。こちらは本店では提供していない、「中国菜 智林」オリジナルの自慢の一品だ。茹でおきしたものを注文ごとに蒸して温めて出すちまきは、具材の旨みと甘みがもち米全体に染みわたり、もっちりとジューシー。このやさしい食感と味わいは、“蒸す”のではなく“茹で”て作るからこそ生まれるのだとか。

「咸蛋入りちまき」550円

「最近のちまきの作り方は“調味料と共に炒めたもち米を蒸す”のが主流ですが、昔はもち米と具材を竹の皮で包み、茹でて作っていました。この昔の作り方だと、茹でている間に具材の味がもち米にじんわりと染み込むんです」と榛澤シェフ。具材は咸蛋、干し椎茸の醤油煮、蓮の実、腐乳で味付けした豚バラの角煮の4種類。これらの旨みが染みたもち米も、やはり紹興酒が進む味わいだ。

必ず注文したいメニューの3品目は、野菜好きの榛澤シェフが千葉の契約農家から取り寄せる旬の中国野菜を生かしたもの。野菜の種類は時期によって変わるが、たとえば夏は旬の「雲南百薬(うんなんひゃくやく)」を使い、その青菜特有の味わいを鶏ガラベースのスープと干し貝柱の戻し汁、塩、生姜で生かしたメニューが登場する。青菜の香りと滋味が生きた炒め物は、健康志向を満たしつつ、飲みたい気持ちにも寄り添ってくれ、まさに心と体にやさしい一品だ。

「雲南百薬の炒め物」1,400円。雲南百薬の別名は「オカワカメ」「川七(かわなな)」

メニューは、アラカルトのほかにコースもあり、4,500円と7,000円の2種類。気のおけない仲間と大きなテーブルを囲み、ゆったりした時間を楽しみたい。

※価格は税抜

取材・文:小松めぐみ

撮影:上田佳代子